温家宝総理の政府活動報告(1)

代表のみなさん

ここに国務院を代表して、大会に政府活動報告を行い、審議を求めるとともに、全国政治協商会議の委員のみなさんからもご意見を求めたいと思う。

一、過去一年の活動の回顧

二〇〇五年、わが国の社会主義現代化の事業は著しい成果をあげた。

――経済は安定し、より速いスピードで発展した。年間国内総生産(GDP)は一八兆二三〇〇億元に達し、前年度より九・九%伸びた。歳入は三兆元の大台を突破し、五二三二億元増加した。住民消費者物価総水準は一・八%上昇した。国民経済はより急速な成長をとげ、そのパフォーマンスもかなりよく、価格も比較的安定しているという望ましい状況が見られた。

――改革開放は重要な一歩を踏み出した。幾つかの重点分野と肝心な部分における改革には新たな突破が見られる。輸出入貿易総額は一兆四二〇〇億ドルに上り、二三・二%伸びた。実質利用外商直接投資は六〇三億ドルであった。年末時点での国の外貨準備高は八一八九億ドルとなった。

――社会諸事業には新たな進歩が見られた。科学技術、教育、文化、医療衛生、スポーツなどの諸事業は全面的な発展をとげた。「神舟六号」の有人宇宙飛行が完全に成功したことは、わが国が幾つかの重要な科学技術分野で世界の先進レベルに達したことを示すものである。

――人びとの生活は一段と改善された。都市部の新規就業者数は九七〇万人となり、都市部住民の一人当たり可処分所得は一万四九三元に達し、農民の一人当たりの純収入は三二五五元となり、価格要因を差し引くとそれぞれ九・六%、六・二%伸びた。

わが国は小康(ややゆとりのある)社会を全面的に建設する上で着実な一歩を踏み出した。
ここ一年来、われわれは科学的発展観で経済・社会の発展の全局を統括し、主として次のいくつかの面の仕事に取り組んだ。

(一)経済運営における際立った問題の解決に着実に力を入れている。マクロコントロールを引き続き上手に行ない、実情に応じて区別して取り扱い、確保もすれば規制もするという原則を堅持し、財政・税制、通貨、土地などの政策手段を総合に運用し、固定資産投資が膨れ上がることを規制し、不動産投資の過度の増大と価格高騰の勢いを抑制している。農業、エネルギー資源、交通、社会諸事業などの弱い分野への投資をさらに増やし、調和のとれた発展を促し、発展の底力を強化した。経済運営に対する調節を強化し、引き続き石炭・電力・石油・輸送能力の逼迫状況を緩和させ、安定したより速い経済成長を確保した。

(二)経済構造の調整と成長パターンの転換を積極的に推し進めた。われわれは引き続き「三農」(農業、農村、農民)の仕事に力を入れた。二八の省(自治区、直轄市)では農業税をすべて免除し、全国において牧畜業税を撤廃した。穀物作付け農民に対する補助金や食糧主要生産県及び財政難の県への移転支出を増やし、一部の食糧主要生産地区の重要食糧品種に対し最低買付価格政策を実施し、多くのルートを通じて農民の収入増をはかった。年間を通じて中央財政と「三農」への投入は二九七五億元に達し、前年度より三四九億元増となった。食糧総生産高は昨年度の大幅な伸びを踏まえてさらに一四五四五万トン増え、四億八四〇一〇万トンに達した。農業の総合生産能力は強化され、食糧の安定した増産と農民の持続的な収入増は安定したより速い経済発展と社会の安定の土台を打ち固めた。

産業構造の調整においてエネルギー資源、重要な原材料とプラント製造業などの業種の発展計画と産業政策を作成、実施し、流通業の発展を促す政策措置を打ち出し、重点業種の健全な発展を導き、サポートした。エネルギー消費が大きく、汚染もひどくて安全生産条件に適合しない一部の立ち遅れた生産能力を淘汰した。

経済成長パターンの転換を促すために省エネ・省資源と環境保護に優先的に取り組んだ。節約型社会を構築し、循環経済を拡大させる任務と関連政策措置を提出し、一七八項目の省エネ、節水や資源の総合利用などの重要プロジェクトを始動させた。鉱物資源の開発、土地の利用や都市農村計画の管理を強化した。昨年、国債資金を一五二億元投下し、主として淮河、太湖などの重点流域の汚染対策と天然林保護、耕地の元の林地・草地への回復、砂漠化対策などの重点生態プロジェクトに使用した。環境保全特別対策を突っ込んで繰り広げ、人びとの健康に危害を及ぼす一部の環境問題を解決した。

