代表のみなさん
ここに国務院の委託を受けて、二〇〇六年度国民経済・社会発展計画の執行状況と二〇〇七年度国民経済・社会発展計画案を第十期全国人民代表大会第五回会議に報告し、審議を求めるとともに、全国政治協商会議の委員のみなさんからもご意見を求めたいと思う。
一、二〇〇六年度の国民経済・社会発展計画の執行状況
二〇〇六年、全国各民族人民は中国共産党の指導の下、科学的発展観並びに社会主義調和社会構築という重要な戦略的思想を真剣に貫徹、実施し、第十期全国人民代表大会第四回会議で審議、承認された国民経済・社会発展計画に則って、改革開放と現代化建設のテンポを速めた。その結果、発展条件はこれまで以上に改善され、発展環境はいっそう適正化し、成長トレンドはさらに上向き、「第十一次五ヵ年計画」も好スタートを切ることができ、小康社会を全面的に建設するという偉大な目標に向かってさらなる着実な一歩を踏み出した。
(一)国民経済の運営は成長テンポが比較的速い、 パフォーマンスが比較的よい、物価水準が比較的低いという良好な状態を保っている。
経済はテンポの比較的速い、安定した成長を保っている。通年の国内総生産(GDP)は二〇兆九四〇〇億元で、一〇・七%増となった。経済成長の安定性は著しく増強され、年度別、四半期別をとわず、GDPの伸び率はいずれもかなり狭い範囲内で変動している。
通年の消費者物価総水準の上昇率は一・五%であり、経済成長率が四年連続で一〇%に達し、或いはそれをやや上回りながらも、物価の上昇率を比較的低い水準に安定させたこと、これはわが国の発展史上まれに見ることである。
経済のパフォーマンスは比較的良好であった。
全国の歳入は三兆九三〇〇億元で、二四・三%伸びた。一定規模以上の工業企業は一兆八七八四億元の利潤を達成し、三一%増となった。単位GDP当たりのエネルギー消費量は一・二三%減少し、これは二〇〇三年以来初めての減少となった。単位工業付加価値当たりの水使用量は九%低下した。
経済運営にみられる一部の際立った矛盾や問題がいくらか緩和された。投資の伸びはいくぶんか低下し、通年の全社会固定資産投資は二四%増で、伸び幅が前半期より五・八ポイント下がり、昨年度より二ポイント低くなった。マネーサプライや貸出総量の伸びが減速しており、年末時点の広義マネー・サプライ(M2)は同期比一六・九%増で、五月末に比べて二・一ポイント低下し、前年末に比べて〇・六ポイント低下した。石炭、電力、運輸の逼迫状態には明らかな改善がみられ、発電所に直接供給する石炭の備蓄量は年末までに二四一一万トンに達し、正常な状態を保っている。一億キロワットの発電設備容量を新規増加し、年間発電量は一三・四%増の二兆八三四四億キロワット時に達し、国家電力網システムの電力供給制限頻度・回線数および電力損失量は、前年度に比べてそれぞれ九七%と八二%減少した。食糧、化学肥料など重点物資の輸送はかなりうまく確保されている。
(二)社会主義新農村の建設は着実に推し進められている。
農業向けの優遇策をさらに充実させた。全国範囲で農業税と農業特産物税を撤廃し、すでに撤廃された家畜屠殺税、牧畜業税など農業に関わる租税・費用を加えると、農民の年間負担額を約一二五〇億元軽減させた。穀物作付農家に対する直接補助や良質種子補助、農機具購入補助および農業資材総合直接補助を実施し、通年の補助金額は三〇〇億元を上回った。財政難を抱える県と食糧主産県への移転支出を増やし、奨励・補助金として二三五億元計上した。食糧最低買付価格の適用範囲は稲から小麦まで拡大した。大中型水利・水力発電プロジェクトの建設に伴う耕地収用の補償基準をかなり大きく引き上げた。
農業支援向けの投入を持続的に増やしている。「三農」(農業、農村、農民)問題の解決に振り向けられた中央財政の支出は三三九七億元に上り、石油特別収益金で充当された穀物作付農家向けの総合直接補助金一二〇億元を別にすると、前年度比四二二億元増となった。農村の生産・生活条件が改善されている。農村飲用水安全プロジェクトの建設に対して、中央財政は前年度の三倍になる六〇億元を投下し、一方で地方財政も約六九億元を投下し、二八九七万人の農民に恩恵をもたらした。農村のメタンガス整備事業に対して、中央財政は前年度の二・五倍になる二五億元を投下し、地方財政は一五億六〇〇〇万元を投下し、メタンガスのユーザーを約四五〇万世帯新規に増加した。農村自動車道路の改造事業に対して、中央財政は一九〇億元、地方財政は二四〇億元を投下し、村間、郷間のアスファルト(セメント)道路をあわせて一二万キロ改造・拡張した。「万村千郷」(二〇〇五年から実施された農村流通網整備に関わるプロジェクトで、財政資金など様々の出資形態を通じて、三年間で全国五〇%の行政村、七〇%の郷鎮をカバーする標準化「農家店」を約二五万店舗設立するという目標を掲げている)という市場プロジェクトを実施し、農家店を一〇万店舗余り設立した。
農業構造は引き続き最適化されている。穀物作付面積は前年度より一一〇万ヘクタール増加し、一億五三八万ヘクタールに上った。穀物は再度豊作となり、その総生産高は前年度比一三四四万トン増加し、四億九七四五万トンに達した。特別用途優良小麦と優良稲の栽培面積の割合は五五・二%と六九・一%に上り、前年度よりそれぞれ六ポイントと四ポイント上昇した。綿花と製糖作物の生産高はそれぞれ一七・八%、一六・二%増え、肉類、牛乳および水産物はそれぞれ四・六%、一八%、二・八%増となった。
(三)経済構造の調整には積極的な変化が見られた。
