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7月21日の発売日に、『ハリー・ポッター7』の英語版を買って喜ぶ中国の小学生たち(北京・西単の図書大厦で) |
全世界をブームに巻き込んだ児童書『ハリー・ポッター7』の中国語版が、10月下旬にお目見えする。7月の英語版『ハリー・ポッター7』の発売、そして8月の映画『ハリー・ポッター5』の上映に続き、「ハリー・ポッター」ブームの第三の波が遠からずやってくる。グローバル化の影響を受け、中国の小・中学生も世界中の子どもたちと同様、『ハリー・ポッター』の最終章を、胸をときめかせて心待ちにしている。
北京では英語版『ハリー・ポッター7』発売日の前夜、7月20日の夜8時から、「ハリー・ポッター」ファンが魔法使いのコスチュームで各書店の前で列をなし、翌日7時からの発売を待ち焦がれていた。発売日当日には、北京図書大廈だけで2300部以上が売れたという。書店の階段に座って英中辞典を引きながら、買ったばかりの本をすぐに読み始めるせっかちな子どももいた。また、街の随所に見られる新聞スタンドにもこの本が並ぶという予想外のできごともあった。それまで、書籍といえばせいぜいベストセラーの青春小説、アニメのノベライズなどを取り扱う程度だった新聞スタンドが、英語で書かれた870ページにも及ぶ、小・中学生にとって決して安いとは言えない200元近い価格の書籍を売るという現象からも、その人気の高さがわかる。
魔法使い、呪術師の物語である中世ヨーロッパ風のファンタジー小説『ハリー・ポッター』は、文化的バックグラウンドの異なる中国においても、常に受け入れられてきた。それは現在の中国の子どもたちがみな、幼い頃から『グリム童話集』を読み、「トランスフォーマー」のオモチャで遊び、ハリウッドの映画を見て育ったからであろう。グローバル化が進みつつある今日、中国の子どもたちは西洋文化の影響から逃れることは不可能である。ギリシア神話の人物に詳しい子どもはたくさんいても、中国の神話となると、おそらく「女 の補天」「大禹の治水」くらいしか知らないだろう。これは憂うべきことである。
中国でも、これまでに数多くの優秀なオリジナル児童文学作品が登場している。たとえば、有名な童話作家鄭淵潔の『皮皮魯と魯西西』は、11、2歳の双子の兄妹の不思議な冒険の体験を描いたもので、20数年前に一世を風靡した。関連小説や雑誌、アニメなども好評を博した。しかし、子どもたちの好みがだんだん大人びてゆくにつれ、これらの作品は「子どもっぽい」と見なされ、顧みられなくなってしまった。『ハリー・ポッター』『ロード・オブ・ザ・リング』などは、プロットや雰囲気が暗く、矛盾や複雑なキャラクターを描いており、それがかえって青少年の好みに合ったのである。
面白いことに、子どもたちが大人の読み物を好むようになる一方で、大人たちの好むものはだんだん低齢化している。『ハリー・ポッター』を買い求める人々の列には、20代、30代も少なくない。彼らは、せめて周囲から笑われないようにと、表紙やイラストの落ち着いた「大人版」のハードカバーを選んでいた。
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