前漢の青銅器である長信宮灯(ランプ)は、1968年、河北省満城県の漢代の中山靖王だった劉勝と妻の墓(満城漢墓)から出土した。かつて、劉勝の祖母である竇太后の長信宮に置かれていたため、この名がつけられた。
秦漢時代に、青銅工芸は、精巧で実用的な生活用品と、鑑賞用の芸術品という二つの方向に発展した。彫刻装飾がほどこされた灯籠は、早くは三千年以上前の殷代に現れ、漢代の職人が、先人の伝統を継承し、さらなる創造を加え、数多くの逸品を生んだ。同ランプは、漢代の代表的作品で、実用性と高い芸術性を兼ね備えた工芸美術品である。
材料には、純度の高い黄金が使用されている。ランプの高さは48センチあり、表面には65の文字が刻まれている。デザインは非常に精巧で、侍女がひざまずき、左手でランプの下を支え、右手はカバーと一体化している。全体は、頭、胴体、右腕、ランプの台、受け皿、カバーの六つの部分からなっていて、それぞれを鋳型に流し込んで成型したあと、接合されている。
受け皿には可動性があり、カバーは照らす方向と明るさを自由に調節できるように設計されている。女官の右腕と体は内部でつながっていて、煙が右腕から体内に入り、すすは空洞になっている内部にとどまるため、室内の汚染も抑えられる。
注目に値するのは、侍女の形だ。袖の部分が大きく広がった長衣を身につけ、自然な美しさがあり、顔立ちは清楚で美しい。また、頭を少し前にかしげ、一点を凝視し、少し疲れたように見えるが、とても注意深い様子が伝わってくる。当時の下級の若い侍女の心理的特徴をよく現している作品である。(2003年5月号より)
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