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于文=文・写真 |
「日本の鉄道の中で、JRが経営しているのは何パーセントを占めていますか」「大相撲の土俵の直径はいくら?」――日本人でもなかなか答えられない難問を、中国の大学生たちが一つ一つ攻略した。このほど中国で開催された2006年笹川杯日本知識クイズ大会で、黒竜江大学チームと寧波大学チームが優勝、主催の日本科学協会と協賛の日本財団の招きで来日した。 来日したのは、優勝した二大学の学生6人と大会の司会者ら計12人。東京と沖縄、大阪、京都、奈良を訪問した。初めて日本を訪れた学生たちは、何に対しても興味津々。都市を見て回りながら、日本に対する自分のイメージを確かめ、「本に書かれていない日本」を発見した。 日本の大学生でも道に迷うの?
東京都内の見物は、早稲田大学と一橋大学、専修大学の学生が案内役をつとめ、2、3人で一組となり、別々に行動した。 黒竜江大学の彭頴さんを案内したのは、専修大学の田上泰大君と加藤諒君だった。3人は簡単に自己紹介をした後、すぐに出発した。 最初の目的地は東京タワーだった。JRの大崎駅から電車に乗ったが、山手線ではなく湘南新宿ラインに乗ってしまった。しばらくして「次は横浜」という車内放送が流れてきたので、田上君と加藤君はやっと電車を間違えたことに気づいた。 2人はしきりに謝りながら急いで地図を取り出した。2人とも非常に緊張し、路線を調べたり、携帯を使ってネットで調べたりした。彭さんは、クモの巣のような路線図を脇から見ていたが、ちんぷんかんぷんだった。
彭さんは日本に来たのは初めてなので、横浜に着いた以上は、間違いは間違いとして、記念写真を撮るだけでもいいと思った。そこで横浜駅で三人は下車した。しかし三人は、広い駅の構内でまた迷子になってしまった。改札口はどこか、記念写真を撮る場所はないかと、田上君と加藤君は苦心惨憺した。 旅は順調に行かなかったけれど、逆に彭さんは深く感動した。田上君と加藤君の焦った表情や真面目な眼差しが、彭さんに深い印象を残した。何ごともおろそかにしない日本人の精神を、二人は身をもって証明したと彭さんは思った。 日本へ来る前、彭さんは書物で、東京の鉄道交通は非常に発達し、電車と地下鉄が縦横に交錯しているから、うっかりすると間違いやすいことを知っていた。だが、そこで暮らしている日本人でも迷子になるほどとは、想像もしていなかった。 多くの中国の大学生は日本の映画やドラマ、アニメを見るのが好きだ。木藤亜也の『1リットルの涙』や俳優の妻夫木聡など、いま流行の新作や人気スターのことを知り尽くしている。彭さんも例外ではない。 「日本の情報を知るうえでインターネットは重要な手段の一つです。中国で日本のウェブサイトに接続できるので、情報の検索と取得は難しくはありません」と彭さんは言う。田上君と加藤君は、彼女が臆せずに日本語でしゃべることに非常に感心した。「彼女は、いま日本でどんなエンターテインメントが流行っているか、よく知っている。東京に住んでいる日本人にも負けないほどです」
彭さんは、日本の大学生がどんな中国の映画やドラマを知っているか、尋ねた。田上君と加藤君の答えは『李香蘭』だった。それは日本のテレビ局が撮ったドラマで、中国の作品ではない。日本の学生は現代の中国の大衆文化に対する関心が薄く、情報を得る手段もあまり持っていないようだと、彭さんは感じた。 一日の見物が終わった後、田上君はこんな感想をもらした。「私たちは、中国の学生が日本の文化に対して強い興味と深い理解をもっているのに驚くとともに、うれしく思いました。そのうえ、上手な日本語を話すので、私たちは本当に恥ずかしいと思いました」 細部に宿る中日の文化の違い 日本側の随行の人たちは、中国人が冷たい食物を食べる習慣があまりないことを前から知っていたが、中国の大学生たちのために、わざわざ弁当を用意した。彼らにいろいろなことを体験させたかったからだ。しかし予想に反して中国の学生たちは、弁当が口に合わないことはなく、しかも新しい発見さえあった。 ある中国の学生は、弁当のご飯とおかずをきれいに食べ、弁当箱の中に残ったのは大きな貝柱一つだった。それを見た随行の人は「貝柱が好きではないですか」と聞いた。するとその学生は「大好きです。だから、最後にゆっくり楽しむつもりで残してあるのです」と答えた。
随行の人はビックリして「好きならば、最初に食べるべきですよ。もし地震が起こって死んだら、残念に思うでしょう」と言った。確かに日本は地震が多い国で、日本人が地震対策や被害救済の面でさまざまな努力をしてきたことはよく知られている。しかし、地震がもたらす危機感が、弁当のような日常生活の些細なことにまで影響を及ぼしているとは、中国の学生たちには思いもよらぬことだった。 随行の人は「たとえ地震が起こらなくても、おいしいものを残しておくと、兄弟姉妹に盗られて、食べられてしまうよ」と言った。しかし、中国の学生たちは、地震を体験したことがほとんどない。しかも大部分の学生が一人っ子なので、食べ物を盗られるというような危機感を持ったことがないのだ。 一行は、青山学院大学の付属幼稚園を参観した。園内の遊び場にさまざまな植物が植えられ、滑り台やブランコなどの遊具はすべて木造で、古くて汚かった。中国の学生の一人が質問した。「子どもたちがここで遊ぶと、きっと全身、泥だらけになるに違いありません。こんな幼稚園なのに、どうして『貴族学校』と呼ばれているのですか」。中国では、いわゆる「高級幼稚園」は必ず近代的な施設が完備していて、室内の装飾は豪華だ。父母がもっとも重視するのは安全と衛生で、もし子どもが遊んで泥だらけになると、必ず幼稚園に文句を言う。 その質問に随行の日本人はこうに説明した。「日本人は子どもたちが自然な環境で育てられ、幼いころから花草や土に触れることを望んでいるのです。それが子どもの身体と精神に大いに益するところがあると考えています。日本人が人と自然の調和を求める精神は、生け花や庭造りに反映されているだけではなく、子どもの教育や生活の細かいところまで浸透しているのです」
ほんの数日の短い訪問ではあったが、中国の学生はみな、新しい発見をした。寧波大学の劉琳さんは、京都のマクドナルドの店の外装がすべて暗い色を用いているのは、周囲の古い建築と一体感を保つためであることを発見した。京都が文物や古跡をよく保存していることよりも、古都の雰囲気を保っていることがもっとすばらしい、この点を中国は参考にすべきだと、彼女は思った。 黒竜江大学の汪培倫君は、漫画の『ドラゴンボール』が好きで、主人公の「孫悟空」の師匠である亀仙人の「亀」の字の図案があるTシャツを買った。沖縄の街をぶらついていたとき、見知らぬ人から「孫悟空」と呼ばれた。 汪君はこう語る。「黒竜江省と沖縄は遠く離れているが、一着のTシャツのおかげで、ここの人々と旧知の仲のように感じたのは本当に不思議だ。そして、今回の日本体験で、日本の文化と国民性をかなり感覚的に理解できた。今後も日本をより深く理解し、さらに両国の友好交流を進めていきたい」 |
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