中国の軍事支出を公正に読み解く

毎年行われる全国人民代表大会(全人代)・中国人民政治協商会議全国委員会(全国政協)の両会議では、中国の国防費について熱く議論が交わされるが、今年もまた例外ではない。第10期全人代第5回会議の姜恩柱報道官は今月4日、国務院が全人代に提出した2007年の国防予算は3509億2100万元(約449億4千万ドル)で、前年比17.8%の増加となることを明らかにした。

中国は人口が世界一多い国であるにもかかわらず、国防費の絶対値は米国の10分の1以下であり、一人当たりの国防費は米国の200分の1を下回っている。また、中国の国防費が国家財政と国民総生産(GNP)にそれぞれ占める割合、一人当たりの国防費が一人当たりの国民所得に占める割合は全て先進国を下回っている。

中国の国防費に関連するデータの中で唯一、相対的に高くなっているのは、年間国防費の増加率だ。これは、いわゆるアナリストらが大げさに文章を書きたてる部分でもある。しかし、年間増加率が高くなっているのは、中国の現在の国防費が少ないためだ。仮に中国の国防費が現在の増加率で増え続けていったとしても、先進国の軍事レベルに追いつくまでは非常に長い時間が必要となる。ましてや、中国国防費の増加と同時に、他の大国の軍事費も急速に増えている状況においてはなおさらのことだ。

国外では中国の国防費について言及するときに、いわゆる「隠れた軍事支出」の問題がよく取りざたされる。実際、いかなる国の財政支出にも各々の国情・慣例がある。例えば米国では、核弾頭の開発、生産、維持費は全てエネルギー省の支出に組み入れられ、軍事費の分野に属さない。また、アフガニスタンとイラクにおける軍事行動の費用も、軍事費として勘定されていないのだ。中国の「隠れた軍事支出」を、想像のみに頼って際限なく拡大する行為は、「他に下心がある」行為だとしか説明できない。

一国の軍事支出が合理的かどうか、国際的なパワーバランスを崩さないかどうか、多国への脅威にならないかどうかを深く分析するのであれば、最も根本的な根拠として軍事費が何に使われ、どのような結果をもたらしたか見なければならない。冷戦終結から現在まで10年以上にわたり、中国はいかなる国とも戦争・武力衝突を行っていない。周辺地域とも長期的に平和かつ安定した状態を保っている。この事実からも、中国の国防支出は事実上、平和のための投資に他ならないことが明らかだ。ある意味では、中国経済の急速な発展、および世界各国が中国経済の発展から得た利益は、まさに中国の平和のための投資がもたらした「配当金」であるとも言える。今日、中国は依然として国家分裂主義、テロリズム、国際的覇権主義の大きな脅威に直面している。国防費を適度に増やすことは、戦争の抑制と国の安定、世界平和にとって重大な意味を持つ。一国の軍事費の多い少ないは、確かに関心を払う価値のあることだ。しかし、さらに重視する必要があるのは、それが平和への投資なのか、戦争のための投資なのかである(文:雑誌「世界軍事」編集長)。

「人民網日本語版」2007年3月8日


 

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