五輪聖火トーチ「祥雲」 情熱に火を灯し夢を伝える 

沈暁寧 王浩=文

聖火トーチ「祥雲」は、長さ72センチ、重さ985グラム。15分間燃焼可能であり、風速ゼロの環境においても炎の高さは25から30センチ

 今年6月、「情熱に火を灯し、夢を伝える」をテーマとする北京オリンピックの聖火リレー選手選抜計画が発表された。世界中から21880人の選手が選ばれ、聖火トーチ「祥雲(瑞雲)」のリレールートをつなぐ。10代の若者から90歳以上のお年寄りまで、膨大な人数の中国人が「祥雲」を掲げて走る栄誉の獲得に挑む。

 6月23日、北京オリンピック組織委員会は、山の郵便配達人・王順友、人気俳優・濮存マ、科学技術の専門家・孔祥瑞及びフィギュアスケート世界チャンピオンの申雪、趙宏博ペアを初の聖火リレー選手にノミネートした。中でも、四川省ムリ・チベット族自治県から参加する王順友さんは、20年以来ずっと一人で馬を引き、山奥、谷底、川のほとり、雪山の山頂に至る配達ルートを歩き続けた。これまで歩いた総距離は26万キロに達する(本誌2006年4月号「実在する『山の郵便配達』」参照)。42歳の王さんにとって、郵便物を配達する自分の両手が北京五輪の聖火トーチを掲げるとは考えたこともなかった。

 「祥雲」は中国各地で巡回展示され、たくさんの市民を引きつけた。河南省では、幸運にも市民代表となった大学生が、自分の手で「祥雲」を頭上に高く掲げた。「ほんの数秒間というわずかな時間ではありましたが、その瞬間の誇らしい気持ちは一生忘れられません」と、大学生は興奮ぎみに語った。

 2005年、北京オリンピック組織委員会は、トーチのデザインを公募。この2年間に388点のアイデアが世界中から寄せられた。選考を重ねた結果、最終的に「如意」「長城」「凧」「竹」などの候補作品の中から抜け出したのが、「祥雲」であった。

 「祥雲」は、中国漢代に起源する「漆紅」をメインの色調としている。紙巻軸の形をイメージし、中国四大発明の「紙」を表している。そして、トーチの名称及び表面に刻まれた雲の紋様は、中国伝統文化における雲に対するイメージに由来する。古人にとって、様々な形に姿を変える雲は、神仙が天と地の間を行き来する「乗り物」であるだけでなく、天意と民情を表現するものでもあった。そのため、聖火リレーの選手が「祥雲」を高く掲げるとき、「天人合一(天と人間がひとつになる)」という理想の境地に人間と人間及び人間と自然の間の「淵源共生、和諧共融(同じ源から生まれ、調和を保ちながら生きていく)」というオリエンタル・スピリットを伝えることを意味している。

2007年7月、新疆ウイグル自治区の区都・ウルムチ市でお目見えした「祥雲」と記念撮影をする人々(新華社)

 五輪トーチはアルミ合金を主な材料とし、握る部分には手触りのよい、リサイクルが可能な環境にやさしい素材が使われている。とても軽く、人の手を握るような感触である。燃料はプロパンで、燃焼後は二酸化炭素と水になるため、汚染を引き起こすことなく、環境にやさしい。独特の燃焼システムによって、 時速65キロの強風や大雨の中であっても、消えることなく燃え続けることができる。

 2007年4月26日、正式に世間にお目見えした「祥雲」に国内外から賛嘆の声があがった。国際オリンピック委員会終身名誉会長であるサマランチ氏は「『祥雲』はオリンピック精神と中国文化がパーフェクトに融合した芸術品であり、オリンピックの発展史においても深く永遠のしるしを残すものである」と語った。「祥雲」のクリエイティブ・ディレクターである姚佳映さんは、祥雲の勢いを借りて、吉祥文化を広く伝え、さらに東洋文明を伝えたいという。

 聖火トーチ「祥雲」は、08年3月30日にギリシャで採火される。このトーチはそれから百30日間、13.7万キロをめぐり、途中チョモランマも越えるという。「『祥雲』は古代中国と外の世界を繋ぐ象徴であったシルクロードを通り抜け、五大陸を経由して、これまでに通ったことのない場所も訪れる。異なる民族、人種、信仰の人々に親交と尊敬をもたらし、北京オリンピックの吉祥、平和の雰囲気を世界に伝えるだろう」と、国際オリンピック委員会のロゲ会長も高く評価した。

 来年の聖火リレーで、俳優・濮存マは長城の上で身体障害者のリレー選手にトーチを渡そうと考えている。また、「氷上の恋人」と呼ばれる申雪、趙宏博ペアは2人一緒にトーチを掲げながらリレールートを走ることを望んでいる。それぞれの選手の願いは、それぞれ異なるものであるかもしれないが、受け渡しをするときにはいずれも、「祥雲」の「情熱に火を灯し、夢を伝える」というテーマをすばらしく表現してくれるに違いない。


 
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