温総理の政府活動報告(6)

中国の温家宝総理は5日第10期全国人民代表大会第5回会議で政府活動報告を行った際、2007年の政府活動の基本的な構想と任務を次のように提出した。

ケ小平理論と「三つの代表」の重要思想を指針とし、科学的発展観を全面的に実行に移し、社会主義調和社会を早急に構築するとともに、中国共産党の第十六回全国代表大会以来の諸般の方針政策を真剣に貫徹し、マクロコントロールを強化、改善し、経済構造の調整と成長パターンの転換や、資源節約と環境保護の強化、改革開放と自主的創造革新の推進、社会発展の促進と民生問題の解決に力点を置き、社会主義の経済建設、政治建設、文化建設および社会建設を全面的に推進し、党の第十七回全国代表大会の開催のために良好な環境と条件を造り出さなければならない。

さまざまな要因を総合的に勘案して、今年度の国民経済と社会発展の主要な目標を次のように定める。構造の最適化やパフォーマンスの向上、消費低減、環境保護を図った上で、GDPの成長率を八%前後とする。都市部就業者の新規増加数は少なくとも九〇〇万人とし、都市部の登録失業率を四・六%以内に抑える。物価の総水準を基本的に安定させ、消費者物価総水準の伸び幅を三%以内に抑制する。国際収支のアンバランスの状況をいくらか改善する、ということである。

今年度のGDP成長率を八%前後と設定したのは、要請や可能性など多くの要因を総合的に考慮した結果であるが、さらにより重要な点として、各方面が科学的発展観を真剣に定着させ、活動の重点を構造の最適化や、パフォーマンスの向上、省エネ・原材料消費と汚染物質排出の削減に置き、一方的に経済成長率を追求したり盲目的に競い合ったりすることを避け、経済の良質かつ急速な発展を実現するよう導かなければならないからである。

本年度の経済社会発展の目標と任務を達成するには、次のような政策と原則をしっかり踏まえなければならない。一、諸政策の安定化、充実化、徹底化を図ること。安定化とは、マクロ経済政策の継続性と安定性を保ち、引き続き穏健な財政政策と通貨政策を実施することである。充実化とは、経済運営過程における新しい情況に応じて速やかに政策・措置を充実させ、際立った矛盾や問題に的を絞ってその解決を図ることである。徹底化とは、中央の諸般の政策・措置を真剣に実施し、執行の度合いをより大きくして、諸般の政策決定と計画が真に具現化されるのを確保することである。二、マクロコントロールを強化、改善すること。重点として、固定資産投資と融資規模を抑制し、構造の最適化の中で経済総量のバランスを促進する。引き続き確保もすれば規制もすることを堅持し、画一的なやり方を取らないようにする。多くの場合、経済のレバレッジや法的手段の運用により経済行動を誘導し、規範化させるべきである。中央と地方の関係を正しく処理し、双方の積極性を十分に発揮させる。三、経済成長の質とパフォーマンスを大いに高めること。省エネ・省資源や環境保護、土地の集約利用をさらに重点に位置付け、製品の品質向上を重視し、経済の競争力と持続可能な発展能力を増強させる。四、社会の発展と民生の改善をより一層重視すること。人間本位の主旨を堅持し、社会諸事業の急速な発展を促し、人民大衆が最も関心をもち、彼らに最も直結した、最も現実的な利益にかかわる問題を積極的に解決し、社会の公平と正義を守り、すべての人が改革・発展の成果を共に享受しうるようにしなければならない。五、改革開放を原動力として諸般の活動を推し進めること。社会主義市場経済改革の方向付けを堅持し、経済社会発展の要請に応えて、経済体制や政治体制、文化体制、社会体制の改革を推進し、科学的発展観の定着化および調和社会づくりにつながる体制的保障を早急に構築する。全面的に対外開放のレベルを高めなければならない。

温家宝総理は、今年度の経済発展に向ける重点方面を次のようにまとめた。

引き続き穏健な財政政策を実施する。第一に、財政赤字と長期建設国債の規模を適度に縮小する。本年度中央財政の赤字を2450億元計上する予定で、前年度予算の赤字額より500億元減となる。長期建設国債の発行額を500億元とし、前年度より100億元減少させるとともに、中央予算枠内の経常的建設投資を804億元計上し、前年度予算より250億元増やすこととする。これにより中央政府の建設投資の総規模は1304億元となる。第二に、政府の予算支出と政府の投資においては、構造の最適化や対象の重点化を図るべきである。

政府投資の運用に当たって、「三つの面で上回ること」、即ち、農村の生産・生活条件の改善に直結する投入、基礎教育や公共医療衛生などの社会諸事業に振り向ける投入、および西部大開発に当てる投入はいずれも、それぞれの前年度の投入額を上回るようにすべきである。それと同時に、省エネ・環境保護および自主的創造革新を大いに支援する。第三に、中央財政の超過収入分を合理的に配分、運用する。ここ数年、経済の実質成長率が所期目標を上回ったほか、収入増を狙う政策的要因も一部働いたため、中央財政の超過収入分がかなり増えている。二〇〇三年から二〇〇六年までの年平均超過収入額は二〇四〇億元にのぼり、その内、昨年度の超過収入は二五七三億元に達した。この超過収入分は主として次のような方面に振り向けた。即ち、輸出による租税還付や耕地の林地への復元など過去からの借りを穴埋めすることや、法に基づいて地方への税収還付と一般的移転支出を増やすこと、教育や科学技術など諸分野への法定支出を増やすこと、社会保障基金や企業の政策的破産、住民の最低生活保障などの支出を増やすこと、に充てた。

