この団扇に描かれている刺繍は、山西省南部一帯で流行している戯曲―蒲州ホウ子(山西省永済県の西の辺りで拍子木でリズムをとりながら歌う歌のこと)などのスタイルの伝統的な演目を題材にしている。表面に描かれているのは三人の人物で、左が宋代の大文豪蘇東坡(1037〜1101年)、真ん中が才子秦少游、その右にいるのが蘇東坡の妹の蘇小妹である。
物語は民間の伝説から選ばれたもので、宋代の文豪蘇洵の娘の蘇小妹(架空の人物)は生まれつきとても賢かったため、宰相の王安石が息子の嫁に欲しいと望んだが、蘇洵は承知せず、愛娘を秦少游に嫁がせたという内容である。新婚初夜、蘇小妹はわざと詩歌、対聯(対句を書いて入り口の外の柱にかける)のテストを吹っかけ、新郎を困らせた。正しく応えられなければ、寝室に入ることはできない。秦少游は蘇小妹の兄の蘇東坡にこっそり助けてもらって、全ての難題に答え、晴れて新婚の寝室に入ることができた。
この絵では、花嫁は部屋の中にいるが、新郎は部屋の外におり、彼らの兄である蘇東坡が傍らで様子を伺いながら、この「面白い場面」を楽しんでいる。
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