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中原文化の伝播示す 座式銅竜
 
     文=魯忠民 写真=王露


銅製、金代(1115〜1234年) 
高さ19.6センチ


 

 黒竜江省博物館に所蔵されている「座式銅竜」は、腰を下ろし、前足の爪で吉祥の雲をつかみ、威厳に満ちて奇怪な姿をしている。この銅製の竜は、金代に、輿の飾り物として作られた。1965年、黒竜江省阿城市の上京会寧府遺跡から出土した。

 竜は、中国古代の伝説上の不思議な動物である。それは人間が創造し、崇拝する神でもあり、吉祥慶喜の化身でもある。あらゆる動物神の中で、竜はもっとも人々に愛され、多くの動物の長所をその身に集め、理想的な動物神として造られている。

 竜が中国人と中国社会に与えた影響は、非常に深く、また広い。唐・宋代以降の封建帝王は、みな自ら「真竜天子」を任じ、竜は最高の封建的権威の象徴となった。歴代の工芸品の中に、竜の造型、竜の図案が随所に見られる。

 この銅製の竜は、首をもたげ、口を開け、胴体を弓のようにそらし、尾を持ちあげて巻いている。そして右の前足は地を踏み、左の前足は爪で吉祥雲をつかみ、後ろ足を折って地面に座っている。竜の鬚は後方になびき、肩のあたりから巻き起こっている蔓状の煙雲と接し、あたかも雲に乗って飛んでいるように見える。

 飛ぶこと、それは、中国竜の最大の特徴で、他の国の竜と違う所だ。竜は空を飛び、四海に遊び、雲を起こし、雨を降らし、邪を退け、福を降す。これは中国の竜が持っている神通力である。

 この竜の姿形は、中原文化が中国・東北地方に強い影響を与えたことを明らかに示している。と同時に、この竜は、明らかな地方的、民族的特色をも失ってはいない。(2004年7月号より)

 

 
 

黒竜江省博物館

 


 黒竜江省博物館は、総合的な博物館で、黒竜江省の省都、ハルビン市の中心にある。1922年に創設され、50年、ハルビン工業大学の科学研究所となり、54年に「黒竜江省博物館」と命名された。

 博物館はメーンビルとオフィスビル、倉庫ビルの3棟からなり、建築面積は1万6000平方メートルを超えている。博物館の主な建物は1904年に建てられた古典的なロシア式建築で、陳列面積は3000平方メートル、倉庫も3000平方メートル近い。

 この博物館に収蔵されている文物標本は10万7400点以上。その中には国家一級所蔵品55点、一級標本1点が含まれている。収蔵されている岩石、鉱物、土壌、動植物と古生物の化石の標本は全部で7万点以上に達する。歴史文物、少数民族の文物及び絵画などは合わせて3万点を超す。この中には金代の文物とホーチョ族の文物が比較的豊富である。

 博物館の基本的な陳列は、「黒竜江古代歴史文物陳列」「動物陳列」「古動物陳列」の三つである。

 「黒竜江古代歴史文物陳列」の展示面積は450平方メートルで、900点以上の文物を主とし、図表、写真、文献などを付け、黒竜江省の歴史の発展状況を明らかにしている。

 「動物陳列」の展示面積は750平方メートルで、黒竜江省特有の動物の標本に重点を置き、丹頂鶴や東北虎のような世界的に珍しい動物も展示している。

 「古動物陳列」の展示面積は480平方メートル。黒竜江省で発見された恐竜の一種、「ホマロケファロ」(中国名・平頭鴨嘴竜)や古代動物の毛サイ、松花江マンモスの大型骨格化石が重点的に展示されている。(開館:毎日午前の8:30~16:00土、日曜休館)