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憲法改正の過程と論争


 憲法改正についての意見を求める作業は2003年3月から繰り広げられた。中国共産党中央弁公庁は3月以前に専従者を指定して憲法改正の検討に着手するとともに、4月に有名な専門家、学者を招集して憲法改正問題について座談会を開いた。中国共産党中央はこのために第4次憲法改正指導グループを発足させた。

 全人代法律工作委員会などの部門も多くの人を集めて憲法改正の前期準備を進めた。国務院シンクタンクの一つとしての中国社会科学院も関係専門家に憲法改正問題について研究レポートを提出させた。このほか、中国政法大学、中国人民大学などの大学や研究機構も続々と憲法改正問題を検討した。

 2003年6月6日、呉邦国氏はあるハイクラス専門家討論会を主宰して、呉敬l、江平、応松年、許崇徳氏らの経済学者、法学者の憲法改正についての意見を聴取した。

 8月26日と28日、党中央は中南海でまたも党外人士座談会を開いたが、その主な目的は「社会主義市場経済体制整備の若干の問題に関する中国共産党中央の決定(意見を求める原稿)」と「憲法の部分的内容改正に関する中国共産党中央の提案(意見を求める原稿)」に対する民主諸党派中央と全国工商業連合会の指導者と無党派人士の意見と提案を聴取することにあった。

 第16期中央委第3回全体会議のあと、憲法改正活動は全人代に移った。

 意見を求める過程で、参会した専門家は憲法改正の具体的内容に対し論争があったばかりでなく、憲法を改正するかどうか、どの程度改正するかについても論争があった。

 一部の専門家は改正しないことを主張した。その理由は次のようなものであった。憲法は安定を保つべきで、ひんぱんに改正すべきではない。わが国の憲法はひんぱんに改正されており、1982年の憲法が採択されたあとだけでも3回改正された。「これは西側諸国と比べて多い方であるが、わが国は自らの国情があるため、二者は比較のしようがない」と許崇徳氏は語った。

 ほかの一部分の専門家は1975年、1978年、1982年のように、基本的に現行の憲法を否定して制定しなおすような大幅な改正を主張した。現行憲法がすでに社会の実際とかけ離れているため、大幅な改正を行わざるを得ないというのがその理由である。

 最後の一部分は許崇徳氏が主張したような憲法の一部分を改正するという小幅な改正である。理由はこつである。憲法の安定性を配慮しなければならないため、一部分だけ改正すればよい。しかし、改正しないわけにはいかない。というのは、わが国の社会が急速に発展しており、基本法としての憲法の多くのところが社会の現実とかけ離れているため、改正しなければならない。

 改正の内容についても、専門家の間に違った見方がある。私有財産を憲法に書き入れることに対する見方が違っているのがその一例である。一部分の政治協商委員は私有財産を憲法に書き入れることを強くアピールしたが、中国社会科学院の喩権域委員はこの主張に強く反対し、「私有財産は神聖にして侵すべからざるものである」という概念はすでに時代によって淘汰されたが、それは絶対に侵すべからざるものではないと強調し、次のように語った。「日本、イタリア、旧西ドイツ、インドなど十数カ国の憲法を調べてみたが、これら諸国の憲法の財産権に対する規定に共通の特徴が三つある。一は私有財産を保護するが、私有財産は『神聖にして侵すべからざる』ものではない、つまり財産権を絶対化していないことである。二は憲法が私有財産にいろいろの制限を設け、私有財産が公共の利益に従うかまたはそれを損なわないように要求していることである。三は必要な場合、政府が法によって私有財産を有償徴集できることである。」

 他の一部分の代表は合法的財産を保護する角度からそれぞれ提案を行った。中華全国弁護士協会副会長の楊偉程代表は「現段階では、確かにあれこれの問題がある。たとえば資本の国外流出または国外で一回りしてから外資として舞い戻ってくる。このため、私有財産をどう規定するかは、法による保護の前提である」と指摘した。

 中国社会科学院法学研究所研究員の李歩雲教授によれば、中央の確定した「改めてもよく改めなくてもよいものは改めず、改めなければならない重大な問題は改める」というどっちかというと穏当なやり方は非常に正しい。実際に言って、改めるものが多すぎても困るし、いったいどう改めるか意見がなかなか一致しない。一部の問題がかなり長く検討されたにもかかわらず、思想を統一するのは容易ではなく、過程が必要である。