それとともに本年度は、前年度の超過収入分から500億元を拠出し、これにより中央予算安定化調節基金を創設するつもりである。こうしたことは予算をより科学的かつ合理的に編成し、中央予算の安定性と財政政策の継続性を維持するためにまったく必要である。ただし、この基金は予算管理枠のもとで運用され、全国人民代表大会の監督を受けなければならない。

さらに、財政管理を強化し、収入増加・支出節約に断固取り組み、勤倹節約を励行し、贅沢三昧や浪費に反対して、財政資金運用のパフォーマンスを引き上げる。法に則って税務管理を大いに推進し、租税の徴収と管理を強化し、政府の非課税収入管理を規範化させる。

引き続き穏健な通貨政策を実施する。多種類の通貨政策や手段を総合的に運用して、マネーサプライと貸出の総量を適正に規制し、銀行資金の流動性過剰問題を効果的に緩和させる。融資構造を調整し、最適化させ、銀行が「三農」や中小企業、省エネ・環境保護、自主的創造革新に対する融資面のサポートを強め、引き続き中長期融資を抑制し、高エネルギー消費、高汚染企業及び、生産能力が過剰となった業種の劣位企業への融資を厳しく制限するよう誘導する。

金利の市場化改革を穏当に推し進めるとともに、人民元の為替レート形成メカニズムをいっそう完全なものにする。外貨管理を強化、改善し、国の外貨準備の合理的な運用ルートとパターンを積極的に模索し、それを広く開拓する。多方面から手立てを講じて、国際収支の不均衡の状況を逐次改善してゆく。

投資と消費の関係を調整する。内需拡大の方針を堅持し、重点的に消費需要を拡大する。所得分配制度の改革が深められれば、所得格差の拡大という矛盾が緩和されるだけでなく、消費需要の効果的増大にもつながる。さまざまな施策を講じて、都市農村住民の所得収入、とりわけ中低所得者層の所得を増やすことに努める。最低賃金制を合理的に調整した上で、それを厳格に実行し、最低時給の基準を徹底させ、企業の賃金分配に対するコントロールと指導を強化し、賃金の正常な引上げメカニズムと支給メカニズムを確立し、健全なものにする。今年、各地方は最低賃金制と最低時給基準の実施状態について、総点検を一度実施することとする。

引き続き公務員給与制度の改革、公務員の所得分配秩序の規範化及び関連人員の待遇調整に関する政策・措置を徹底化する。とりわけ、農村の消費需要を拡大し、農民の収入増加・負担軽減の促進につながる政策・措置を真剣に実行し、農村における商品流通と市場体系の整備を強化し、農村の消費環境と条件を改善する。

固定資産投資の適正な伸びを保ち、投資構造の最適化に力を入れ、投資のパフォーマンスを向上させる。引き続き土地使用の審査・許認可と貸出審査を厳しくし、業種別の事情に応じて、建設プロジェクトの用地や環境保護、省エネ、技術、安全などの市場参入基準を適切に引き上げ、さらにそれを厳格に実行する。新規プロジェクトを厳しく規制し、特に都市整備の規模を抑制する。経済社会の大局と長期的発展に資する重要な大型プロジェクト建設を強化し、大型水利施設やエネルギー資源基地、幹線鉄道、国道主幹線など重要基盤施設の整備を速める。民間資金が農業・農村や社会諸事業、自主的創造革新、資源の節約、環境保護、中西部地区へより多く投入されるよう積極的に誘導する。投資体制の改革を深化させ、重要投資プロジェクトに関わる政策決定制度と責任追及制度を完全なものにすべきである。

不動産業は経済の発展や人民大衆の居住条件の改善にとって重要な役割を果たすものであるため、不動産業の持続的で健全な発展を促進しなければならない。第一に、膨大な人口を抱えるにもかかわらず、耕地が少ないという国情及び現段階における経済発展の水準を踏まえ、合理的に企画し、科学的に建設し、適度な消費を目指し、省エネ・用地節約・環境保全型の建築を発展させ、中国の特徴をもつ住宅建設と消費パターンを形成する。第二に、不動産業は広範な大衆向けの一般分譲住宅を重点的に発展させるべきである。政府は低所得家庭の住宅問題に特段の配慮を払った上で、その解決に向けて援助の手を差し伸べなければならない。財政や税制などの面から政策的支援の度合いを大きくし、低価格賃貸住宅制度を確立し、それを健全化させる。また、エコノミー住宅制度の改善と規範化を図らなければならない。第三に、政府による規制と市場メカニズムの二つの手段を正しく運用して、不動産投資の合理的な規模を維持し、分譲住宅の供給構造を最適化し、住宅価格に対する監督・管理と規制を強化し、不動産価格の急騰を抑制し、合理的な価格水準を保つ。第四に、不動産市場の秩序を突っ込んで整頓し、規範化させ、不動産市場に対する監督・管理を強化し、法に則って不動産の開発や取引、仲介などの諸過程における法律・法規違反の行為を懲罰する。地方の各級政府は不動産市場に対する規制と監督・管理において確実にその責務を全うしなければならない。

