1. 温家宝中華人民共和国国務院総理は、日本国政府の招待に応じ、2007年4月11日から13日まで公賓として日本を公式訪問した。温家宝総理は、日本滞在中、安倍晋三内閣総理大臣と会談を行った。また、天皇陛下に謁見し、国会において演説を行い、日本の各界の人々と幅広く接触を行う。
2. 中日双方は、中日共同声明、中日平和友好条約及び中日共同宣言の諸原則を引き続き遵守することを確認した。
3. 双方は、歴史を直視し、未来に向かい、両国関係の美しい未来を共に切り開くことを決意した。
台湾問題に関し、日本側は、中日共同声明において表明した立場を堅持する旨表明した。
4. 双方は、2006年10月の安倍総理訪中の際に双方が発表した「中日共同プレス発表」に基づき、「共通の戦略的利益に立脚した互恵関係」(以下「戦略的互恵関係」という。)の構築に努力し、また、中日両国の平和共存、世代友好、互恵協力、共同発展という崇高な目標を実現することを再確認するとともに、「戦略的互恵関係」の構築に関し、以下の共通認識に達した。
(1)「戦略的互恵関係」の基本精神は、以下のとおりである。
中日両国が、アジア及び世界の平和、安定及び発展に対して共に建設的な貢献を行うことが、新たな時代において両国に与えられた厳粛な責任である。このような認識の下、中日両国は、将来にわたり、二国間、地域、国際社会等様々なレベルにおける互恵協力を全面的に発展させ、両国、アジア及び世界のために共に貢献し、その中で互いに利益を得て共通利益を拡大する。そのことにより、両国関係を新たな高みへと発展させていく。
(2)「戦略的互恵関係」の基本的な内容は、以下のとおりである。
(イ)平和的発展を相互に支持し、政治面の相互信頼を増進する。両国のハイレベルの往来を維持し強化する。それぞれの政策の透明性の向上に努める。両国の政府、議会、政党間の交流と対話を拡大し深化させる。
(ロ)互恵協力を深化させ、共同発展を実現する。エネルギー、環境保護、金融、情報通信技術、知的財産権保護等の分野における協力を強化し、協力のメカニズムを充実させ整備する。
(ハ)防衛分野における対話及び交流を強化し、共に地域の安定に向け力を尽くす。
(ニ)人及び文化の交流を強化し、両国民の相互理解及び友好的感情を増進する。両国の青少年、メディア、友好都市、民間団体の間の交流を幅広く展開し、多種多様な文化交流を展開する。
(ホ)協調と協力を強化し、地域及び地球規模の課題に共に対応する。北東アジアの平和と安定の維持に共に力を尽くし、朝鮮半島の核問題を対話を通じて平和的に解決することを堅持し、朝鮮半島の非核化という目標を実現する。国際連合が安保理改革を含め必要で合理的な改革を行うことに賛成する。ASEANが東アジアの地域協力において重要な役割を果たすことを支持し、共に開放性、透明性、包含性の三つの原則の基礎の上に東アジアにおける地域協力を促進する。
5. 双方は、「戦略的互恵関係」の構築のため具体的な協力を行うことを決定し、以下の成果を得た。
(1)対話と交流の強化・相互理解の増進
(イ)首脳レベルの交流
両国の指導者は、頻繁な往来を維持するとともに、国際会議の場において引き続き頻繁に会談を行う。
(ロ)中日ハイレベル経済対話
両総理は、立上げ会合に共に出席し、同対話を立ち上げることとし、それぞれ曾培炎副総理及び麻生太郎外務大臣を同対話の共同議長に指名し、対話の構成及び任務を明確にし、両国の経済及び経済面における両国の協力の世界経済に対する重要性を確認し、年内に北京において第一回会合を行うことで一致した。
(ハ)外交当局間の対話
双方は、両外相が二国間問題及び共に関心を有する地域・国際問題について緊密な協力を維持することを確認し、中日戦略対話、中日安全保障対話、中日経済パートナーシップ協議、国連改革に関する中日協議、アフリカに関する中日協議、中日外務報道官協議等、幅広い分野に及ぶ様々なレベルの対話を強化していくことを確認した。
(ニ)防衛交流
中国国防部長は招待に応じ本年秋に訪日する。双方は、中国海軍艦艇の訪日、その後の日本国海上自衛隊艦艇の訪中を早期に実現することで一致した。また、両国の防衛当局間の連絡メカニズムを整備し、海上における不測の事態の発生を防止する。
(ホ)人的往来及び青少年交流
中国側は、虹橋空港と羽田空港との間の定期的な国際旅客チャーター便の開設に同意した。
双方は、中日国交正常化35周年に合わせ、日本からの直行便を有する中国の19の都市に、総計2万人規模の訪問団を派遣するなどの計画を共に実施する。
また、日本側より、「21世紀東アジア青少年大交流計画」に基づき、今後5年間、中国の高校生を日本に大きな規模で招きたい旨表明し、中国側はこれを歓迎した。双方は、両国の青少年の大規模交流計画を双方向で実施することで一致した。
(ヘ)文化交流
双方は緊密に協力し、中日文化スポーツ交流年が積極的な成果を得ることを確保する。双方は、互いに相手国の首都に文化センターを開設することにつき一致した。
(2)互恵協力の強化
(イ)エネルギー・環境協力
双方は、「環境保護協力の一層の強化に関する共同声明」の発表を歓迎し、中日双方の地球規模環境問題に対する真摯な取組を確認するとともに、渤海、黄海区域及び長江流域等重要な水域における水質汚濁防止、循環型社会の構築、大気汚染防止、気候変動対策、海洋漂流ゴミ防止、酸性雨及び黄砂対策等の協力を重点的に展開していくことで一致した。
