現存する中国の青銅器は非常に多く、素晴らしいものも少なくない。だが、一目見たら忘れられない珍品となると、指を折って数えられるくらいしかない。保利芸術博物館に収蔵されている逸品である早期西周時代の「神面ユウ」は、そのうちの一つであり、その造型は、青銅器の中で独特のものである。
この青銅製のユウは、三千年前に造られた。ユウの本体と蓋の両面にはすべて、神面が鋳造されている。神面は、頭に二つの角をもち、両眼を大きく見開き、大きく口を開け、二つの犬歯をむき出し、猛々しく、人々の魂をおびえさせる。
ユウの取っ手の上には、尾が一つになっている二匹の竜の装飾がある。ユウの両端には、鼻は象、頭は牛、角は羊という怪獣がついている。
ユウの底辺部分の円形の足には、頭が一つで体が二つの蛇の装飾があり、取っ手の二匹の竜と呼応している。
ユウの装飾はすべて、非常に複雑で、強い芸術的な衝撃力を有している。
1990年代に、このユウは世に出てきた。かつてないその造型と装飾は、多くのコレクターを魅了し、日本のある収蔵家が真っ先に高値でこれを手中に収めた。しかし、思いもかけず、恐るべき情報が国際的な骨董市場に流れた。欧州のある大収蔵家が、このユウは贋作だと述べた、という情報である。これを聞いた日本の収蔵家は、慌てて返品した。
ユウの持ち主は、身の潔白を証明しようと、ユウを英国のオックスフォード大学に送り、鑑定してもらった結果、このユウの製造年代は信用できることが証明された。しかし、贋作説は根強く、依然はっきりしなかった。このため、一時期、だれも危険を冒してまでこのユウを求めようとはしなかった。
1999年8月、保利芸術博物館はこのユウをとり寄せ、中国でもっとも権威のある文物鑑定家たちに鑑定させた。その結果、鑑定家たちは一致して、この青銅器が現代人の空想の産物ではないと認めた。
1999年10月、神面ユウは保利芸術博物館に展示され、大きな反響を引き起こした。これを贋作と断じた欧州の大収蔵家も納得し、このユウは非常に素晴らしいと賞賛した。いったん手中にした宝を失った日本の収蔵家は、おそらく大いに悔やんだことだろう。(2004年8月号より)
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