工業構造の調整にいっそう力を入れた。一定規模以上の工業のうち、ハイテク産業の付加価値は一八・七%の成長を達成し、工業の伸び幅を二・一ポイント上回った。大型薄板熱間連続圧延プラント、大型発電所用の空冷システムなど重大技術装備の国産化は実質的な突破を遂げた。生産能力が過剰となっている業種の構造調整には新たな進展が見られ、法に基づいて若干の立ち遅れた生産能力を淘汰した。製鉄業においては、一〇〇立方メートル未満の小型高炉と一五トン未満の小型転炉が相当数淘汰された。電解アルミ自焼成槽は全部淘汰された。セメント工場の湿式キルンのほとんどが操業を停止したか、または撤去され、新型乾式セメントの割合が五〇%を超えた。石炭業においては、小炭坑を五九三一ヵ所閉鎖し、安全生産の条件に合致せず、または資源を破壊する立ち遅れた生産能力を一億一〇〇〇万トン分淘汰した。
自主的創造革新能力の建設を鋭意推進した。自主的創造革新を後押しする関連政策の実施細則を策定し、一六の重大科学技術特別プロジェクトは相次いで前期の検証作業を始動させた。国家財政の科学技術事業に充てた支出は通年で一二六〇億三八〇〇万元に達し、前年度より二六・二%増となった。超音波治療、燃料電池などに関わる国家工程研究センターの整備を完成させ、国家認定の企業技術センターを九二ヵ所新設し、第一期創造革新型企業創生のモデル事業を始動させた。次世代インターネットのモデル事業、「竜芯二号」高性能汎用コンピュータチップなどの研究開発は、重要な革新的成果をあげ、中国初の超伝導トカマク型核融合実験装置が整備された。
サービス業は安定した発展を保っている。その規模は引き続き拡大し、付加価値額は一〇・三%増の八兆二七〇三億元に達した。構造と質がいっそう改善された。交通輸送の供給能力は目に見えて増強され、自動車道路の新規建設距離数は九万三七〇〇キロ、そのうち高速道路の実延長は四三二五キロである。鉄道線路の新規開通距離数は一六〇五キロ、新規増加した複線鉄道は七〇五キロである。沿海の港において二五二のバースを新設・拡張し、そのうち一万トン級およびそれ以上の深水バースは一四四である。首都空港、上海浦東空港の改築・拡張などの工事は順調に進められ、チベット林芝など中西部地区における五つのローカル線空港は竣工し、運営を始めた。物流配送、金融保険、情報サービスなどの生産型サービス業の発展は加速し、消費型サービス業には、新しい形態と新しい商品が絶えず生み出されている。
地域間の調和のとれた発展は新たな成果を収めた。西部大開発の「第十一次五ヵ年計画」の編成作業は完了し、通年で西部地区に振り向けた中央予算内投資と国債資金の占める割合は四一%に達し、年初定めた一二の重点プロジェクトはいずれも着工に入り、特色のある優位性を備えた産業の発展が加速している。また、耕地の林地復元の成果は打ち固められ、西部の五省・自治区における自家用食糧基本耕地整備のモデル事業はスタートした。東北地区など旧工業基地における資源型都市の経済パターン転換のテスト作業、採炭による地盤沈下区域の整備及びバラック地区の改造はスムーズに進められ、重点企業の自主的創造革新能力と生産製造能力も増強された。中部地区の勃興戦略を始動、実施し、中部地区の勃興促進に向けた若干の意見を策定し、その支援策を明確にした。東部地区は引き続き他の地区に先駆けて発展しており、天津浜海新区と上海浦東新区における包括的な改革のテスト作業が積極的に進められている。
(四)社会諸事業及び民生に関わる諸活動は強化された。
教育の発展を優先させる面では新たな進展が見られた。全国でさらに八三の県が「二つの基本」(九年制義務教育の基本的普及と青・壮年の非識字者の基本的一掃)の基準達成点検にパスした。農村の義務教育経費保障メカニズムの改革は幸先の良いスタートを切り、二〇〇六年、農村の小・中学生五二〇〇万人にその恩恵が行きわたり、小・中学生一人当たりの年間負担額はそれぞれ一四〇元と一八〇元軽減した。中西部の農村地区では、三七三〇万人の貧困家庭の児童・生徒に教科書を無料で提供し、七八〇万人の寄宿生に生活補助金を支給した。中央は四〇億元を投入し、二八五八の寄宿制学校の建設と八万五八〇〇の小中学校の現代遠隔教育施設の整備を支援した。中央はまた二八億五〇〇〇万元を投入し、三二一の職業教育実践訓練基地、二八の高等職業教育のモデル校、四七八の中等職業学校と県職業教育センターの整備を支援した。高校教育と高等教育の粗入学率はそれぞれ五九%と二二%に上った。
公共医療衛生体系の整備と計画出産事業はいっそう強化された。国債資金二七億元を計上したほか、地方もそれに合わせて一七億元を支出し、五四三六の郷鎮衛生院と六七二の県病院、県漢方医院、県女性・児童保健機構のインフラ施設の建設を助成した。また国債資金を割いて、中西部地区における一群の食品・医薬品監督管理施設の整備に振り向けた。全国の大中都市をカバーするコミュニティー医療衛生サービス網がほぼ形成されている。新しいタイプの農村合作医療に加入した農民は四億一〇〇〇万人に上り、県を単位とするカバー率は五〇・七%に達した。人口の自然増加率は五・二八‰に抑えられている。
文化、観光及びスポーツ事業は発展のテンポを速めている。給電戸数五〇世帯を超える自然村の農民がラジオ・テレビを視聴できるようにするという目標はすべて達成され、農村の映画上映プロジェクトは首尾よく進められている。国家図書館第二期、中国美術館第二期及び一部省クラスの博物館などの重点文化プロジェクトの建設は着実に推し進められ、文化遺産の保護はさらに増強されている。国内旅行や海外旅行に出向く大陸公民の延べ人数はそれぞれ一五%と一一・三%伸び、赤色観光地(中国革命の史跡)のインフラ施設の建設は加速している。全国民の健康維持・増強計画は引き続き進められている。北京オリンピックで使用する三一ヵ所のスタジアムのうち、すでに三〇ヵ所は着工に入っている。
