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奇獣をかたどった三足の容器 陶キ
 
   文=魯忠民 写真=王露


陶製 新石器時代竜山文化
高さ29.2センチ


 

 黄河流域は、中国の新石器時代に陶器が大いに発達した地域の一つである。裴李崗に代表される今から八千年前の新石器時代の早期には、大地湾文化や磁山文化などが存在した。中期は彩陶が発達し、仰韶文化と大肭口文化があった。晩期には馬家窯文化、斉家文化、竜山文化などが興ったが、その中で黄河下流の竜山文化がもっとも卓越している。

 竜山文化は1928年、山東省章丘県の竜山鎮で最初に発見されたため、その名がついた。測定の結果、その年代は紀元前2310年から同1810年の間であることが判明した。

 竜山文化の多くは、泥と砂で作られた灰黒陶と粒子の細かい泥で作られ黒光りする黒陶で、そのほとんどが陶器の表面に紋様がなく、素朴ではあるが渋い趣きがある。中には、簡単な紋様があるものもある。

 陶キは古代の炊事用具の一つである。この陶キは竜山文化の彩陶の代表作で、1960年、山東省イ坊の姚宮荘遺跡から出土した。現在、山東省博物館に収蔵されている。

 この陶キは口が大きく、楕円形をしていて、広い注ぎ口は上に向かって伸び、外側に湾曲している。陶キの腹は扁平で、足は中空で三本あり、二本の前足は長く、太い。後足は短くて細い。これでうまく平衡を保っている。キの首と後足の近くは、縄状の取っ手で結ばれている。首の下部の両側には、耳が左右対称に付いている。背中には三枚の鎧のような紋様があり、その中に乳頭状の飾りが打たれている。

 キの全体の形は、まるで名前のわからない奇獣のようであり、勇壮壮健であり、首をもたげて嘶き、生きているように見える。まさに、彫塑史上の逸品というにふさわしい。(2004年9月号より)

 

 

 
 

山東省博物館
 


 山東省博物館は1954年8月に建設が始まった、新中国で最初の省クラスの総合的な博物館である。1994年5月に新館が正式に一般公開された。

 博物館は風光明媚な千仏山の麓にあり、その敷地面積は3.3ヘクタール、建物の総面積は延べ2万1000平方メートル。そのうち陳列に使われる面積は1万2000平方メートルである。

 山東省博物館に収蔵されている各種の文物や標本は21万点にのぼる。そのうち国宝級の文物は3点、1級文物の所蔵品は1388点で、蔵書は12万冊である。博物館に収蔵されている文物の数では全国で第7位であり、1級文物の所蔵品の数では全国で第4位を占めている。

 収蔵品は歴史文物を主としている。有史以前のものには、いまから40〜50万年前の沂源原人の頭蓋骨と歯の化石がある。

 新石器時代のものでは、大肭口文化と竜山文化の時期の美しい彩陶、白陶、卵殻黒陶がある。

 商(殷)代の甲骨文は5000余点が所蔵され、全国で甲骨文収蔵のもっとも多い博物館の一つに数えられている。また商代の「亜醜銅鉞」や西周の「頌キ」、春秋戦国時代の「公孫壺」などの青銅器は、その形や銘文で注目されている。

 臨沂の銀雀山で出土した『孫子の兵法』『孫ヒンの兵法』などの前漢の竹簡は、20世紀中国の10大考古学発見の中に数えられている。

 明代の魯王、朱檀の墓から出土した1000点近い文物は、唐代の琴や宋代の絵画、真珠や宝石、玉や翡翠がとくに有名である。

 この博物館の常設展示は「斉魯の宝物」「石刻芸術展」「動物標本展」「古生物化石展」などで、この他に毎年、10数回の臨時展示が催される。

開館:火曜〜金曜
午前 8:30〜12:00
午後 2:30〜6:00
土曜、日曜
午前 9:00〜16:00
月曜休館