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趙啓正氏は、上海市副市長や国務院新聞弁公室主任をつとめ、中日関係やメディアのあり方について発言を続けてきた。中日関係やメディアの役割、中日協力の可能性について、語ってもらった。 |
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私は温家宝総理が「氷を融かす旅」を終えた直後に訪日し、中日関係について、日本の政財界の要人やジャーナリスト、学者らと意見を交換した。誰もが一致して認めたことは、昨年の安倍首相の訪中と今春の温家宝総理の訪日がともに成功したということだった。
安倍首相の「戦略的互恵」の提案を中国側が受け入れたことや、温総理が国会で、日本が何回も謝罪したことに理解を示し、政府開発援助(ODA)に対しもう一度感謝の意を表したことは、日本側に歓迎された。
中国の総理の国会演説を、中国と日本で同時に生中継するのは初めてのことであり、日本側はそれが不成功に終わるのではないかと心配していた。万一、出席する議員が少なかったら、万一、議員からヤジやブーイングが起こったら、と日本側は心配した。中国側は、中国が中日関係の改善を心から願っていることを、中国人にも日本側にも理解してもらうのは良いことだと考えて、生中継に同意した。結果は大成功だった。心配したようなことは起こらなかった。 いま、大切なことは 日本側は誰もが、中日関係を良い方向に変えて行かなければならない、と思っており、おそらく公然とこれに反対する人はいないだろう。しかし依然として、日本政界の要人の中には、一部の難しい問題を絶えず提起する人がいる。しかもその問題提起は、あまり理にかなっていない。例えば中川昭一自民党政調会長の「日本はまもなく中国の第32番目の省になってしまう」という発言がそれである。
中日関係の発展は、政治的に、両国の指導者がしっかりと進む方向を定め、決してバックさせてはならないし、Uターンさせてもならない。必ず前へ進むことが必要であり、速いか遅いかは二の次の問題だ。最近6、7年、小泉内閣の時期は後退期であった。
両国総理の相互訪問で、いま、中日関係は下り坂から上り坂に転換しようとしている。この過程で、運転している両国の指導者は、いっそう慎重でなければならない。なぜなら、車が坂を上るときは、いっそううまく運転しなければならないからだ。どんなに性能の良い車でも、エンジンを止めず、アクセルを適当に踏み、適切なギアを選択して、注意深く運転しなければならない。
「氷はすでに割られた。それなら我々はどうすべきか」と中曽根康弘元首相は言った。私の答えはこうだ。「『中日友好丸』は前に向かって航海していかなければならない。進む方向は正しく、しかも慎重に。船には中日の共同の利益が載っている」 (全国政治協商会議外事委員会副主任 趙啓正)
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