人民大衆はより多くの実利を手にした。農村住民一人当たりの純収入と都市部住民の一人当たりの可処分所得の実質伸び率はそれぞれ七・四%と一〇・四%となった。二九の省(自治区、直轄市)が最低賃金基準を引き上げた。農民就労者の賃金が期日どおり全額支給されるように保障するための諸制度は絶えず完備されている。都市部の新規増加就業者数は一一八四万人に上り、年末時点での都市部登録失業率は四・一%であった。社会保障のカバーエリアを引き続き拡大し、都市部の基本養老、基本医療、失業、労災及び生育など諸保険の加入者数は、それぞれ一一六二万人、一九五四万人、五三九万人、一七五七万人と一〇三八万人増となった。二五の省(自治区、直轄市)で農村最低生活保障制度を初歩的に確立した。各種優遇・慰撫対象者の扶助手当基準は大幅に引き上げられた。公共事業の労務提供による救済事業の推進により、貧困地区で一群の小型インフラ施設が新規建設され、転住による貧困脱却扶助モデル事業への支援金として一〇億六〇〇〇万元を計上し、西部地区で二四万人の貧困人口が転住をはたした。ダム地域の住民転住向けの土地収用補償およびそれを支援するための後期政策は逐次充実化し、裨益農民数は二二八八万人に達した。電力、食糧、化学肥料、医薬品、精製油、不動産などの諸価格及び農業関係、企業関係、また教育、医療、タクシー料金などに関わる料金体制に対して特別検査を行った。社会の消費財小売総額は一三・七%伸び、伸び幅は前年度より〇・八ポイント上がった。
(五)省エネ・排出削減及び生態系保護の事業はいっそう強められた。
エネルギー資源の節約や循環型経済の発展事業は著しく増強されている。二〇〇六年の初めに定められた全国の省エネ・排出削減目標は達成できなかったものの、エネルギー資源の節約や循環型経済の発展に対する諸方面の認識が普遍的に増強されたため、この事業への推進力はさらに強まった。また、省エネ活動を強化する決定を公布し、三〇の省(自治区、直轄市)、新疆生産建設兵団及び一部の中央企業との間で省エネ・排出削減の目標責任書に調印した。省エネ目標責任及びその評価考課体系が初歩的に樹立され、単位GDP当たりのエネルギー消費量と単位工業付加価値当たりの水消費量の公表制度を本格的に実行に移した。十項目の重点省エネプロジェクトを全面的に推し進め、国債資金を運用して一一一の重点省エネプロジェクトを支援した。一〇〇〇社のエネルギー多消費企業を対象に省エネキャンペーンを繰り広げた結果、エネルギー消費重点企業の省エネ管理は強化された。省エネや節水製品に関する政府調達リストを調整し、エネルギー効率の強制表示制度はより広い範囲で実施された。電力需要側管理は引き続き強化された。エネルギー多消費業種に対する電気料金差別化政策の実施はさらに強化され、一部の地方ではまたエネルギー消費限度の超過分に対して加算料を設ける制度を実施した。省エネや環境保護関連の宣伝活動を広範に行ったことにより、全社会の省エネや環境保護に対する意識が著しく強まった。第一期の循環型経済のテスト作業が実施された。
環境保護と生態系整備は鋭意推進されている。クリーン生産が全面的に進められ、国家重点業種のクリーン生産技術ガイドライン目録と評価指標システムが公表された。淮河、松花江などの流域で都市汚水や工業排水の対策を実施した。都市の汚水処理率と都市生活ゴミの無害化処理率はそれぞれ五六%、五四%に達し、前年度に比べてそれぞれ四ポイントと二・三ポイント上昇した。さらに一億四〇〇万キロワット相当の火力発電ユニットに脱硫装置を設置した。全国の二酸化硫黄や化学的酸素要求量(COD)の排出量の伸びはそれぞれ一一・三ポイントと四・四ポイント下がった。通年の耕地の林地復元面積は二六万七〇〇〇ヘクタール、放牧停止による草原復元面積は一〇〇〇万ヘクタールであった。
(六)改革開放は新たな一歩を踏み出した。
重点分野と肝要な段階の改革は引き続き深められている。北京、内モンゴルなど八つの省(直轄市、自治区)と一部の市、県において農村の総合的改革テストを行なった。一九社の国有独資公司が取締役会の設置と充実化に向けたテスト作業を進め、第二陣の中央企業七四社における社会的機能の分離改革はほぼなし遂げられた。独占業種の管理体制改革は積極的に推し進められ、郵政管理面での行政・経営分離がほぼ達成された。中国銀行、中国工商銀行は上場に成功し、農村金融機構の市場参入のハードルが一段と低くなり、銀行業の資産の質と自己資本比率は引き続き向上し、上場会社の非流通株改革(非流通株主と流通株主間の権益のアンバランスの是正)は一応完遂され、直接融資の規模が増大し、外貨管理制度と人民元為替レート形成メカニズムはより完全なものになっている。政府収支の類別化改革は順調に推し進められ、予算管理制度の改革は絶えず深められている。消費税、資源税と不動産関連課税の諸政策を調整し、充実させ、個人所得税の課税最低限を引き上げた。投資体制の改革は積極的に進められ、企業投資プロジェクトの審査・確認制と登録制に関する管理弁法を策定、公布した省(自治区、直轄市)は三〇に上り、八〇%以上の企業投資プロジェクトは登録制を実施し、中央の投資管理プログラムはいっそう規範化されている。資源関連生産物価格と要素価格の形成メカニズムの改革には望ましい進展が見られ、石油価格をめぐる総合的改革と電気価格調整案がスムーズに実施され、三〇の省(自治区、直轄市)で水資源費の徴収を始め、一五の都市で住民生活用水の段階式料金体制を実施し、さらに工業用地譲渡の最低価格基準に関する統一公表制度を確立した。医療衛生体制改革の深化作業が始動した。中小企業の成長プログラムを実施し、非公有制経済の発展環境はさらに改善された。
対外貿易の成長パターンの転換を鋭意推進した。輸出入総額は一兆七六〇〇億ドルに達し、前年度より二三・八%増となった。輸出入品の構成はさらに最適化され、機電製品とハイテク製品の輸出はそれぞれ二八・八%と二九%伸び、独自性や付加価値率の高い一般貿易の輸出ウェートが上昇する一方、高エネルギー消費・高汚染製品の輸出が過度に増加するといった傾向は効果的に抑制されている。通年の外商直接投資の実質導入額は六九五億ドルであった。企業の「海外展開」では新たな成果をあげ、年間の対外直接投資額(非金融部分)は一六一億ドルに上り、前年度より三一・六%伸びた。
