長い間、中国の人々は、大学に入ることこそ人生を良くする主な道だと考えてきた。大学に入れば、農村の子どもは都市生活に根をおろし貧困から脱出できるし、都市の子どもも良い仕事と給料を得ることができる、と信じてきた。
しかし、この数年、大学卒業生が自ら職業を選ぶことができるようになり、大学が募集定員を拡大したのに伴って、こうした情況に変化が起こった。
2006年、中国の大卒総数は413万人だったが、政府機関と国有企業や事業体の従業員はほとんど飽和状態だった。このため公務員採用の競争率は一時、42倍に達した。多くの学生が、自分の就職の理想を実現できないだけでなく、失業に直面する者さえいた。こうした現象をつくり出した原因の一つは、多くの人が同じ道、同じ人気の専攻、同じ高給のポストに集中したことにある。
大学の学費は高くなるばかりだが、期待される収入や利益はそれに正比例して高くはなっていない。このため多くの都市の家庭では、ますます子どもが名門大学や人気の専攻に進むよう促している。一方、一部の農村の家庭は、子どもに早々と金儲けをさせるようになった。
こうした現象に対し、北京大学社会学の銭民輝教授は、こう考えている。「もし都市部の中産階級が一定の財産を蓄積したなら、彼らの子どもは自分の好きな専攻を自由に選ぶことができるようになり、人気の専攻を、チャンスに恵まれない農村出身の学生に譲ることができる。こうすれば、就職難のプレッシャーも緩和されるだろう」