【お祭り賛歌】


貴州省台江県ミャオ族の姉妹節
おこわに込めた愛の告白

             写真・秦剛 楊華  文・張少華 張雲生 秦剛


踊り歌うミャオ族の娘たち
 中国南西部に位置する貴州省台江県は、緑の山に囲まれ、町の近くには清流が流れている。ここはミャオ族の居住地で、ミャオ族の伝統習俗や悠久の歴史文化が息づいている。中でも、姉妹節はもっともにぎやかな祝日である。「姉妹」とは、若い女性のことで、この日に恋人を探すことから、「古い歴史を持つ愛の告白の日」との名声を得ていて、含蓄があり、詩趣に満ちている。

気に入った相手とともに楽しい一時を過ごす
闘牛は欠かせないイベントの一つ
 姉妹節の日程は地域ごと違い、旧暦2月15日のところもあれば、3月15日のところもある。お祭りは、3日間続く。

 姉妹節の由来については、様々な言い伝えがある。もっとも広く伝えられているのはこんな話だ。

若い男女が川辺で歌合せをして、相手への思いを表現する
年寄りも盛装を身につけてお祭りに参加する

 台江県には三つの小村があり、辺鄙な場所だが、村人は働き者で、衣食に満ち足りた暮らしをしていた。生活での不満と言えば、村の多くの女の子が、美しく成人しても結婚相手を見つけられなかったことで、両親をやきもきさせていた。

 そんなある日、年寄りたちは話し合いを持ち、その原因は、「村が山奥にあり、他の村の若者との出会いがないことだ」との考えに至った。そこで、お祭りを開催しさえすれば、周辺の村々から若者を招いて、娘たちは、自由に気に入った相手を探すことができると考えた。村人たちも、非常に良いアイデアだと納得した。

 お祭りの前には、みんなが家からもち米を持ち寄って、ある家で炊き出しをした。そして、木の葉から抽出した液体を水に浸した米にたらして様々な色に染めた。この彩色おこわは、招いた若者への贈り物になった。この恋人に贈る食べ物は、姉妹飯という。そこで、姉妹飯を食べるイベントが、ミャオ族の村で、恋人を選ぶお祭りになった。

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村々から人びとが集まり、ミャオ族独特の祝日を楽しむ
男たちが、祝日を告げる牛角のラッパを鳴らす

 台江県施洞の姉妹節は非常ににぎやかだ。旧暦3月中旬の姉妹節が近づくと、ミャオ族の村々はお祭りの準備で忙しくなる。3月13日、娘は山に登り、カエデや黒っぽい木の葉を集め、それぞれを煮出して黄、緑、紫などの液体にわけ、色ごとにもち米を浸し、炊き出しを始める。炊き上がると、色とりどりの姉妹飯を一つの丸い箕の中に入れ、お祭りでの宴会用と客人への贈り物用とする。

 現地の習わしでは、姉妹飯の色にはすべて意味がある。緑は村の清流のような美しさ、赤は村の繁栄、黄は五穀豊穣、紫、青は吉兆、白は愛情の純潔さを象徴している。

 3月14日午前、若い男女は、おいしい料理の材料にすべく、川まで魚やエビを捕りに出かける。午後、娘たちは、姉妹飯をひと碗ずつ持ち、アヒルの卵とアヒルを買ってくる。なぜかと言えば、アヒルは泳いで川を渡れるため、愛情の彼岸、結婚にたどり着ける象徴だと考えられているためだ。

若い男女は、一緒に魚やエビを捕る
きれいな図柄が描かれたお餅は、お祭りで一番人気の食べ物だ

 これらの準備が終わると、同世代の娘たちは、グループごとに一軒の家に集まる。そこに長テーブルを置き、酒や料理を準備し、他の村からやってきた若者と姉妹飯を食べる。食事が終わると、みんなは村の広場に集まって、歌ったり踊ったり恋人を探したり……にぎやかなお祭りは夜通し続く。

姉妹飯を作り、素敵な恋人と出会えることを夢見る
山で姉妹飯の染料を集める
姉妹飯の中には、娘たちの「ラブレター」が隠されている

 3月15日は最終日で、もっともにぎやかな日でもある。美しい清流のほとりには、黒山の人だかりができる。娘はみな、きれいな刺繍をほどこした衣装、精巧で美しい銀飾りを身につけ、闘牛、竜船競漕などの観戦に出かける。そして、自分が接待した男性、つまり姉妹飯をともにした若者と一緒に、芦笙(ミャオ族やトン族が使う管楽器で、日本の笙のようなもの)や銅鼓の伴奏に合わせて踊り、楽しい時を過ごす。また、お互いに気に入った男女は、連れ立って、「村の告白の場」である川辺に行き、小さな声で歌合せをして、お互いの気持ちを表現する。

 夜のとばりがおりた頃、若者は、気に入った娘に姉妹飯を求める。娘は、人に気付かれないように家に戻り、姉妹飯をハンカチで包み、かごに入れて相手に贈る。若者が娘から姉妹飯を受け取った時には、まるで裁判所の判決文を受け取った時のように、不安な気持ちになる。そっと包みを開け、娘が自分に送ったのがどんな「愛情の信号」なのかを確かめる。

色とりどりの姉妹飯

娘たちは、若者たちをもてなす

 娘は普通、姉妹飯の上に、箸、松葉、カギカズラ、ニンニク、数個の唐辛子のいずれかを置いている。もし、箸か松葉が置いてあれば、娘は若者に好印象を持っていて、新しい傘を贈ってほしいという気持ちを暗示している。傘は、若者が嫁を娶る時に使う。松葉は、裁縫道具を贈ってほしいということを意味している。それは、花嫁衣装や新しい服を作る際に使う。カギカズラは、娘は若者を好きになっただけでなく、カギカズラの鈎のようにその人を引っ掛けて、永遠に離さないことを表す。また、若者がすぐにでも彼女のために糸と絹織物を買って、花嫁衣装を作る手配をしてほしいことを表している。

 一方ニンニクは、二人がうまく行く可能性が小さいことを意味し、もし唐辛子があれば、今後一切交流を持ちたくないことを表す。

 箸や松葉などの贈り物を受け取った若者は、すぐに傘や裁縫道具、絹織物などを買い、姉妹飯の入っていたかごに入れ、こっそりと娘の村に出向き、意中の人に返礼し、かごを返す。

 姉妹節が終わった。恋人たちの愛情の花は、姉妹飯から膨らみ始め、愛情の種をつけようとしている。満開の花のようで、近い将来、愛情の果実を結ぶだろう。(2002年10月号より)