経済・社会の発展で成果を上げたが、一方では、少なからぬ困難やチャレンジにも直面している。深層部に目を向けると、経済構造の不合理や成長パターンの粗放型、体制・メカニズムの不備などの問題がまだ抜本的に解決されていないことが分かる。当面の情勢から見れば、経済運営はマクロ規制の所期の方向に向かって進んでいるが、その基盤が強固なものにはなっておらず、経済成長のために払われた代価が大きすぎ、不安定・不調和の要因がかなり多く存在している。その内、比較的際立っている問題は次の通りである。一つは、農業基盤の脆弱な状況はなお根本的に変えられておらず、農民の持続的な収入増が難しさを増していること。農業分野の災害抵抗力が弱く、農業関連の科学技術の水準が高くない。食糧生産の効率が相対的に低く、農民に穀物作付補助を与えて収入増を図る効果が弱化しており、農民の出稼ぎ収入の増大は複数の要素の影響を受け、農民の収入増を制限する体制上のいくつかの障害がまだ取り除かれていない。二つは、投資の反動、またそれによってもたらされる経済の振れによるリスクが依然として存在していること。投資の増幅はなお高い水準を保っており、建設中のプロジェクトの規模は依然として過大であり、新規着工のプロジェクトもかなり多く、投資の加熱をもたらす体制やメカニズム上の問題はまだ根本的に解決されておらず、一部の地方や分野では投資拡大の原動力が依然として大きい。銀行系統の過剰な流動性は今後も続く見通しで、融資の拡張能力と貸出性向がまだかなり強い。対外貿易の黒字額は拡大を続けている。三つは、省エネ・排出削減の情勢が厳しく、資源環境面の矛盾が日増しに先鋭化していること。二〇〇六年の初めに定められた省エネ・排出削減の目標を達成できなかったが、その主要原因は次のようなものである。産業構造の調整がなかなか進まず、サービス業の占める割合が比較的小さく、重工業、とりわけ一部の高エネルギー消費・高汚染業種の拡張テンポが依然として速すぎ、本来淘汰されるべきかなり多くの立ち遅れた生産能力がいまなお市場から退出していないこと。関連の法律法規や基準と管理制度が整備されておらず、相互の整合性がなく、また省エネ・排出削減への投入が不十分で、省エネ・排出削減を支える財政・税制、価格、金融などの面の政策・措置がまだ十分に実施されていないこと。かなり多くの企業は、省エネ・環境保護向けの技術改良を実施する意欲が弱く、一部の省エネ・環境保護型プロジェクトが完工してその役割を生かすまでには、一定の期間を要すること。厳正な法律執行はまだ徹底されておらず、法律違反に伴う代価が安いため、資源の浪費や環境破壊などの法律法規違反行為は取り締まっても後を絶たないこと。一部の地区は省エネ・環境保護の重要性と逼迫性への認識をさらに高める必要があり、経済成長を重んじる一方、環境保護を軽視する現象が存在していること、などである。このため、二〇〇七年度の省エネ・排出削減の任務も依然としてかなり重いものとなろう。石炭、電力、石油、運輸の情勢がいくらか改善されているものの、地域性、時間帯性、構造性需給の逼迫状態はいまなお続いている。四つは、社会問題が依然として際立っており、社会の調和を促す任務が極めて重いこと。雇用情勢は相変わらず厳しく、労働力の総量的過剰と構造的不足の問題が並存し、大卒生就業のプレッシャーが増大し、一時帰休者・失業者、とりわけ「四〇代、五〇代」の人々や「ゼロ就業家庭」(就業年齢に相当する家族構成員の全員が失業状態にある家庭を指す)の再就業問題は相変わらず際立っている。社会保障のカバー範囲はかなり狭い。就学難や学費の高騰、診療難や医療費の高騰への不満を訴える大衆の声は非常に大きく、食品安全、医薬品安全、所得分配、社会治安、安全生産などの問題は依然として際立っている。企業の体制転換、都市整備に伴う家屋立ち退きや土地収用、環境保護などの諸方面にも大衆の利益を侵害する問題が存在している。旧革命根拠地、少数民族地区、辺境地区、貧困地区における貧困脱却はかなり厳しい任務となっている。以上の諸問題に対しては、積極的に対策を講じ、それを真剣に解決していかなければならない。
二、二〇〇七年度の経済・社会発展の全般的要請と主要目標
二〇〇七年度の経済・社会発展の活動を進めるにあたって、ケ小平理論と「三つの代表」の重要思想を指針とし、中国共産党第十六回全国代表大会と十六期三中、四中、五中、六中全会の精神を真剣に貫徹し、科学的発展観を全面的に実行に移し、社会主義調和社会の構築を速め、引き続きマクロ規制を強化、改善し、経済構造の調整と成長パターンの転換や、資源節約と環境保護の強化、改革開放と自主的創造革新の推進、社会発展の促進及び民生問題の解決に力を注ぎ、経済・社会の発展が確実に科学的発展の軌道に乗るように推進し、国民経済の良好で急速な発展の実現を目指して努力し、党の第十七回全国代表大会の開催に向けて望ましい環境を創り出さなければならない。
上述の要請に則り、それと同時に必要性と可能性も考慮に入れ、さらに「第十一次五ヵ年計画要綱」と結び付けて検討した結果、次のような二〇〇七年度の経済と社会発展の主要目標をうち出した。
――構造の最適化やパフォーマンスの向上、資源消費の減少、排出の削減を図った上で、適正な経済成長スピードを維持する。第三次産業とハイテク産業の占める割合を引き上げる。歳入は四兆四〇六五億元、GDPの成長率を八%前後とする。ここ数年、GDPの成長率はいずれも一〇%もしくはそれよりやや高い水準を保っているが、今年度は経済成長の所期目標の設定にあたって適度なゆとりを残しておいた。これは政府の規制の意図を全社会に伝達することにより、各方面が活動の重点と留意点を確実に経済構造の最適化や成長パターンの転換、質とパフォーマンスの向上に置くよう誘導し、成長スピードばかりを追求してそれを盲目的に競い合うのではなく、経済の良好で急速な発展を図ることがねらいである。経済成長の目標は所期的かつ指針的なものであるため、各地方も現実に立脚した上で、当地の総生産の成長率を合理的に定めるべきである。
