親を見れば子が分かる
子どもに相応しい相手を探そうと熱心に相手の状況を聞く親たち

 今、北京の公園では興味深い光景を目にすることができる。5、60代の人々が東屋や水辺に集い、軽く言葉を交わしたり、何か書かれた紙を見せ合ったりしているのだ。一見、インテリ風の人もいれば、労働者風の人もいて、定年前の仕事が同じだったようには思えない。

 近寄っていくと、交流の輪の中には快く迎え入れてくれたが、取材や写真撮影はほとんどの人に拒否された。

 実は、彼らは子どもの結婚相手を探すために集まっているのだ。中には、子どもに内緒で来ている人もいる。

 「お宅のお子さんは息子さんですか、それとも娘さんですか。おいくつですか。お仕事は? 身長は?」親たちはこのような質問をし合い、条件がなかなかよいと感じたら、まるで古くからの知り合いと世間話をするように、子どものことを話し、生活について語り、そこから理解を深める。さらに話がすすんだら、連絡先を交換。後は子ども自身に任せ、適当な時間と方法を見つけて会いに行くようにさせる。

 娘の年齢、身長、趣味、職業、給料、そして結婚相手の条件を書いた紙切れを手にしたAんは次のように話す。「まずは親を見ます。親が教養と常識を持った人なら、子どもも悪くないはずですから。もしあまりよくない親だったら、どんなに経済的な条件がよくても、話はすすめません」

 Aさんも娘には内緒で来ている。「娘にお見合いをしなさいと言っても聞き入れません。結婚に本腰を入れておらず、仕事が忙しいので交際範囲も狭い。だから私が代わりに焦っているのです。娘の条件は悪くないのに、なかなか相手が見つからない。もしいい相手が見つかったら、娘には同僚が紹介してくれたと言いますよ。どちらにしろ、その後は彼女自身が決めるのですから」

お見合いの移り変わり

若い男女に人気の「仮面舞踏会

 お見合いは昔からある。ただ方法は異なる。封建時代のお見合いは、古い礼儀と道徳に縛られていたため、娘たちは「正門から出られず、中門をまたげず」、親の命令と仲人の取り持ちに従うしかなかった。強制的なこの種の結婚は、「包辧婚姻(取り決め結婚)」と呼ばれた。

 1950年代、中国は新しい婚姻法を実施。政府は自由恋愛・結婚を提唱し始めた。このときから、若い人たちは、お見合いは古臭くて遅れた方法で、自分で相手を探せない腑甲斐ない人だけがするものだと考えるようになった。彼らが特に嫌がったのは、お見合いのときに経済力を問題にすること。俗っぽく、ロマンチックではないと思った。

 しかし実際は、そんなムードが漂うようになっても、お見合いはなくならなかった。人々は、親戚や友人、同僚に仲を取り持ってもらい、知り合った人の中から自分の恋人を探した。こういった交際関係に頼って網をめぐらす方法は、時間や手間はかかるが、人柄や家庭、仕事など、お互いに相手の状況をよく知ることができる。

 90年代に入ると、テレビのお見合い番組が始まった。まずは湖南テレビ局が、台湾の番組『非常男女』に触発された『バイ瑰之約(バラの約束)』を放送。若い男女がそれぞれ自分の才能を披露し、多くの人が注目する中で相手を選ぶ。このにぎやかで刺激的な番組は、またたく間に全国を風靡し、北京テレビ局の『今晩我們相識(今晩お知り合いになりましょう)』や上海テレビ局の『相約星期六(土曜日に会いましょう)』などが次々と生まれた。だが、お見合い番組が盛んになっても、すべての人が番組に参加する勇気があるわけではなかった。

結婚相手を募集している男性の条件を見て、連絡先をメモする親

 インターネットが普及すると、ネット上で知り合うという新しい方法が発生した。自分の文才や知識、ひいてはキーボードを打つ速さによってお互いを理解し、しばらくネット上で交流したあと、実際に会う約束をする。しかしこの方法はバーチャル的な要素が大きい。下心がある人につけこまれることもある。そこで、この方法をよく思わない人も多かった。

 ここ数年は、ネット上にたくさんの結婚紹介サイトが登場。これらのサイトは、嘘偽りのない個人資料を提供したネットユーザーのために、異性と知り合う場を作っている。また、会員たちを集めて郊外へ遊びに行くなど、さまざまな形のお見合いイベントも計画している。このような集団的なお見合いは、ネットの不確かさや危険性を減らし、直接交流する機会を増やした。

 ある会員制のお見合いサイト(有料)は、数軒のバーやカフェでお見合いパーティーを開催。パーティーではマジックの上演や各種ゲームが行われた。ある一定の場所で多様なレジャー活動を催し、参加者に自分の好きな活動に参加してもらうことで、さまざまな人と知り合うきっかけを与える。これが主催者側のねらいだ。

