2010年の上海万博は今から――ようこそ中国へ |
変貌を遂げる大都会 上海
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原 絢子=文 劉世昭 原 絢子=写真 |
「城市譲生活更美好」(都市――生活をさらに美しく)をかかげ、「都市」をテーマに開催される上海万国博覧会。上海市はいま、2010年の開催に向けて、急ピッチで都市建設を進めている。上海はどのように変わってきたのか、そしてどのように変わっていくのか、現地でその変化の様子を見聞きした。 |
ますます便利になる地下鉄 |
上海の地下鉄の歴史は浅い。初の地下鉄「一号線」の一部が開通したのは1993年のこと。北京の1969年や天津の1984年に比べるとずっと遅い。しかしその発展はずば抜けて速く、2007年3月の時点で5本が開通しており、総距離は145キロにおよぶ(地上を走る都市鉄道も含む)。 ただ、朝夕の通勤・退勤ラッシュ時には相当込み合う。駅員が乗客を中に押し込まないと、ドアを閉めることができないぐらいだ。 これについて上海軌道交通建設指揮部弁公室の呉マ毅さんは、「もっとも利用客の多い一号線では、混雑を解消しようと具体的な対策を進めています。現在、6両編成だった電車を8両編成に移行している最中です。来年中には一号線の電車すべてが8両編成に移行する見込みです。これにより、輸送能力は30%以上アップします」と話す。
また、乗車マナーの問題も少しずつ改善しつつある。これまでは「降りる人が先、乗る人が後」という意識がほとんどなく、電車が来ればわれ先にと乗る人が大半だった。しかし、ホームと車内での表示や放送、駅員の呼びかけにより、「降りる人が先」の意識は人びとに根付くようになってきた。それでも乗客が多いときには、「降りる人が先」がまだまだ徹底されていない。「ラッシュ時にはボランティアが出て呼びかけるなどしていますが、徹底するのは難しい。やはり一人ひとりの意識が大切なのです」と呉さんは語る。 今後、地下鉄網はどう発展していくのだろうか。 2010年の万博までには、合わせて11本の地下鉄が開通する見通しだ。総距離は400キロに達する。最終的には、2020年までに17本、総距離780キロの地下鉄網建設を計画しているという。
現在の一日あたりの利用客数は190万人。全市の公共交通を利用する人の13%以上を占める。中国国内でみればかなり高い割合だが、先進国に比べるとまだまだ低い。2010年までには30〜40%を目指す。一日あたりの利用客数は500万〜550万人だ。 万博期間中、来場者の50%が地下鉄を利用してやって来ると想定されている。「この要求にしっかりと応えることができる」と呉さんは自信をのぞかせる。 このほか、「人にやさしい地下鉄」を目指し、ほとんどの駅に身体障害者用のエレベーターを設けるなど、サービス面の充実にも力を入れている。
例えば、4号線の大木橋路駅の付近は病院が多い。市外からたくさんの人びとが病院へやってくる。そこで、地下鉄を出てから病院までの行き方を書いたメモなどを置いている。3号線のホームには「緑色通道」という特別乗車エリアを設け、高齢者や身体障害者などの乗車に便を図っている。車椅子も用意されていた。 しかしこういったサービスはすべての駅にあるわけではないし、それがうまく機能していないこともある。乗客の要求をいかに汲み取ってそれを体現し、普及していくかが今後の課題だ。 「可愛い上海人」キャンペーン
街や地下鉄では、「与文明同行,做可愛的上海人」という標語をよく見かけた。「文明とともに歩み、可愛い上海人になろう」といった意味だろうか。 この運動は04年にスタート。万博が開催されるのをきっかけに、上海市民の総合的な素養や都市の文化程度を高めようと始まった、マナー向上キャンペーンだ。「可愛い上海人」とは、「好感をもたれる、みんなに好かれる上海人」ということだそう。 上海市精神文明弁公室は、「可愛い上海人」運動が始まって以来、次のような成果があったと指摘する。