――都市部の新規増加の就業者数を九〇〇万人以上とし、都市部の登録失業率を四・六%以内に抑える。今年は就業情勢がかなり厳しいものの、経済が持続的でテンポの比較的速い成長を保ち、雇用創出政策の効果もいっそう顕在化しているため、この目標の達成に向けて努力すれば実現可能であろう。
――都市部住民の一人当りの可処分所得及び農村住民一人当りの純収入の実質伸び率はそれぞれ六%とし、社会消費財小売総額の伸び率を一二%とする。国家財力の継続的増強、企業効率のさらなる向上、所得分配制度の改革、さらに社会主義新農村の建設、農民の収入増の促進、社会保障と貧困脱却扶助の強化など諸措置の実行にともない、都市・農村住民の収入は持続的に増えていくことになろう。但し、都市部低所得層及び農民の収入増大についてはなお多くの困難や制約要素にぶつかることが予想されるため、この目標の達成に向けて多大な努力を払わねばならない。
――消費者物価総水準の上昇率を三%以内とする。これは主に次のような要素を考えたうえで定めたものである。すなわち、資源関連生産物の価格改革を積極的かつ着実に推進すること、公共財・サービス関連の価格を調整すること、さらに昨年末の食糧・食用油など農業・副業生産物価格上昇のラグ的波及効果、これらはある程度、物価の総体的水準を押し上げることになるだろうということである。
――科学技術、教育、医療衛生、文化などの諸事業をさらに発展させる。国内総生産(GDP)に占める研究と試験開発経費支出の割合を一・五六%まで引き上げる。高等学校段階の粗入学率を六五%に高め、高等教育機関の計画募集人数は大学生五六七万人、大学院生四二万四〇〇〇人とする。公共文化サービス体系の整備を一段と強化する。新しいタイプの農村合作医療テストの対象範囲を全国の八〇%以上の県(市、地区)まで拡大させる。人口の自然増加率を七・五‰以内に抑える。
――国際収支の不均衡状況の改善を図る。当面の国際情勢は全般的に有利な方向に展開しており、国内企業及びその製品の競争力がよりいっそう向上しているため、輸出の伸び率はほぼ比較的高いレベルを維持していくことになろう。一方では、WTO加盟後の移行期が終了するにともない、輸入とサービス貿易を奨励する施策の効果が次第に現われてくるため、輸入規模は適度に拡大し、貿易黒字の過度な伸びもいくらか抑えられることになろう。
三、二〇〇七年度経済・社会発展の主要任務と措置
今年度の経済と社会発展の目標を達成するには、統一的に計画し、重点を際立たせ、次の八項目に力を入れて取り組まなければならない。
(一) 引き続きマクロ規制の強化と改善を図り、経済の安定した運営を維持する。
穏健な財政政策と通貨政策の実施を堅持する。(1)中央財政赤字を適切に減少し、引き続き財政の支出構造を調整していく。二〇〇七年度の中央財政赤字は二四五〇億元に抑え、前年度の予算赤字より五〇〇億元減とする。財政収入の超過分を適正に運用する。収入増加・支出節約を大いに推し進め、財政資金の運用効率を向上させる。(2)長期建設国債の発行額を縮小し、中央投資の合理化を図る。二〇〇七年度は長期建設国債の発行を前年度比一〇〇億元減の五〇〇億元にすることを提案し、中央予算における経常的建設資金は前年度予算より二五〇億元増やして八〇四億元とする予定であるが、二項目を合計すると、中央政府の建設投資総額は一三〇四億元に達する。構造を最適化させ、重点を際立たせ、脆弱な部分を補強し、力を集中して大きな事業に取り組むという要請に則り、農村の生産・生活条件の直接改善、基礎教育や公共医療衛生など社会諸事業の発展のバックアップ、西部大開発の促進などの分野に用いられる中央政府の建設投資がいずれも前年度を上回るようにする。それと同時に、省エネ・環境保護と自主的創造革新への支援を強める。(3)マネーサプライの適度な伸びを保ち、融資構造の最適化に力を入れる。二〇〇七年度、広義のマネーサプライ(M2)の所期伸び率は一六%とする。さまざまな通貨、融資ツールを総合的に運用し、引き続き銀行系統の流動性管理を強化し、金融機構が融資供与の緩急をよく把握するよう導き、中長期融資の規模を合理的にコントロールする。高エネルギー消費・高汚染の企業及び生産能力の過剰業種に属する劣位企業への融資を厳しく制限する一方、「三農」、中小企業、自主的創造革新、省エネ・環境保護、社会事業及び未発達地区に対する融資面のサポートをさらに強化する。(4)価格総水準の基本的な安定を保つ。価格総水準及び食糧、綿花、石油、石炭、鋼材、分譲住宅などの重要な商品やサービスの価格動向へのモニタリングと分析を強化する。市場価格に対する巡回検査活動をりっぱに行う。
引き続き固定資産投資への規制を強化する。(1)土地の審査・許認可と貸出審査を厳しくし、市場参入の基準を厳格に守り、生産能力が過剰となっている業種と高エネルギー消費・高汚染業種の発展を引き続き規制する。異なる業種の実状に即し、土地、環境保護、省エネ、技術、安全などの面における建設プロジェクトの参入基準を適切に引き上げ、またそれを厳格に執行する。新規着工プロジェクトの整理で収めた成果を強固なものにし、その市場参入における基準や手続きを適正に執行し、わけても都市の建設規模を規制しなければならない。新規着工プロジェクトの管理において部門間の連動メカニズムを確立し、新規着工プロジェクトに関する報告と公開制度を検討、樹立する。(2)経済社会の全局と長期的発展に関わる重要プロジェクトの建設を強化し、農業、サービス業、社会事業、省エネ・環境保護、自主的創造革新、未発達地区などの脆弱な部分をバックアップする。補助、利子補給、租税、価格などの経済的手段を活用して、政府投資の誘導的役割を発揮し、民間投資を適正に導く。(3)投資プロジェクトの監督・管理を強化し、プロジェクトに関する事前調査及びデータベース化制度の確立に拍車をかけ、プロジェクトに対する監査と監督検査を強化し、資金の安全と工事の質を確保する。
