写真・呉 健 劉世昭 文・呉 健 |
蜀の国は仙山多し 峨眉ばくとして匹し難し――。唐の大詩人李白がこのように讃えた峨眉山。四川盆地の西にそびえるこの山は、豊かな自然と文化を今に残す世界的な財産だ。 峨眉山の標高は3099b。ふもとは亜熱帯、中腹は温帯、山頂部は亜寒帯と、三つの気候帯が断層的に重なっており、山全体の生態環境がよく保たれている。山頂に向かうにつれて風景がめまぐるしく変わるため、「一日の中に四季あり、十里進めば天同じからず」と言われてきた。ふもとに濃い霧が立ちこめているのに山頂は晴れ渡っていたり、山頂が吹雪いているのにふもとはポカポカと春めいて、花が咲き乱れていたりということも珍しくない。 峨眉山の森林被覆率は90%に達し、典型的な植生がほぼ完全な形で残されている。景観区内には3200種もの高等植物が繁殖し、うち峨眉山だけに見られる種が百種以上ある。動物の種類も2300種と豊富で、峨眉山だけに生息するものを含め157種の稀少動物が確認されている。
山中にある自然生態サル区では、峨眉山霊猴(蔵び猴ともいう)と戯れることができる。水辺から聞こえてくるのは、峨眉山だけに生息する弾琴ガエルの澄んだ鳴き声。木々の間には、枯葉チョウが舞っている。 また峨眉山は、地質学的にも大変興味深い山だ。カンブリア紀以降の各時代の地層が重なり合っており、多くの専門家がここで調査研究を展開している。 頂上のほど近く、海抜3077bの地点にある金頂。西に雄壮な姿を見せているのは、標高7556bを誇る四川省の最高峰、貢かつ山だ。東側の眼下に広がっているのは川西平原。水田の間を流れる幾筋もの河川が、陽光を反射して輝いている。 広さ154平方`に及ぶ景観区には、険しい岩壁、神秘的な空気が漂う深い谷、サラサラと音を立てる清流、天をつくような巨大な古木などがある。そうした景色を眺めていると、人々がこの山を「雄大にして秀麗、神妙にして奇致なり」と賞賛するのももっともだと思えてくる。かつて峨眉山の景色を「十大美景」にまとめた人がいたが、実際に山に登ってみれば、数百、いや数千もの美景を堪能できるはずだ。運が良ければ峨眉山の四大奇観、日の出、雲海、仏光(ブロッケン現象)、聖灯(燐鉱石の光)を目にすることもできる。 九月号でも紹介した通り、峨眉山は悠久の仏教文化を育んできた名山でもある。仙山仏国、植物の王国、動物の楽園、天然の地質博物館…。峨眉山は、そうした呼称に恥じない魅力に溢れている。(2000年11月号より ) |
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