チャイナ・ストリーム
China Stream


話劇が生まれて100年 小劇場にスポットライト
                                                                         高原=文

古典的名作『茶館』の舞台

 今年2007年、中国話劇(日本の新劇にあたる)は誕生して百年を迎える。これを記念して、4月以降、32の全国各地の古典的名作、優秀作品が、相次いで北京で上演される。演目には、1960年代の中国の「知識青年」を描いた『荒野と人』、変革の中で生き抜く近代の山西商人を描いた『立秋』、骨董商人を描いた『天に向かって吼える』、軍人の生活が垣間見られる『天国で君を待っている』、歴史上の人物を描いた『張之洞』などがある。上演される演目は、リアリズムの追求をテーマにしたものや古典的名作が大部分を占め、中国話劇の現状の縮図といえるものとなっている。

 中国では、話劇の役者、脚本家、演出家は大部分が各都市の大きな劇場や劇団に所属している。毎年上演される演目も多くはなく、老舎、曹禺などによる古典名作劇が大きな割合を占める。これらの作品の表現は伝統的なスタイルで、俳優たちは台本通りにはっきりした発音でセリフを読み、懸命に人物のイメージを描き、厳かなテーマを表現するというものであった。しかし、世間の反響は理想的とはいえなかった。

人気演出家・孟京輝

 伝統的な話劇を好むのは中高年の観客だが、何かというとたちまち百元以上かかってしまうチケット代に、尻込みしてしまう人も少なくない。消費能力のある若者たちとなると、映画を好みがちだ。映画のほうが身近になり、かつて主流であった話劇のマーケットから、いつしか大量の観客が流失していった。しかしこの数年、小劇場の公演が次第に盛り上がりつつあり、話劇のマーケットに珍しくスポットライトがあたっている。

 一般の小劇場は百あまりしか席がないが、公演のコストも低く、観客と舞台の距離が近く、相互に交流している感覚が喜ばれる。このため、少人数の実験的な演目の上演に適している。

 小劇場の話劇といえば、孟京輝の名を挙げないわけにはいかないだろう。この中国国家話劇院の若い演出家は、「前衛話劇」というコンセプトを人々の心に深く刻み込んだ。『ゴドーを待ちながら』『恋するサイ』など彼の演出した作品は荒唐無稽な色彩、大胆に新機軸を打ち出したスタイル、「怒れる青年」の強烈な感情に満ちあふれ、若者たちに愛されている。表現の手法がいささか難解ではあっても、興行成績は一貫して好調で、「孟京輝の舞台を見に行く」ことが、トレンドの象徴ともなった。

『琥珀』の1シーン

 2005年、孟京輝は、斬新で前衛的な舞台演出スタイルによる伝奇的なラブストーリーのミュージカル『琥珀』を大劇場で披露した。

 「突然事故で死んでしまったヒロイン・小優のフィアンセの心臓が、高轅という男に移植された。そして、小優はひそかに高轅に関心を持ち続ける。いつしか二人は互いに惹かれあい…」

 この公演は大成功を収め、小劇場からメインストリームへと歩みを進めた成功例となった。

 もし孟京輝の舞台を「高尚な芸術」というならば、上海の若手演出家何念の作品は間違いなく「大衆向け」といえるだろう。彼の作品のほとんどはベストセラー小説や映画やテレビドラマから題材をとったラブストーリーで、セリフは軽快でユーモアがある。最近の『前妻との恋』『恋人』などはいずれも連日超満員で、上海小劇場におけるチケットセールスの記録を立て続けに塗り替えている。

 海外の舞台と言えば、人々が思い浮かべるのはアメリカのブロードウェーであり、『キャッツ』や『オペラ座の怪人』といった古典的名作である。そのブロードウェーには数え切れないほどの熱気あふれる小劇場の公演があり、絶えず新鮮なクリエイティブとインスピレーションを提供し続けることで、人口に膾炙する名作が登場している。

 中国の小劇場公演が盛んになるにつれ、作品のスタイルも多元化している。これからも、中国話劇はさらに豊富な、すばらしい表現を見せてくれることだろう。 

 


書籍情報

『墨迹』  曽子墨 著

 香港鳳凰衛視(フェニックステレビ)のアナウンサー・曽子墨は、「財経点対点」「財経今日談」など金融、経済番組の司会で広く知られている。彼女はかつてアメリカの大手投資銀行モルガン・スタンレーに勤務し、史上最大規模のM&Aを成功させた経験を持つ。

 ところが、ウォール街で飛ぶ鳥を落とす勢いだった彼女はあっさりその仕事を辞め、テレビ局に転職した。本書には、彼女の人生のターニングポイントに至るプロセスにおける思いが綴られている。今、最も注目されている1冊だ。 (長江文芸出版社 2007年2月出版)

『中日古代文化の源流 神話による比較を中心として』  張愛萍 著

 本書は著者・張愛萍の8年にわたる日本留学の成果であり、主に中日両国の神話の誕生と変遷に関する比較研究である。全編は8つのテーマに分かれ、両国の地震神、風神、雷神、山神、水神などの違いをそれぞれ比較し、中日の神話が、同一の起源ながら異なる流れであることを指摘している。

 大量の貴重な一次資料を探し集めた本書は、中日の神話研究にとって非常に大きな価値がある。書中の物語は古風で素朴なユーモアがあり、非常に読み応えがある。(浙江大学出版社 2005年8月出版)

『我的千歳寒』  王朔 著

 本書は著名な人気作家である王朔の、『我的千歳寒』、北京語版『金剛経』、『宮裏的日子』及び映画『夢想照進現実』の小説版等の作品が収められた作品集である。

 王朔の作品は、1980年代及び90年代の中国社会に大きな影響力を持っていた。そのため本書は出版前から人々の注目の的であった。さらにこの新著は、かつての作品とは異なる題材とスタイルという魅力も兼ね備えている。(作家出版社 2007年3月出版)


その他のおすすめの人気書籍

1.『与夢平行―小三児在法蘭西』 尚ブンショウ・著 湖南文芸出版社

2.『食全食美』 倪小康・主編 華芸出版社

3.『“奔奔族”理財』 周一・著 清華大学出版社

4.『我們的1970年代』 昿晨・編著 中国友誼出版公司

5.『超越国境的歴史認識―来自日本学者及海外中国学者的視角』

  劉傑、三谷博等・著 社会科学文献出版社

6.『東亜三国志 中、日、韓文化比較体験記』 金文学・著 中信出版社

7.『城市中国』 王志綱・著 人民出版社

8.『解密友邦 友邦保険中国攻略』 趙守兵、劉平・著 中国発展出版社

9.『1500―1800中西方的偉大相遇』 David E.Mungello・著 新星出版社

10.『農民日記―一個農民的生存実録』 侯永禄・著 中国青年出版社 
 

 
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