消費需要の拡大に力を入れる。(1)国民所得の分配構造の調整を速め、都市・農村住民のさらなる収入増を図るには、農民と都市部の低収入層の収入レベルと消費能力を絶えず引き上げることがカギとなる。(2)農村の消費需要を拡大し、農村における商品流通ネットワーク、農産物卸売市場及び現代的食糧物流などの流通インフラ施設の建設に対する支援を強化し、農業資材の流通ネットワークを充実させる。引き続き「万村千郷」、「双百」(一○○の大型農産物卸売市場を重点的に整備し、一○○の大型農産物流通企業の育成に力を入れること)という市場プロジェクトを実施する。(3)不動産市場の規制を目指した諸政策を確実に実行し、低価格賃貸住宅や中、低価格の中、小型一般分譲住宅の建設を速める。エコノミー住宅制度を改善し、規範化させ、低所得世帯の居住条件の改善を図る。不動産の開発、取引、仲介などの段階における法律法規違反の行為を法に基づいて取り締まり、不動産価格の高騰を抑制する。(4)消費分野の拡大に取り組み、電子商取引の発展に力を入れ、「赤色観光」(中国革命の史跡を巡るパックツアー)や農村観光、文化、健康増進、スポーツ、レジャーなどの消費を積極的に発展させ、消費ホットスポットを育成し、拡大させる。(5)消費環境のさらなる改善に取り組み、医療面の費用徴収と医薬品価格に関する政策を完備し、医療器械価格の規範化を図り、学校の費用徴収に関する公示制を全面的に推し進める。農業関連、企業関連、また教育、医療、不動産、電信、水道・電気・燃料油・ガスなどに関わる価格や料金の徴収に対する監督、検査を行い、市場への監督・管理を強化し、消費者の合法的権益を保護する。
経済運営の調節作業をりっぱに進める。現代化した大型炭鉱の建設を重点にすえ、中小型炭鉱に対しては統廃合、改造を実施する。石油・ガス資源の開発を急ぎ、石油備蓄体系の構築を着実に進め、石油・ガスの輸送ネットワークや施設の計画と建設に拍車をかける。電力網の建設を強化し、最適化を念頭に火力発電を発展させ、水力発電を鋭意開発し、原子力発電や太陽光、バイオマス、風力、地熱など再生可能エネルギーの発展を速める。石炭運輸ルートの脆弱な部分、積出港、重要な交通インフラ施設の建設にさらに力を入れる。さまざまな交通運輸方式の総合調整を立派に行い、交通資源を合理的に配置し、交通運輸業の総合的運営効率を高める。優先度に基づく電力供給をいっそう規範化させ、電力使用効率の向上を目指した「バーチャル発電所」整備のモデル事業を展開し、電力需要側管理の長期的メカニズムの確立を推し進める。引き続き石炭、電力、石油、運輸の需給面の整合性を強化し、住民の生活面の需要を優先的に満たし、病院、学校、金融、食糧、化学肥料などの重点分野と部門の需要を保障する。
(二)農村経済の発展を重点に置くことを堅持し、社会主義新農村の建設を着実に推し進める。農業向けの支援・優遇策を定着させ、さらに充実、強化し、「三農」への投入を確実に増やして、農業と農村経済の構造調整の促進に大いに力を入れる。(1)食糧生産の安定的な発展を図る。良質食糧産業プロジェクトの整備と国の大型商品化食糧生産基地の建設を引き続き推進する。穀物作付農家向けの直接補助、農業資材総合直接補助などの助成策を充実させ、良質種子と農機具購入の補助金の枠を拡大する。重点地区、重要食糧品種に対しては引き続き最低買付価格政策を実行する。食糧安全早期警報システムを構築し、充実させ、食糧の生産、在庫、輸出入に対する監視とコントロールを強化する。(2)現代農業の建設を積極的に推し進める。農業の基礎科学研究に関連する施設と農業の技術装備を改良し、先進的かつ適応性のある農業技術の普及に力を入れる。綿花、搾油作物、製糖作物の生産基地の建設を強化し、条件の備わった地方では飼育・養殖団地を整備するよう奨励し、引き続き栽培・飼育・養殖業の優良品種プロジェクト、植被保護プロジェクト、現代農業のモデル・プロジェクトを実施する。農産物品質安全検査測定システム、動物疫病予防システムの整備をよく行い、社会化サービス体系の健全化を図る。(3)引き続き農村の生産・生活条件を改善する。土地肥沃化プロジェクトの実施を速め、中・小型農地水利施設の整備を強化し、大型灌漑地区の節水施設の改造及び中部地区の排水ポンプ所の建設をサポートし、老朽化した危険なダムの改造への取り組みを強める。農村の用水、ガス、道路、電力などインフラ整備への投入を増やし、今年中にさらに三二〇〇万人の農村人口の飲用水安全問題を解決し、メタンガス利用農家を五〇〇万世帯新規増加することとし、県・郷自動車道路の改造と村間道路の整備をサポートし、中西部地区における農村送電網の改造と電気の通っていない地区の送配電施設の整備に取り組む。(4)農村の社会事業の発展を速める。農村の義務教育段階における児童・生徒の学費・雑費を全部免除する。引き続き貧困家庭の児童・生徒に教科書を無料で提供し、寄宿生に生活補助費を支給する。農村小中学校の現代遠隔教育プロジェクトと西部の「二つの基本」難関攻略任務を完遂し、農村の寄宿制学校の整備事業を引き続き推し進め、中西部農村における中学校の校舎改築をスタートさせる。郷鎮衛生院を重点とする農村医療衛生サービス体系の整備を強化し、新しいタイプの農村合作医療制度のカバー範囲を拡大する。郷鎮総合文化センターの整備をスタートさせ、新ラウンドの「村々通」(ラジオ・テレビの普及事業)と農村での映画上映事業を推し進める。(5)農民の収入増につながるルートをきり開く。農村の第二次、第三次産業を鋭意発展させ、高収益工芸作物や牧畜・水産業の発展を速め、農産物の質と安全レベルを向上させる。栽培・飼育・養殖業および林業の運営による収入増に努め、農業の産業化経営を促す。農村の合作経済組織を発展させ、県域経済を大きくする。各種の職業技能トレーニングをさかんに展開し、広範な農民の就業や創業の能力を向上させる。(6)農村向けの投入の安定的増加を図るメカニズムを構築する。農業支援投資をさらに統合させ、それに関わる企画や計画のかみ合わせ及び部門間の情報交換メカニズムを樹立し、投入に関する管理弁法を充実させる。