温家宝総理は「農業、農村、農民の問題は、小康社会の全面的な建設及び現代化事業の大局に関わる重要な課題である。今年の「三農」課題への取り組みは、現代農業の発展を速めることを重点とし、社会主義新農村の建設を着実に推し進めることである」と語り、次のように述べた。

一、食糧生産を安定的に発展させること。二、農業の総合的生産能力を着実に高めること。三、農村のインフラ整備の強化に取り組むこと。四、多ルートを通じて農民の収入増を図ること。五、農村における実用人材陣の整備と人的資源の開発を大いに推進すること。

現代農業を発展させ、新農村の建設を推し進めるには、政策、投入、科学技術、改革に依拠しなければならない。一、農業向けの支援・優遇策を徹底し、充実させるとともにそれを強化すること。二、農業や農村への投入を増やすこと。国のインフラ整備や社会諸事業発展の重点を着実に農村地域に移し、今年の農業支援に振り向ける財政投入や農村の建設に用いる国の固定資産投資及び土地譲渡収入などの伸び幅を引き続き前年度より大きくする。「三農」に対する中央財政の投入を3917億元と計上し、前年度より520億元増とする。農業保険を鋭意発展させ、農業の政策的保険の試行範囲を拡大する。三、農業の科学技術の進歩を促すこと。四、農村の総合的改革を全面的に推し進めること。

社会主義新農村の建設を推し進めるには、農村経済の発展や農民の収入増に重点を置く。あくまでも農村基本経営制度の安定化と健全化を図り、実際から出発し、地域の特色を生かすという原則を堅持し、終始農民の自由意思を尊重し、農民の権益を守り、形式主義と強制命令を戒めなければならない。

温家宝総理は「省エネ・原材料消費の低減、環境保護、土地の集約的利用に大いに力を入れる」と強調し、次のように語った。

今年は、省エネ・原材料消費の低減、環境保護、土地の集約的利用を経済成長パターンの転換をはかる突破口、又は重要な手掛かりとしなければならない。省エネと環境保護の面において、次のような仕事に重点的に取り組む。一、エネルギー消費と環境保護の基準を完備させ、厳格に実施すること。二、立ち遅れた生産能力を断固淘汰すること。三、重点業種や企業に特に力を注ぐこと。四、省エネ・環境保護政策体系の健全化をはかること。五、省エネ・環境保護技術の進歩を加速させること。六、汚染対策と環境保護の度合いを大きくすること。七、法の執行に対する監督・管理を強化すること。八、省エネ・環境保護の目標責任制を真剣に実施すること。

土地を節約し、またそれを集約的に利用することは、当面の経済社会の発展だけではなく、国の長期的利益と民族の生存の根幹に関る問題である。土地の問題において、われわれは取り返しのつかない歴史的な誤りを決して犯してはならず、後世の子孫にに災禍を残してはならない。全国の耕地面積が一億二○○○万ヘクタールを下回ってはならないという「警戒ライン」を必ず守らなければならない。最も厳しい土地管理制度を断固として実行する。一、土地利用の総体的企画と年度計画を真剣に実施すること。建設に伴う土地収用の規模を断固規制し、耕地、とりわけ基本農地の保護を強化し、勝手に農地を建設用地に転化することを禁じる。禁止類や制限類に属するプロジェクトの用地に関する新規改正の規定を真剣に実施し、わけても別荘類不動産の開発、ゴルフ場の建設、党・政府機関及び国有企業・事業体による研修センターなどの新規建設に伴う土地収用を禁じる。二、土地の節約と集約的利用に関する基準の整備を急ぎ、それを厳格に実施すること。農村部の集団建設用地や住宅用地も含め、土地の利用にあたってはいずれも増加分の規制と保有分の活用に取り組み、土地利用の効率と集約化の度合を高めなければならない。三、工業用地を確実に規制し、工業用地譲渡の最低価格基準を断固として執行すること。四、建設用地に関する租税・費用政策を実施し、土地の譲渡に関わる収支管理を規範化させ、国有土地使用権の譲渡で得た収支額をすべて地方予算に組み入れるという規定を確実に執行する。五、土地管理責任制を厳格にすること。土地の監督・査察制度を確実に実行し、さまざまな法律法規違反の案件を厳しく取り調べ、処分する。

すべての企業、村落、部門及び社会構成員全体が自らすすんで資源節約、環境保護に取り組むよう、社会全体で節約、環境保護、文明を旨とする生産パターン、消費パターンを提唱し、資源節約型、環境にやさしい社会の構築に努める。


 

本社:中国北京西城区車公荘大街3号
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