温家宝国務院総理が3月5日、第十期全国人民代表大会第二回会議開幕式で「政府活動報告」を行った。
以下その「政府活動報告」の一部である。
一、 過去一年間の活動の回顧
過去の一年は、わが国の発展過程において重要で尋常ならぬ一年であり、改革開放と社会主義現代化建設が著しい成果を収めた一年であった。複雑で変幻きまわりない国際情勢や突如襲来した新型肺炎(SARS)の疫病及び頻繁に発生する自然災害に直面して、中国共産党の指導の下、各クラス政府は全国各民族人民とともに、トウ小平理論と「三つの代表」という重要な思想を導きとし、党の十六回大会の精神を貫徹、実行して困難に立ち向かい、粘り強く戦い、新しい局面を切り開くことに努め、小康(ややゆとりのあるという意味)社会の全面的な建設を進める途上で重要な一歩を踏み出した。
新型肺炎とたたかう中で重要な勝利を収めた。
経済は急速な発展をとげた。国内総生産(GDP)は前年度より9.1%伸び、11兆6700億元に達し、現時点の為替レートで計算すると、一人あたりの国内総生産は1000ドルを突破し、重要な大台に上った。
国の経済力は目に見えて増強された。国全体の歳入は2兆1700億元になり、前年度より2787億元増加した。
対外貿易は大幅に伸びた。輸出入総額は前年度より37.1%伸びて、8512億ドルになり、昨年の世界第五位から第四位に上昇した。
就業は所期の目標を上回った。都市部就業者の新規増加数は859万人となり、一時帰休者や失業者の中の再就職者は440万人に達した。
住民の所得が増えた。都市部住民の一人あたりの可処分所得は実質九%の伸び、農民の一人あたりの純収入は実質4.3%伸びとなった。
初めての有人宇宙飛行が円満に成功した。
ここ一年来、われわれは主としてつぎの六つの方面の仕事をした。
(一)思い切った措置を取り、新型肺炎の対策・措置に力を集中した。
(二)適時かつ適度にコントロールし、穏当かつ急テンポな経済発展を促した。
(三)統一的に企画し、各方面に配慮することを重要視し、社会事業の発展を加速させた。
(四)大衆の生活に関心を示し、就業と社会保障の仕事を立派に行なった。
(五)体制の創造・革新が推進され、改革開放は重要な一歩を踏み出した。
(六)法秩序整備の強化をはかり、社会の安定を守った。
二、2004年度の主要な任務
(一)マクロ規制を強化、改善し、安定した比較的速い経済の発展を維持する
今年度の経済活動の基本的な着眼点は、発展を加速させる各方面の積極性を着実に保護し、合理的に導き、十分に発揮させ、経済の安定した比較的速い発展を実現し、経済に大きな起伏が生じることを防ぐことである。今年度の経済成長の目標を七%前後に定めるにあたって、中央はマクロ規制の目標の継続性を配慮するとともに、また資源と環境に対するプレッシャーを軽減するために経済成長の速度とエネルギー資源、重要な原材料、交通運輸など実際条件とのつながりをも考慮に入れた。
(二)農業の基礎としての地位を打ち固め、強化し、農民の収入増と食糧の増産を実現する。
農業、農村と農民の問題を解決することは、われわれのすべての仕事における最も重要な課題である。当面わが国の農業の発展はまたカギとなる時期に置かれている。今年は、都市農村の発展を統一的に企画するという要請に基づき、さらに直接かつより強力な政策や措置を講じて、農業を強化し、バックアップするとともにそれを保護し、農民の収入増に努めなければならない。
一、食糧の総合的生産能力を保護し、向上させる。最も厳格な耕地保護制度を実行し、法に依拠して耕地への管理を強化し、耕地をむやみやたらに占用し、使用することを断固として制止し、基本的な農地を勝手に他の用途に切り換える現象を是正する。
二、農業や農村経済構造の戦略的調整を推し進める。良質、高収量、高効率の、環境に優しい安全な農業の発展に力を入れ、農産物の品質や競争力を高める。
三、引き続き農村における租税・費用の改革を推し進める。タバコ以外の農業特産物税を撤廃し、毎年四八億元の農民負担の軽減を図る。今年度から農業税の税率を次第に引き下げ、年毎に平均一ポイント以上下げる。五年以内に農業税を撤廃する。
四、食糧流通体制の改革を深める。食糧買付販売市場を全面的に開放し、国有食糧企業の改革を急ぎ、食糧市場に対する管理と規制を強化し、食糧作付農家に対して直接補助を与える。
五、農業と農村への投入の度合いを大きくする。各クラス政府はいずれも「農業、農村、農民」に対する資金投下を増やさなければならない。