同教授はこう語った。中国では、政権党は大会を開くたびに、一般には憲法を改正する。これに違った見方をもつ人がいる。私は二点考慮する必要があると思う。一つは中国に自国の特色があり、民主に過程があることである。もう一つは西側の政党も自らの綱領を憲法に書き入れることがあり、このようなやり方は一種の通例となっていることである。問題は法律とくに憲法を改正する時、民主立法の原則を貫徹することである。憲法改正は時代とともに前進を体現している。

 中国人民大学憲法学教授の許崇徳氏は、憲法の再改正は憲法をいっそう現実に近づかせ、時代とともに前進させるとし、中国共産党第16回全国代表大会の最大な議題は「いくらかゆとりのある社会を全面的に建設し、中国の特色ある社会主義事業の新しい局面を切り開く」ことであり、今回の改正は第16回全国代表大会の提出した理論イノベーション、戦略的な根本的方針・政策を憲法の中に表すことであると語り、今回の改正は一部分の内容に対する改正であり、憲法の全般的な枠組みと基本的内容は変わらない。今回の改正は憲法を情勢の発展にも適応させれば、憲法の安定性も保持するものであると指摘した。

 全人代常務委委員、全人代法律委主任委員、法律専門家の楊景宇氏はこう見る。憲法は国家の根本法であり、憲法の安定を守ることは国家の根本制度の安定を守り、国家の長期の安定を守ることである。憲法の安定は国家安定の基礎である。そのため、憲法改正も格別に厳粛、慎重に行い、他の法律と異なる特別な手続きに基づいて行う必要がある。憲法は「憲法の改正は、全国人民代表大会常務委員会または五分の一以上の全国人民代表大会代表が提議し、全国人民代表大会が全代表の三分の二以上の多数で可決する」と規定している。憲法改正はどのような原則にのっとるか。1987年の党の第13回大会以後、党中央と全人代常務委の指導者は現行憲法の最初の改正を検討した時、二つの原則を確定した。一は改革が法律に従い、法律が改革に奉仕しなければならないことであり、二は憲法改正は改正しなければ改革を妨げる条項だけを改正し、改めてもよく改めなくてもよいものは改めず、一部の問題は憲法解釈の方法で解決することである。こうすれば、憲法の安定に役立ち、国家の安定に役立つ。

 楊景宇氏の説明によれば、その後の憲法の一部分改正はいずれも同じ原則にのっとり、いずれも改正案の方式を採用した。三つの憲法改正案は全部で17カ所改正したが、そのうちの15カ所は憲法の序言と総綱に集中し、主な内容は次の九つである。一は国家政治と社会生活におけるケ小平理論の指導的地位を確立したこと、二は中国が長期にわたり社会主義初級段階に置かれると明確にしたこと、三は改革・開放の基本的方針を肯定して、憲法にある社会主義初級段階における党の基本路線の表現をいっそう完全にしたこと、四は中国の社会主義初級段階の基本的経済制度(公有制を主体とし、多種所有制経済がともに発展する)と分配制度(労働に基づく分配を主とし、多種の分配制度が共存する)を整備したこと、五は農村経済組織の家庭請負経営を基礎とし、統一と分散を結合する二重経営体制の実行を確定したこと、六は非公有制経済の法的地位を確定したこと、七はわが国における社会主義市場経済実行を確定したこと、八は法による国家管理と社会主義法治国建設の基本的方略を確定したこと、九は中国共産党の指導する多党合作と政治協商制度の長期共存と発展を確定したことである。

 憲法の行ったこれらの重要な改正は、いずれも国家の発展と長期安定にかかわる重大な問題であり、わが国の社会主義政治制度と社会主義経済制度の自己整備と発展も反映していれば、社会主義とはなにか、社会主義をどう建設するかという根本問題に対する全党と全国人民の認識の深化も反映しており、これによって憲法をいっそう完全なものになり、改革・開放と社会主義現代化建設の発展の要求にいっそう適応し、時代の特徴を体現し、国情に合致し、時代とともに前進する憲法にし、そのために憲法の安定に影響するようなことがなく、憲法の権威と尊厳を損なうようなこともなかった。2002年11月に開かれた党の第16回大会は、新しい世紀と新しい段階にわが党とわが国が直面する新しい情勢と任務を全面的に分析し、今世紀最初の20年の奮闘目標と重大な方針政策をはっきりと打ち出した。そのため、憲法の部分的内容改正の提案を行うのは、非常に時宜にかなっており、非常に必要であり、全党と全国人民の共同の願いを反映し、重大かつ深遠な意義がある。

                 「北京週報」 2004年2月26日