@ボランティアが広範に活動。市内の交差点や地下鉄、公園などで、信号無視やタンを吐くなどといったマナーの悪い行為を取り締まるボランティアの数は30万人を超えた。 A市民の自覚が高まる。マナーの悪い行為の取り締まりに対する反感が減少。多くの市民がこの運動を支持し、従うようになった。 B交通ルールの違反率が減少。04年の違反件数は前年より54%減少。そのうち、みだりに道路を横切る歩行者の数は60%以上減った。 C交通事故が減少。04年の道路交通事故は前年より50%減少。地下鉄や路線バスのマナーの悪い乗車によって引き起こされるトラブルが減り、事故発生率も低下している。 引っ越し完了。いよいよ建設
上海万博の会場は、南浦大橋と盧浦大橋に挟まれた黄浦江両岸。南浦大橋から会場予定地を見渡すと、所狭しとクレーンがそびえ立ち、あちらこちらで建物の取り壊しと土地の修復作業が進んでいた。 本誌05年9月号の特集でも伝えたが、この地に住む人々は別の地に引っ越さなければならなかった。住民1万8000戸余り、約5万4000人の移転は、06年5月までにすべて完了。企業の移転もほぼ終了した。これから本格的な建設に入る。 万博会場の建設とともに、会場までの交通機関の整備も強化。国内線の発着が主な虹橋空港には総合交通ターミナルが造られ、ここから会場につながる地下鉄が設けられる。また、現在、浦東国際空港と竜陽路駅を結んでいるリニアモーターカーは、万博の開催までには竜陽路駅から万博会場を通って上海南駅につながるラインが建設される。 つまり、会場までの交通機関は地下鉄が5本、リニアモーターカーが一本。これに路線バスや水上輸送なども加わり、来場者に便を図る。ゲートもたくさん設ける予定だ。上海万博事務協調局の黄耀誠・副局長は、「愛知万博は会場に入るのに列をなし、パビリオンに入るのに列をなし、食事をするのに列をなしと、どこでも列をなしていました。中国人は並んで待つのは一時間が限度です。その点を考慮し、待つ時間を減らして来場者の便を図ることを重視しています」と説明する。 上海万博の海外でのピーアール活動も本格的に始まった。海外ピーアールの一番目の舞台に選ばれたのは日本。3月16日から4月30日まで、東京で「上海ウィーク」を開催し、京浜急行線の車内に上海の写真を展示したり、駅にコンクールで入賞した万博ポスターを展示したりしている。 黄副局長は次のように語る。 「日本はこれまでに万博を5回開催していて、経験が豊かです。また、日本人の行き届いた心配りや細部まで考慮する姿勢はすばらしいものです。そこで私たちは、日本の企業の人たちや万博関係者と絶えず交流し、よい所を学んでいます。日本の万博関係者は、困難に直面してもいつもそれを改善し、レベルを高めてきた。開催するたびに、よりよい万博になっています」 「上海万博は中日友好を促進するよいチャンスです。万博を利用して両国の交流を深め、民間の交流を広げることができると思います。日本の皆さんが上海万博に興味を持ってくれるよう望みます。中日の協力と発展にとって非常に有望なのです」 上海の過去、いま、未来を知ろう ◆上海都市計画展示館
人民広場にある市政府の東側に位置する。地上5階、地下1階で、展示面積は7000平方メートル余り。 「都市、人、環境、発展」をテーマに、上海の都市計画、都市建設が展示されている。目玉は3階にある2020年の上海をイメージした模型。500分の1の大きさで作られており、上海の未来が一目で分かる。360度の視界で楽しめるバーチャルホールも興味深い。中国ではおなじみのキャラクター「三毛」が、2010年の上海を案内してくれる。 また、中2階にある写真の展示も面白い。昔の写真と現在の写真を対比して見ることができ、上海の変貌に驚かされる。 館内を案内するガイドは15人。うち5 ◆上海都市歴史発展陳列館
上海市のシンボルである東方明珠タワーの一階に位置する。展示面積は1万平方メートル、往年の上海の暮らしや街並みを模型や蝋人形で再現している。 展示物の解説は中国語、英語のほか、日本語でも書かれているので安心だ。日本人の来館者は全体の15〜20%と、海外客のなかでもっとも多いという。 竹細工店や豆腐店など昔の生業が蝋人形でリアルに再現されていたり、1920年〜30年代の華やかな上海の様子が模型や映像、音声で示されていたりと、まるでその時代にタイムスリップしたかのような感覚におちいる。往年の上海を思う存分体感できる場所と言えるだろう。また、価値の高い文物も数多く展示されている。
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