六、農業科学技術の進歩を速める。農業分野における科学研究の難関突破を強化し、農業科学技術の創造・革新、備蓄と転化能力を向上させる。
(三)地域のバランスの取れた発展を統一的に企画し、西部大開発と東北地区などの旧工業基地の振興を推し進める。
(四)引き続き科学・教育による国家振興の戦略を実施し、持続可能な発展の道を歩むことを堅持する。
(五)医療衛生、文化、スポーツなどの事業の発展を速め、精神文明の建設を強化する。
医療衛生事業を発展させ、今年度は重点的に以下の三つの仕事に力を入れる。
一、公共衛生システムの整備を強化する。三年間をかけて都市農村をカバーする、機能が完備した疾病の予防・抑制と医療救急・治療システムを基本的に構築し、ひどい伝染病等の突発公共衛生事件への対処力を高める。
二、農村における医療衛生の条件を改善し、新しいタイプの合作医療制度のテスト作業を立派に行う。
三、積極的に都市部での医療衛生体制の改革を推し進める。都市部における職員・労働者の基本医療保険制度、医療衛生と薬品生産・流通体制の改革を続ける。
(六)有利な時期をとらえて、経済体制の改革を深化させる
今年は、党の第十六期三中全会の決定で取り決められた配置に従い、重点的かつ段取りを追って改革を推し進め、いくつかの重要な分野で新しい進展を得るよう努力する必要がある。
国有資産管理体制の改革と国有企業の改革を深化させる。
非公有制経済の発展に大きな力を入れ、積極的にそれを導く。
金融体制の改革を推進する。
財政・租税体制の改革を推し進める。
投資体制の改革を推進する。
社会信用システムの構築を速める。
(七)新しい情勢に順応し、対外開放のレベルを高める。
われわれは必ず国内の発展と対外開放を統一的に企画し、国内及び国外の二つの市場、二種類の資源を利用し、発展の空間を広げ、積極的かつ主体的に対外開放関係の諸活動に取り組み、国際協力への参加と競争の能力を増強しなければならない。
対外貿易の適度な成長を維持するよう努める。
(八)就業と社会保障の仕事に大いに力を入れ、人民の生活をさらに改善する。
あらゆる方策を講じて就業機会を増やすことは政府の重要な職責である。今年の予期目標は都市部の就業人数を九〇〇万人新規増加させ、一時帰休者・失業者500万人を再就業させる。
わが国の国情に適合し、経済発展レベルにふさわしい社会保障システムを確立することは、重要かつ困難な課題である。引き続き「二つの確保」の仕事を行ない、「三本の保障ライン」のドッキングを立派に行なわなければならない。
都市農村の特別困窮者に対して、より一層関心を寄せなければならない。引き続き社会救済制度を健全化させる。
都市部の家屋立退きと農村の土地収用にみられる問題の解決を急ぐ。
農民就労者の給与を期日どおり全額支給することを確実に保障しなければならない。
(九)民主法制建設を強化し、国の安全と社会の安定を維持する
政治体制の改革を積極的かつ着実に推し進め、社会主義の民主を発展させ、社会主義の法制を健全化させる。末端における民主をさらに拡大し、村民の自治と都市住民の自治を充実させ、末端と大衆の民主的権利を尊重する。従業員代表大会とその他の形態の企業・事業体の民主管理制度を堅持し、充実させ、従業員の合法的権益を保障する。
引き続き民族、宗教、華僑事務の仕事を立派に行う。党の民族政策を全面的に貫徹し、平等、団結、互助の社会主義の民族関係を強固にし、発展させる。
政府の立法の仕事を強化する。社会諸方面の管理と公共サービス面における立法をさらに重視しなければならない。
人民大衆の安定した生活・生産を保障することは、政府が当然担うべき責任である。
国および人民に対する高い責任意識をもって安全関係の仕事を確実に強化しなければならない。
国防と軍隊の現代化建設を強化することは、国の安全を守り、小康社会を全面的に建設する上での重要な保障となる。
三、政府部門みずからの建設を強化する
小康社会の全面的建設に向けての過程において、政府は重くて困難な課題を抱えている。各クラスの政府と指導幹部が新しい情勢と新しい課題に適応し、絶えず行政能力と管理レベルを高めなければならない。
新年度においてわれわれは次のいくつかの面に力を入れなければならない。
一、政府機能の転換を推進する。各クラス政府は職責を全面的に履行しなければならず、引き続き経済の調節に立派に取り組み、市場の監督・管理を強化すると同時に、いっそう社会管理と公共サービスの機能を重視する。特にさまざまな突発事件への対処メカニズムの確立と健全化を速め、政府の公共の危機への対処能力を高めなければならない。