(三)省エネ・排出削減事業に取り組み、環境保護と土地の集約的利用を強化する。「第十一次五ヵ年計画要綱」で掲げた、五年間で単位GDP当たりのエネルギー消費量を約二〇%、主要汚染物質の排出総量を一〇%削減するという目標を達成するためには、あらゆる困難を押して、もっと効果的な措置をとり、もっと大きな努力を払って取り組まなければならない。それには、あくまでも省エネ・消耗低減や汚染物質排出の削減及び土地利用の集約化を突破口もしくは重要な手がかりとして、経済構造の調整と成長パターンの転換を速め、サービス業とハイテク産業を大いに発展させ、先進技術による在来産業の改造を奨励し、企業の吸収合併・再編を導き、高エネルギー消費・高汚染業種の中で市場参入要件を具えていない立ち遅れた生産能力の早期退出を促し、集約型発展の促進に取り組むべきである。これと同時に、次の八つの面の仕事に確実に力を入れる。(1)目標責任を徹底させること。省エネ・消耗低減と汚染物質排出削減の目標責任制を厳格に執行し、省エネ・排出削減を目指す科学的かつ統一的な統計指標体系とモニタリング体系の確立を急ぎ、省エネ・排出削減事業に関わる実績評価考課メカニズムを完備させる。(2)重点分野を際立たせること。鉄鋼、非鉄金属、電力、石油・石油化学、化学工業、建材などの重点業種と分野において、中央と地方の投資を活用して、低効率の石炭燃焼産業ボイラー(窯炉)の改造、地域の熱電併給、余熱・余圧の利用、石油の節減と代替、グリーン照明など十項目の重点省エネプロジェクトを全面的に繰り広げる。標準石炭ベースで年間エネルギー一万トン以上を消費する重点企業の省エネ管理を強化し、一〇〇〇社の企業を対象に省エネキャンペーンをつっこんで展開し、エネルギー監査を強化し、エネルギー多消費の重点業種においては、省エネ潜在力が大きく、適応性の高い一群の重大省エネ技術を選定して、その難関突破と技術普及に取り組む。(3)根源から省エネの達成を確保すること。固定資産投資プロジェクトについては、省エネ評価・審査制を実行し、エネルギー消費をプロジェクトの審査・許認可や着工・建設などの諸段階における強制的な基準とする。エネルギー多消費製品については最低エネルギー効率基準制を導入し、製品のエネルギー消費限度額を設定、実施する。公共施設のエネルギー消費原単位制度を樹立し、エネルギー効率の強制表示の適用範囲を拡大する。発電のディスパッチ方式を改良し、火力発電業種における「大型発電プロジェクトの発展、小型発電所の抑制」作業を加速し、今年中に一〇〇〇万キロワット容量の小型発電ユニットを閉鎖することにする。新規建設する火力発電所はすべて脱硫装置を同時に取り付けなければならない。既存の石炭燃焼発電所については、二酸化硫黄対応の計画を公布、実施し、煤煙脱硫施設の運営において特許経営のテスト作業を実施する。立ち遅れた製鉄生産能力三〇〇〇万トン分、立ち遅れた製鋼生産能力三五〇〇万トン分を淘汰するよう努める。(4)政策面の支持を強化すること。省エネ・消耗低減に資する財政・税制政策を充実させ、中央財政から省エネ特別資金を設け、高効率、省エネ製品の普及や、重大な省エネプロジェクトの建設、重要な省エネ技術のモデル事業をサポートする。高エネルギー消費・高汚染業種向けの電気・水道料金差別化政策を充実させ、汚染物質排出の料金徴収制度を健全なものにし、年末までにはすべての都市・町で汚水処理料金の徴収を発動するほか、料金徴収基準を逐次引き上げ、またすべての市制都市は定められた期限内にゴミ処理料金徴収をスタートさせるべきである。脱硫装置が取り付けられた石炭燃焼発電所の売電価格を引き上げ、脱硫装置の運転を無断で停止した発電所に対しては、脱硫分に見合う電力価格を差し引くとともに、厳しく処罰する。余熱・余圧、ボタ、ゴミ焼却などによる発電を奨励する政策を制定し、さらに電力網への売電価格に関わる優遇策を制定する。(5)循環型経済を発展させること。国の循環型経済発展計画の作成に拍車をかけ、循環型経済の評価指標体系と統計制度を充実させ、第一期の循環型経済のテスト作業を推し進める。資源の総合的利用を積極的に展開し、再生可能資源のリサイクル利用、廃棄家電のリサイクル処分及び自動車部品の再製造のテスト作業をよく行う。(6)環境保護を強化すること。クリーン生産を全面的に推進し、排出基準を甚だしくオーバーした企業に対しては、強制的クリーン生産の審査を実施し、期限を決めてクリーン生産の改造を完成させる。引き続き「三つの河」(淮河、海河、遼河)、「三つの湖」(太湖、巣湖、?池)、渤海、三峡ダム地域及びその上流域、丹江口ダム地域及びその上流域、「南水北調」の東ルート、松花江などの重点流域と区域の汚染総合対策を立派に行い、都市飲用水の安全保障を強化し、都市における汚水とゴミの処理能力を高め、飲用水源保護区内にある汚染物質の直接排出口を法によって閉鎖する。環境保護産業の発展に大きな力を入れる。(7)監督・検査をうまく行うこと。省エネ・排出削減をめぐる特別検査を繰り広げ、省エネ・排出削減目標責任制や、エネルギー効率の表示、エネルギー多消費企業の省エネ措置などの実施状況に対して監督・検査を強化する。重点のエネルギー多消費企業と重点汚染源に対してオンライン監視を実施し、都市部のすでに完工した汚水・ゴミ処理施設、脱硫施設の運転状況に対する監督を強める。(8)土地を節約し、それを集約的に利用すること。最も厳しい土地管理制度を実行し、土地利用についての総体的計画と年度計画を真剣に執行し、新規増加建設用地の総量規制を確実に強め、耕地特に基本農地を保護し、農地の建設用地への無断転用を禁止する。建設用地定額指標と工業用地最低譲渡価格基準を厳格に執行する。土地譲渡における収支の管理を規範化させ、国有土地使用権の譲渡における収支をすべて地方政府の基金予算に組み入れる。