双方は、第一回エネルギー閣僚政策対話の開催及び中日間のエネルギー分野における協力強化に関する共同声明の発表を歓迎し、省エネルギー・環境ビジネス推進モデルプロジェクトを始め、省エネ、石炭、原子力等のエネルギー分野や、アジア地域における省エネルギーの推進など多国間の枠組みにおける両国の協力を重点的に強化していくことで一致した。
双方は、中日民間緑化協力委員会の活動を支持し、日本の民間団体などによる中国での植林協力事業を一層促進すること、また、持続可能な森林経営にも両国が協力して取り組んでいくことを確認した。
(ロ)農業協力
双方は、農業分野での協力を積極的に展開していくことで一致した。中国側は、中国の検疫基準に合致する日本産米の輸入に同意し、日本側はこれを歓迎した。双方は、双方の農産物の輸出問題について、引き続き積極的に協議を行っていくこととした。
(ハ)トキ
中国側は、日本に二羽のトキを提供することに同意し、日本側は謝意を表明した。双方は、トキ保護に関する協力を展開することで一致した。
(ニ)医薬品分野における協力
双方は、新型インフルエンザ対策及びがん対策を重点とする中日医学協力構想を推進していくことで一致した。日本側は、がん対策の協力について、官民の関係者からなるミッションを早期に中国に派遣して交流を行う旨伝達し、中国側はこれを歓迎した。
(ホ)知的財産権
双方は、相互尊重、互恵で双方が利益を得るとの基礎の上に、知的財産権分野における対話と協力を強化し、知的財産権の運用及び保護の水準を不断に高め、もって中日間の経済面での協力を円滑に発展させていくことで一致した。
(ヘ)中小企業博覧会
日本側は、要請に応じ、9月に広州にて開催される中小企業博覧会について主賓国として中国側と共同で同博覧会を主催することに同意した。
(ト)情報通信技術分野における協力
双方は、次世代移動通信及び次世代ネットワーク等の情報通信分野における協力を一層強化し推進していくことで一致した。
(チ)金融分野における協力
双方は、金融及び金融監督の分野における協力関係を一層強化していくことで一致した。
(リ)刑事司法分野における協力
双方は、中日間の刑事司法分野における協力関係を強化していく重要な一環として、中日刑事共助条約締結交渉の年内実質合意に向け努力していくことで一致した。双方は、また、中日犯罪人引渡条約及び受刑者移送条約の締結に関する事項についての協議を引き続き推進することで一致した。
(3)地域・国際社会における協力
(イ)国連改革
双方は、国連改革問題について対話と意思疎通を強化し、共通認識を増やすべく努力することで一致した。中国側は、日本が国際社会で一層大きな建設的役割を果たすことを望んでいる。
(ロ)六者会合における協力
双方は、六者会合の2005年9月19日の共同声明に従って六者会合プロセスを推進し、対話と協議を通じて、朝鮮半島の非核化を実現し、北東アジア地域の平和と安定を維持するため、共に協力して力を尽くすことを再確認した。また、双方は、2007年2月13日に六者会合が達成した「初期段階の措置」に関する共同文書を六者が共に努力して全面的に実施すべきであるとの認識で一致した。日本側は、拉致問題を含む日朝間の懸案事項を解決し、日朝国交正常化交渉を進める方針を説明した。中国側は、日本国民の人道主義的関心に対して理解と同情を示し、この問題の早期解決を希望するとともに、日朝関係が進展することへの期待を表明し、このため必要な協力を提供したい旨表明した。
(ハ)投資交流
双方は、実務的で共に利益を得る中日韓投資協定の早期合意及び中日韓ビジネス環境改善行動アジェンダの策定のため然るべく努力していくことで一致した。
(ニ)経済協力
双方は、2008年に終了する日本の対中円借款が、中国の経済建設及び経済面での中日協力に積極的役割を果たしたとの認識で一致し、中国側はこのことに対して感謝の意を表明した。双方は、協力して第三国に援助を提供する問題について対話を行うことで一致した。
6. 双方は、東シナ海問題を適切に処理するため、以下の共通認識に達した。
(1)東シナ海を平和・協力・友好の海とすることを堅持する。
(2)最終的な境界画定までの間の暫定的な枠組みとして、双方の海洋法に関する諸問題についての立場を損なわないことを前提として、互恵の原則に基づき共同開発を行う。
(3)必要に応じ、従来よりハイレベルの協議を行う。
(4)双方が受入れ可能な比較的広い海域で共同開発を行う。
(5)協議のプロセスを加速させ、本年秋に共同開発の具体的方策につき首脳に報告することを目指す。
7. 双方は、「中国における日本の遺棄化学兵器の処理に関する日中連合機構」の設立に対して歓迎の意を表明した。また、日本側は、中国側の提案を踏まえ、廃棄のプロセスを加速するため、移動式処理設備を導入して作業を進めていくことを表明し、中国側はこれを歓迎した。
8. 中国側は、温家宝総理の日本訪問期間中における日本側の心のこもった友好的な接遇に対し、感謝の意を表明した。
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