日本では、まだ互いに相手がどんな人か分からないのに「結婚を前提に付き合ってください」と言う人がいるようだ。以前、中国で放送された日本のテレビドラマにも、そんな台詞があった。これは「相手方との付き合いは真面目だよ」という気持ちを表し、結婚という結果が得られるように付き合うという考え方を示す言い方だと、筆者は受け止めている。
しかし、このような言い方は、中国にはない。中国に滞在し、中国人の異性が好きになって、このような台詞を使ったら、それを聞いた中国人の異性は違和感を覚えるだろう。やはり、中国流に「私は真面目だ」と言った方が受けるかもしれない。
恋をしても、すべて実るとは限らない。相手方から「青春損失費」という損害賠償を要求されて、苦い思いを味わうことさえあり得る。こうした「青春を返せ」の要求は、普通は女性の方から男性に出される。
例えば昆明市の夕刊紙『春城晩報』の昨年九月一日付け一面記事によると、四川省から昆明市に出稼ぎに来ていた劉さんは、3カ月間お付き合いした「彼女」と別かれる際に、「青春損失費」として30万元もの損害賠償を求められた。さらに劉さんに裏切られたと思った彼女と両親は、20人も引き連れて劉さんの美容院に押しかけ、暴行を働いたり、店の中の物を壊したりした。この騒ぎは、警察が来て、その場はなんとか収まったらしい。
「青春損失費」を支払うかどうかは別にして、暴力的手段で損害賠償を求めるのは、もちろん法律上、許されない。そこで人民法院に提訴するという法的手段により、この「青春損失費」を請求する人が出てきた。しかも、請求者が男性のケースさえある。
ハルビン市に住む女性の曲さんは、6年も交際した「彼氏」の陳さんに「別れましょう」と言ったところ、「青春損失費」として8万元の支払いを求められ、やむなく要求通り、8万元の債務確認書を書いて陳さんに手渡した。しかしその後、曲さんから支払いがなかったため、陳さんは、債務確認書を根拠に、ハルビン市道外区人民法院に提訴した。
だが一審、二審とも、この債務確認書は「真の対価関係」(正当な報酬などの授受関係)はなく、かつ「青春損失費」を払うという約束は、公序良俗に反し、無効なものであるとして棄却された。
2人の間には真の金銭貸借関係はなく、陳さんが提訴の根拠とした債務確認書は、実質は曲さんが恋愛関係の解除を申し入れたのに対し、陳さんが手切れ金を払えと曲さんに発行させたものだ。このような合意には、『契約法』が適用されない。だから陳氏の請求には、法的根拠がないと言わなければならない。
不倫関係が終わったときの、手切れ金のトラブルもある。
友人から聞いたケースだが、ある50歳代の日本人男性の中国駐在員が、2年間ほど、20歳代の上海の未婚女性と不倫関係にあったが、それが駐在員の妻にバレてしまった。そこで関係を清算しようと不倫相手に打ち明けたところ、手切れ金3万元を要求された。
裁判の実務ではたいてい、不倫が社会の公徳に反するものであるため、不倫関係に基づく手切れ金という債権債務関係は、法的強制力による保護を受けられないと判断される。
ただし、不倫相手の女性が、男性に妻がいることを知らず、また男性がずっとそれを隠して騙し続けたケースでは、男性の騙した行為によって女性が大きな精神的ダメージを受けたことを理由として、慰謝料を請求することも現実には少なくない。こうした請求は、認められる可能性がある。
日本では、相手の女性が人妻であることを知りながら不倫をした場合は、損害賠償の責任があるとされているのに対して、中国では2001年の『婚姻法』の改正及び関係する司法解釈により、不倫をした配偶者に対する損害賠償請求が認められるようになったものの、不倫をされた配偶者が不倫相手に損害賠償を請求することができるとまでは規定されていない。このため不倫をされた配偶者は、『民法通則』の不法行為に関する規定に基づき、不倫相手に損害賠償を請求するほかないのである。
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