復帰後10年 香港はどう変わったか
特集4
 

変わらぬ香港の魅力

ビクトリアピークから眺める香港の百万ドルの夜景

 香港に「五星紅旗」が翻れば、香港らしさが失われるのではないか、と復帰前には心配した人が確かにいた。国際色豊かな文化が失われたり、外国からの観光客が減ったりしないか、ギャンブルの好きな香港人が熱狂する競馬はどうなるのか……。しかし「一国二制度」が実施された香港は、社会制度が残されたばかりでなく、むしろさらに香港らしさを発揮している。

ますます盛ん 香港競馬

シャティンの競馬場

 香港の競馬は1884年に始まった。現在、競馬場は、香港島のコーズウェイベイ(銅鑼湾)に近いハッピーバレー(パオ馬地)とニューテリトリーのシャティン(沙田)の二カ所にある。ハッピーバレーの競馬場は何回も拡張されたが、街中にあるので2万人しか収容できない。1978年に建設されたシャティンの競馬場は6万人収容できる。

 競馬が開催される日になると、香港中が競馬の話題で沸き立つ。600万人の香港人のうち、200万人が競馬の馬券を買うといわれている。だから街頭でも地下鉄の駅でもレストランでも、予想新聞を読む人ばかりだ。

香港人の3人に1人は馬券を買っているという

 競馬場は満員だが、街中にも多くの馬券売り場があり、テレビの競馬中継を見ながら電話で馬券を買う人も多い。

 香港競馬会はもともと非営利で運営されてきたが、今もその方式を維持している。世界的にも有数な規模を誇る香港競馬会は、香港で最大の慈善公益団体である。

 2008年の北京オリンピックでは、馬術競技が香港で行われる。香港には優れた競馬場と施設があり、馬の世話や検疫などがオリンピックの規準に達しているからだ。北京オリンピックが香港でも見られることは、香港人の自慢の一つになっている。

復活するビクトリア風

1888年から動いているピーク・トラム

 香港島のビクトリアピーク(山頂)から見る香港の夜景は、「百万ドルの夜景」といわれる。観光客なら一度は必ず訪れる名所だ。

 ビクトリアピークに登るのには、普通、ピーク・トラムと呼ばれるケーブルカーに乗る。1888年につくられ、乗客120人を乗せ、海抜552メートルのピークまで1.4キロの山道を、最大斜度80度、平均斜度45度で一気に登る。

 2005年、山頂にあるピークタワー(凌霄閣)の改修が行われたとき、ピーク・トラムの途中にある4つの駅がビクトリア王朝風の古めかしい駅舎に改造された。観光客たちは、レトロな雰囲気を楽しむことができる。

食の国際色も豊か

「喫茶レストラン」のチェーン店「大家楽」には行列ができる

 香港では、世界各地の味が楽しめる。中華料理はもちろんだが、西洋料理、日本料理、韓国料理、タイ料理、インド料理、インドネシア料理……。それぞれ専門のレストランが軒を連ねている。

 その中で、何料理でも食べられる「喫茶レストラン」が幅を利かせている。ここではあらゆる料理がそろっていて、しかも値段が安いので、市民や観光客でいつもにぎわっている。

スタンレーにある気のきいたバー

 「喫茶レストラン」には、中華料理の肉類、海鮮もあれば「バオ仔飯」「生滾粥」「広東焼臘」といった香港の伝統料理、西洋料理のパンやハム、さらに日本料理の刺身や寿司、タイ料理のトムヤムクン、インドのカレー料理などがそろっていて、それをバイキング方式で選ぶことができる。

 営業時間は早朝から深夜まで。出勤前の朝食から、昼食、夕食、夜食まで、いつでも食べられるので、香港人の台所代わりになっている。




 
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