北京大学大学院光華管理学院 企業管理・戦略管理学修士課程
 中川幸司=文・写真
 
日本人留学生のネットワーク始動

 
  
 中国の大学でいま、多くの日本人留学生が学んでいる。学生時代にIT業界でベンチャー企業を立ち上げた私も、今後の事業の中国展開を目指して中国に目を向けた。もはや語りつくされていることだが、経済的に見て中国自体が大きなマーケットであり、日本にとって中国との交流は不可欠だ。「どんな問題が起ころうとも、中国は僕らのパートナーだ」という考えにたち、私は中国を訪れた。そしてまず語学学習のために大学に通った。

 大学で日本人留学生たちは、自分たちのコミュニティーを形成することがよくある。それは、母国語での会話が楽だとか、過酷な生活環境で助け合いが必要だとか、いろいろな理由があるだろう。私の在学した北京外国語大学でも2年ほど前に、日本人留学生の会が作られた。

 社会人の経験があったせいで、私が情報のまとめ役を担った。初めのころは、学内の交流会、イベントなどを、メールや学内掲示などを使ってみんなに知らせる活動から始まった。そのうちに留学生の生活を援助する生活互助会的役割を持つようになった。そこで私たちは正式に学生の日本人会を発足させ、学生ボランティア組織として動き出したのである。同時期に、北京語言大学や北京師範大学などでも、学生有志による日本人留学生会が発足した。

 私は当時、北京外国語大学日本人会運営委員長だった。その活動から、中国にいる日本人留学生をとりまく現在の環境について、2つのことを痛切に感じた。

 第一は、留学生を取り巻く環境が厳しいということである。

就職を真剣に考え、熱心に社会人の話に耳を傾ける学生たち
 日本人留学生は、さまざまなルートで中国へ留学するが、英語圏への留学に比べはるかにサービス面で劣る状況下にある。それは言葉の問題だけではなく、学校側とのコミュニケーションの難しさ、生活面や安全面での不安、環境に慣れるまでの道筋の不明瞭さなどである。

 大学というところは、学外よりはさまざまな面で守られてはいるものの、生活はやはり厳しい。買い物、食事、授業、バス、タクシー……すべてがなかなかうまくいかない。サービス業というものに対する考え方が根本的に違っているからだろう。

 一方で、私は数年前、イギリスで暮らしたことがあるが、中国は文化の違いがイギリスより相対的に少ない。このため初めは戸惑うものの比較的容易に文化に慣れていくように感じる。日本人にとっては、この点から見て中国との交流は障害が実は少ないのかもしれない。

 第二に、これは中国語圏以外の国でも同じだと思われるが、就職に関する情報の入手が難しいことである。

 日本では、所属する学校が就職に関する情報を提供し、相談窓口もある。企業や団体から直接、採用情報を手に入れることもできる。しかし、中国の大学では、留学生はインターネットを駆使するか、日本に戻ってからの就職活動に望みをかけるか、または中国で積極的に活動している人材派遣会社の契約社員になるか、人材紹介会社の主催するセミナーなどに参加をするか、といった選択肢に限られる。

 地域別に見れば、就職活動の環境は、上海や大連の方が北京よりもわずかに良いといえるが、全体的に見て好ましい環境とは言い難い。国外なので、ある程度のギャップは存在するにしても、埋められる情報ギャップはありそうである。

 そこで私たち学生会は、就職に関するセミナーを開いた。小規模であったにも関わらず参加した留学生たちは、「いままでこのような情報を手に入れる機会がなかった」「就職活動の重要性を初めて認識した」などと高く評価してくれた。

 現在、私たちは「中国にいる日本人学生の能力を研磨できる社会空間の獲得を通じて、中国文化への先進的で豊富な理解を創出する」というビジョンのもと、中国日本人学生会ネットワーク(通称RX1)として、中国全土の各大学の日本人留学生会が連絡をとりあいながら、本格的に学生会ボランティア活動をしている。

 こうしたさまざまな困難を克服すべく、RX1は活動している。興味のある方、学生会設立を目指す有志学生はぜひご連絡を。

 連絡先=中国日本人学生会ネットワーク(RX1) http://rx1.jp/ (2007年2月号より)

 

 
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