(三)体制改革を深化させ、対外開放を推し進めた。農村の総合改革のテストを引き続き推進している。国有商業銀行の株式制改革と農村信用協同組合の改革に重要な進展が見られ、上場会社の非流通株改革(非流通株主と流通株主間の権益のアンバランスの是正)は着実に推進され、人民元為替レート形成メカニズムの改革が円滑に実施されている。国有企業における現代企業制度づくりの歩みが加速された。中央財政は二一九億元を計上し、一一六社の国有企業の政策的閉鎖・破産をバックアップし、企業から社会事業経営の機能を分離する仕事を引き続き行なっている。財政・税制、投資、価格改革は引き続き深化されている。郵政体制の改革もスタートを切った。鉄道、民間航空の体制改革が新たな進展を遂げた。非公有制経済の発展を奨励し、サポートし、先導する政策措置を制定、実施している。一部の重点分野と肝心な部分における改革は突破的な進展を遂げた。

われわれは対外開放に現れた新たな状況、新たな問題に積極的に対応した。輸出における租税還付、関税と加工貿易の政策を調整し、対外貿易の構造を最適化した。輸出税の還付メカニズムを充実させた。サービス業の対外開放を穏当に推し進めている。WTO加盟の移行期後期における諸般の活動について全面的に配置を行なった。

(四)社会諸事業の発展を加速させている。二〇〇五年度の中央財政が科学技術、教育、医療衛生、文化などの面に用いた支出は一一六八億元で、前年度より一八・三%増となり、国債建設資金を九五億四〇〇〇万元投入した。

科学技術において国の創造革新体系、基礎研究やインフラ建設を強化した。集積回路(IC)チップの設計・開発、第三世代(3G)移動通信、高性能複合材料、高性能NC工作機械の開発・製造などの重要な科学技術特別プロジェクトには大きな進展が見られた。国務院の指導の下に、各方面に働きかけ、二年以上も深く検討を続け、広く論証した上で、『国家中長期科学・技術発展計画要綱』が作成された。

教育において義務教育、特に農村の義務教育を重点的に強化した。中央と地方の財政は特別資金七〇億元余りを計上して、五九二の貧困扶助重点県における一七〇〇万人の貧困家庭の生徒に対し学費・雑費や教科書代を免除し、寄宿生に生活補助金を与え、中西部地区の一七〇〇万余人の貧困家庭の生徒に教科書を無料で提供し、数多くの学校を中退した生徒が復学している。西部地区における「二つの基本」(九年制義務教育の基本的な普及と青・壮年非識字者をほぼ一掃すること)のブレークスルー・プランを引き続き実施した。ここ二年来農村における寄宿舎制の学校二四〇〇余校を新築、改築・拡充し、一六万の小中学校及び教学拠点に遠隔教育施設を配備した。職業教育は一層強化された。高等教育は発展しつづけている。

医療衛生において、公共衛生体系の整備と農村の医療衛生の仕事を確実に強化した。ここ三年、中央と地方は一〇五億元を投下し、省・市・県の三クラスをカバーする疾病予防・抑制システムを基本的に築き上げ、投資総額一六四億元にのぼる突発性公共衛生事件医療・救助体系の整備が首尾よく行なわれている。中央は国債資金三〇億元を捻出し、中西部の郷鎮衛生院の整備をサポートし、農村部の医療衛生条件を改善した。新しいタイプの農村合作医療制度のテスト作業がすでに六七一県まで繰り広げられており、一億七七〇〇万人の農民にメリットをもたらした。エイズ等の難病予防・治療対策を強化した。高病原性鳥インフルエンザ予防対策を高度に重視し、その感染・拡大と人間への感染を確実に抑制している。人口と計画出産の事業は新たな進展を遂げた。

文化の面において、文化体制の改革テストを積極的に行い、公共文化関連のインフラ整備を一段と強化し、文化情報リソース共有プロジェクトが順調に実施されている。対外文化交流がますます活発になった。スポーツ事業も新しい成果をあげた。社会主義精神文明の建設は強化されている。

(五)就業と社会保障の仕事を立派に進めることに努めている。就業と再就業に対しては、政策面のサポートと資金面の投入を強化した。昨年、国有企業の一時帰休者向けの基本生活保障特別補助金、再就業補助に振り向けた中央財政の支出は二〇九億元に上り、前年度比二九億元増となった。都市部の新規増加労働力や大卒者、退役・除隊軍人などの就業の仕事を総合的に配慮しながら順調に遂行した。中央財政は特別資金を計上し、農村労働力の移転や養成・訓練、都市部出身の除隊兵士が自力で就職活動をすることをサポートした。

社会保障システムは絶えず改善し、そのカバーするエリアはいっそう拡大した。国有企業の一時帰休者を対象とする基本生活保障を失業保険と一本化させる作業は、一七の省(自治区、直轄市)ですでに完了し、都市最低生活保障の対象者については、保障を給付すべきものには殆ど保障が与えられた。重点優遇扶助対象者向けの扶助手当基準は著しく引き上げられ、中央財政は優遇扶助事業費として七四億六〇〇〇万元を計上し、前年度比九〇%増となった。二八の省(自治区、直轄市)、二三〇〇の県(市)では、社会救助システムの基本的な枠組みがほぼ構築された。災害救援と貧困扶助の取り組みに力を入れ、通年で災害対策や災害救援に振り向けた中央財政の資金は八九億元、救援を受けた被災者数は延べ九〇〇〇万余人となった。中央と地方の財政は貧困扶助資金を一六二億元計上し、農村の貧困人口は前年より二四五万人減少した。