 もし、パーティーの中で「ビビビッ」とくる人がいたら、自然と関係を発展させることができる。この多元的で娯楽性の高い新しい体験は、独身のホワイトカラーたちを引き付けた。参加者によると、リラックスした環境と雰囲気の中だと、見知らぬ男女の間でも気まずさや恥ずかしさが薄れるそうだ。しかも、楽しい遊びや娯楽の中でお互いをよく知ることができ、恋愛に発展しなくても友達になれる。

現実的な相手探し

女性が意中の男性に鞠を投げて愛を告白するイベント

 前述した親によるお見合いは、今、流行中のお見合い方法だ。公益事業を行う社会団体も、大型の親によるお見合いを不定期に催している。

 子どもを心配する多くの親たちは、「昔は、職場の婦人連合会や共産主義青年団、労働組合がイベントを催して、若い男女が知り合うきっかけを作ったものだった。どうして今は誰も口出しをしないのか」と疑問を抱いている。

 中国社会科学院社会学研究所の婚姻家庭室主任、王震宇さんは、「生活は個人的な問題となりました。職場は公には口を出すが、私には口を出さない。仕事と生活を分ける。これは近年の中国社会の大きな変化です」と話す。また、「中国は、顔なじみの社会から見知らぬ人で構成された社会へと移行した。社会の流動性が大きくなり、生まれ育った場所を離れて異郷で勉強したり、仕事をしたりする人が増えた。そこで、親戚や友人との交際や社会のネットワークが失われた。これが、結婚が困難になった主要な原因の一つでしょう」と指摘する。

 親によるお見合いはロマンチックではないが、現実に直面してこの方法を受け入れる若者もいる。IT企業でエンジニアとして働くある男性も、始めは反対していたが、最終的にはお見合いで円満に結婚した。「仕事のプレッシャーが大きく、異性と知り合う時間や気力がありませんでした。親が条件のいい相手を探して来てくれれば、時間の節約になる。これは昔の『包辧婚姻』とは違います。親は単なる橋渡し役で、最終的に結婚するかどうかを決めるのはやはり自分自身ですから」と語る。 

男性の紹介プロフィールを見て好みの人を探す女性たち

 男性は続けて言う。「学生の頃は『家柄や身分がつり合う』という言葉に偏見を持っていました。でも今は、この言葉は双方の権勢や地位だけを指しているのではなく、もっと重要なのは、お互いの家庭環境、学歴、経済状況、そして信仰する宗教であることがわかりました。育った環境が似ていれば、価値観も比較的一致する。だから上手くいくのです」

 親たちの経験や考えは子どもたちとは異なる点があるので、親たちによるお見合いの成功率は高いとは言えない。公園に来ていた親たちも、何度も公園に足を運び、何度も話をまとめようとしたが、子どもは満足しなかったと明かす。

 社会の変化により、お見合いで求める条件も絶えず移り変わっている。60〜70年代は、労働者、農民、軍人の家庭出身の人が喜ばれたが、80〜90年代になると、教養や知識のある人が求められるようになった。今の条件は、「高学歴、高収入、マイホームあり、マイカーあり」だ。

 確かに、経済的な条件は、生活レベルに直接影響する。しかし、「高収入、マイホームあり、マイカーあり」などといった条件を掲げてお見合いしている人を見ると、本当に良縁を求めているのか、それとも他の目的があるのかと疑ってしまう。(写真提供・NEWSPHOTO)


参考データ
 

▽現在流行中の新しいお見合い

ダンマリお見合い

 美しい音楽が流れるお見合い室で、筆談によって交流。口を開いてはいけない。一人の人と15分筆談したら、相手を変える。お互いに気になるカップルが生まれたら、主催者は「正常な」お見合いを設定する。

8分間お見合い

 8組の男女が、すべての異性とそれぞれ8分間ずつお見合いする。時間が短いのでスピーディーに質問し、その中から気になる相手を選ぶ。短い時間で上手く自分の魅力をアピールしなければならない。

お見合いツアー

 旅行中にいい相手を見つけるというお見合い方法について、気まずい思いをしなくてすむと考えている若者は多い。そこで、春の観光シーズンになると、お見合いツアーが盛んになる。

合同食事会

 いわゆる合コン。主催者は、趣味や性格、職業など参加者の要望に合わせて4〜8人のグループを作り、レストランや喫茶店などで会食させる。一般的に、6人グループの夕食会が最適。見知らぬ人と知り合うドキドキ感があり、一対一ではないため気まずくない。


社会団体が催した親たちによる大型お見合いの会場には、たくさんの親たちが詰め掛ける

 
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