二、科学的かつ民主的な政策決定を堅持する。よりいっそう大衆の参与、専門家によるフィジビリティ・スタディと政府の政策決定を結びつけた政策決定メカニズムを充実させ、政策決定の科学性と正確性を保証しなければならない。
三、法による行政を全面的に推進する。各クラス政府はみな法定の権限と手続に基づいて権限を行使し、職責を果たさなければならない。
四、人民の監督を自覚をもって受け入れる。政府の権力はすべて人民によって与えられたものであり、人民に対して責任を負い、人民のために利益を図り、人民の監督を受けなければならない。
五、政府部門の作風づくりと公務員陣の充実化を強める。真実を追求し、実際を重んじる精神を発揚し、科学的な発展観と正しい治績観を確立すること、これは政府部門の作風づくりの重要な内容である。
四、香港、マカオと台湾問題について
香港、澳門の長期的安定と繁栄発展を維持することは、われわれの確固不動の目標である。
われわれは「一国二制度」、「香港人による香港統治」、「澳門人による澳門統治」、高度の自治という方針を堅持し、香港特別行政区、澳門特別行政区の基本法に厳格にのっとって事を運び、全力をあげて香港、澳門の二つの特別行政区行政長官と政府が基本法に基づいて行政に取り組むことをバックアップする。われわれは香港、澳門の前途に対し自信に満ちている。
われわれは「平和的統一、一国二制度」の基本方針および現段階における海峡両岸関係を発展させ、祖国の平和的統一を推し進める八項目の主張を堅持する。われわれは積極的に両岸の人的往来や経済、文化の交流を推し進め、両岸間の直接「三通(通信、通航、通商)」の実現を促進させ、法に基づいて台湾同胞の大陸部における正当な権益を保護し、引き続き一つの中国の原則を踏まえて海峡両岸の間の対話と交渉の回復をはかる。われわれは最大の誠意を持って、最大の努力を払って、祖国の平和的統一を実現するものである。「台湾独立」をもくろむいかなる形の分裂活動にも断固反対し、台湾を中国から切り離そうとするいかなる者、いかなる方式も絶対に許さない。
五、国際問題について
当面、国際情勢は引き続き複雑かつ深刻な変化が生じつつある。平和と発展は依然としてこの時代の主なテーマである。世界の多極化と経済のグローバル化は曲折しながらも発展をとげており、平和と発展を目指し、協力と進歩を促進することは阻むことのできない歴史の流れである。しかし、一国単独主義の傾向には新たな発展が見られ、局地的衝突は絶えることなく、国際テロリズムの活動が頻繁に発生し、南北の格差はさらに大きくなり、新旧の安全問題がからまり合っており、各国人民は厳しいチャレンジに直面している。
新しい年において、われわれは引き続き平和、発展、協力の旗印を高く掲げ、われわれはゆるぐことなく独立自主の平和外交政策を実行する。平和共存五原則を堅持し、各国との友好交流と協力を推し進め、より望ましい国際環境と周辺環境をつくり出すよう努めなければならない。
われわれは世界の多極化を促進することを堅持しなければならず、国際関係の民主化と発展方式の多様化を提唱し、経済のグローバル化によって世界各国がともに繁栄にむかう方向へと発展するよう促進する。相互信頼、互恵、平等と協力という新たな安全意識を堅持し、覇権主義と強権政治に反対し、いかなる形のテロリズムにも反対し、ひきつづき公正で合理的な国際政治・経済の新秩序の構築を推し進める。
われわれは発展途上諸国との友好協力を強化し、協力の新しいルート、新しい形式を模索し、広範な発展途上諸国が相互に連携し合って自ら向上を求めることを支持する。
われわれは善意をもって隣国に対処し、隣国を仲間と見なす方針を堅持し、周辺諸国との善隣友好協力を強化し、地域の平和と安定を維持する。
われわれは先進諸国との関係をたえず強化しなければならない。共通の利益を目ざす合意点を求め、それをさらに広げることに努め、平等な話合いと協議を通じて、存在している食い違いを一歩一歩と解決し、相互関係の安定した発展を促す。
われわれは積極的に多国間の外交関係を進展させ、国連とその他の国際及び地域組織において建設的な役割を果たさなければならない。
中国政府と中国人民は終始一貫して人類の正義の事業の側に立って、各国人民と共に世界平和を守り、ともに発展することをめざしてたゆむことなく奮闘するであろう。
CRI 2004年3月7日
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