(六)民主法制の建設は確実に強化されている。末端における民主政治の建設が引き続き推し進められ、村委員会の入れ替え選挙が二一の省(自治区、直轄市)で完遂された。政務の公開、企業や村の事務の公開が絶えず推し広められている。政府部門は政策の決定にあたって科学化と民主化を強め、大衆の利益に関わる重要事項については、公示や公聴などの制度を実施した。政府の法制整備も重視されている。国務院は労働契約法、女性権益保障法、個人所得税法修正案(草案)など七つの法律議案を上程し、『重大動物疫病応急条例』、『炭鉱生産安全事故の予防に関する特別規定』など二二の行政法規を制定した。また、『国家突発性公共事件への全般的な応急対策案』及び個別対策案も制定、実施され、突発性事件への対応能力は日増しに増強している。会計検査、監察・監督の仕事がいっそう強化された。『中華人民共和国公務員法』の実行に向けて準備作業を真剣に進めた。新たな『民衆の投書・陳情条例』が実施され、これにより投書・陳情のルートが円滑に機能し、投書・陳情の秩序が整うようになった。司法体制の改革は着実に推進されている。公民の合法的な権益を守るため、法執行の規範化や公正な法執行の促進などをむねとした特定分野の整頓・改善活動がいっそう展開されている。引き続き社会治安の総合対策を強化し、法に則って様々な違法犯罪を取り締まった結果、刑事案件の発生数はいくらか減り、社会の安定が保たれるようになった。

民族、宗教、華僑事務や台湾とかかわりのある仕事がさらに強化された。国防と軍隊の現代化建設に新たな進展がみられた。外交活動では著しい成果をあげた。

この一年に収められた成果は、胡錦涛同志を総書記とする党中央が全局を統轄し、正しく指導を行ったたまものであり、広範な幹部・人民大衆が一丸となって奮闘し、勤勉に努力した結果である。わたくしは国務院を代表して、全国各民族人民、諸民主党派、各人民団体および各界の人びとに、心から感謝の意を表すものである。香港特別行政区の同胞、澳門特別行政区の同胞および台湾同胞、並びに広範な在外華僑同胞に、心から感謝の意を表すものである。また中国の現代化建設に関心を示し、後押ししてくれている各国の友人の皆さんに、心から感謝の意を表すものである。

われわれはこれらの成績を見て取ると同時に、経済・社会生活面においてなお少なからぬ問題と困難が存在していることも冷静に認識している。一部の長期にわたって積重なった矛盾と根深い矛盾はいまだ抜本的に解決されていないし、無視できない新たな問題がまたもやいくつか浮上してきた。それはすなわち、(一)食糧の増産と農民の収入増がさらに厳しいものとなること。当面、食糧価格の低下と農業生産財の高騰によるプレッシャーがかなり大きくなっており、農民の収入増や穀物作付けの意欲に影響を及ぼしている。耕地面積がたえず減少しており、農業の総合生産能力が強くなく、食糧の安全を脅かす潜在的不安要因がなお存在している。(二)固定資産投資の伸び率が依然として高すぎること。一部の業種では、投資の伸びがあまりにも速すぎ、かなり膨大な数の新規着工プロジェクトを抱えており、投資構造も合理的ではなく、投資の再過熱のプレッシャーもかなり大きい。(三)過度な投資を行ってきた一部の業種では、それによる悪影響が顕在化していること。生産能力過剰の問題が日増しに際立ってきており、関連の製品価格が下落する一方で在庫が増え、企業の利益が減少、赤字が増大して、金融面の潜在的なリスクが大きくなった。(四)大衆の身近な利益に関わる多くの問題が今なお上手に解決されていないこと。医療難や高額の医療費、就学難や高額の学費などの問題が際立っており、これに対する大衆の苦情がかなり募っている。そのほか、土地収用、家屋立退き、三峡ダム地区住民の移転、企業の体制改革、環境保護汚染などの面においても、法規と政策に背き、大衆の利益を損う現象が一部に存在している。(五)安全生産は厳しい状況にあること。炭鉱、交通などでは、重大または特別重大な事故が頻繁に発生しており、人びとの生命や財産にゆゆしい損害をもたらしている。

われわれは、各クラスの政府の仕事の中で少なからぬ欠点や不備な点があることを見てとっている。政府の機能転換が立ち遅れ、一部の仕事が不徹底で、行政の効率が高くなく、形式主義、うわべを飾り立てることに汲々とするなどの現象がやはり目立っているし、一部の政府公務員は虚偽や欺瞞、ぜいたく三昧、浪費、ひいては汚職腐敗に手を染めている。

われわれは使命感と緊迫感をよりいっそう強め、成果を発揚し、仕事の改善をはかり、闘志を燃やし、発奮して向上をめざす精神を保ち、より堅実な作風で、政府の諸活動をより立派に行うよう努力しなければならず、決して人民と国の心からの期待に背かないようにしなければならない。


 
 

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