(四)自主的創造革新能力の向上によりいっそう力を入れ、産業構造の最適化とグレードアップを促進する。(1)国家中長期科学技術発展計画要綱を真剣に実施し、自主的創造革新を支える関連政策の実施細則をさらに若干作成、公布する。国の重大科学技術特別プロジェクトの実施に取り組み、一群の重大科学技術基盤施設を整備するほか、若干の国家工程実験室と国家工程研究センターを建設し、さらに一群の国家認定の企業技術センターを選んでサポートし、応用技術研究院(所)と生産企業の再編を推し進める。引き続き公共技術プラットフォームを整備し、技術コンサルティング、技術移転などに関わる仲介サービスを強化し、知的財産権保護の度合いを大きくする。(2)サービス業の発展に拍車をかける。サービス業における重点分野の計画とプロジェクト建設に取り組む。業種の参入基準を緩め、それを規範化させ、財政、租税、価格などの面の政策を活用して、サービス業におけるカギとなる分野、脆弱な部分及び新興業種の発展をバックアップする。世界の先進的な経験、技術と管理ノウハウを積極的に吸収し、サービス業の質的向上やレベルアップを図る。(3)産業構造の調整と最適化を行う。産業構造調整の促進に関する暫定規定と産業構造調整の指導目録を実行に移し、業種参入の管理制度を充実させ、生産能力が過剰となっている業種の構造調整を速め、鉄鋼、セメント、電解アルミ、石炭、繊維、製紙など諸業種の吸収合併・再編を奨励、支持し、法によって立ち遅れた生産能力を淘汰する。その他の業種の生産と市場需給の変動を注意深く見守り、適時に施策を講じて新たな生産能力過剰の発生に歯止めをかける。先進的な情報技術を広範に利用することによって在来産業を改造し、わけても鉄鋼、建材、石炭、電力、石油化学工業、建築などの業種における技術改良を強化しなければならない。(4)ハイテク産業のコアコンピテンスを増強させる。バイオ医薬、集積回路、新世代移動体通信、次世代インターネット、情報安全などのハイテクプロジェクト及び産業化特別プロジェクトを引き続き実施し、ソフトウェアや集積回路、デジタルテレビ、バイオなどの面の産業政策の策定を速める。電子情報、バイオ、航空・宇宙飛行などに関連するハイテク産業基地を新規に建設し、若干の新興産業群を育成する。(5)装置製造業の振興に大いに力を入れる。国産初の重大技術装置の購入と使用を奨励する規定をいち早く策定し、高級数値制御工作機械、基礎製造関連装置などの重大特別プロジェクトに関する企画と総体的な実施案を制定する。嶺澳原発第二期および紅沿河原子力発電プロジェクトにおけるカギとなる設備の国産化事業を確実に推進し、交流一〇〇〇キロボルト送変電と直流八〇〇キロボルト送変電プロジェクトのモデル事業を実施する。都市軌道系交通輸送機関の国産化で収めた成果を打ち固めるとともに、ハイテク船舶および船舶用設備の国産化を推し進め、大型の造船インフラ施設の整備を速める。(6)代替エネルギー事業の秩序立った発展を図る。代替エネルギーに関する中長期発展計画及び石炭ベース代替エネルギー、バイオマスエネルギーなどに関する個別計画の検討、制定を急ぎ、モデル事業を先行させた上で着実に推進すべきで、条件が備っているか否かを考慮せずに一斉に取りかかることを防ぐ。
(五)地域発展の総体戦略を着実に実施し、地域間経済のバランスの取れた発展を促進する。(1)西部大開発を引き続き推し進める。西部大開発についての「第十一次五ヵ年計画」の実施に取り組み、インフラ整備、生態環境整備と科学技術や教育の発展を速める。一群の重点プロジェクトの新規建設に取りかかり、西部鉄道、自動車道路主幹線、ローカル線空港と内陸水運のインフラ整備を強化する。特色のある優位性を備えた資源の開発と産業基地の整備に取り組む。関連の後続政策の策定に拍車をかけ、耕地の林地復元、放牧停止による草地復元事業で収めた成果を強固なものにする。天然林の保護、砂漠化や石漠化の防除などの重要な生態系プロジェクトを引き続き実施する。西部地区の人材開発と法整備の仕事にいっそう力を入れる。東部、中部、西部地区の間の協同と相互促進を強化する。(2)東北地区など旧工業基地の振興を積極的に推進する。企業の統合・再編や重大装置の研究、開発、製造を後押しし、装置製造、原材料、農業・副業生産物の加工など諸産業の最適化とグレードアップを推し進め、松嫩平原と三江平原の商品化食糧基地の建設を強化し、資源枯渇型都市の経済パターン転換のモデル事業を引き続き推進し、採炭による地盤沈下区域の整備及びバラック地区の改造を立派に進める。(3)中部地区の勃興促進に向けた諸政策・措置を着実に実施する。中部地区における食糧基地、エネルギー・原材料基地、先進的な製造業とハイテク産業基地、さらに総合交通運輸システムの整備を強化し、現代流通業の発展を速める。(4)東部地区では体制・メカニズムのイノベーションを絶えず推進するように奨励し、産業構造の最適化とグレードアップのテンポを速め、改革開放の推進、科学発展の促進、成長パターンの転換などを図る面において全国の先頭に立つよう努力すべきである。天津浜海新区の開発、開放に関する政策・措置を徹底させ、上海浦東新区、深?経済特別区などの包括的な改革モデル事業を積極的に推進する。(5)旧革命根拠地や民族地区、辺境地区、貧困地区の経済・社会発展を速め、未発達地区におけるインフラ整備や公共サービスへの支援度合いを大きくする。(6)レベルに分けて主体機能の区画計画の編成作業を進める。国の主体機能の区画計画編成を完遂し、省レベルの主体機能の区画計画編成作業を着実に推進する。(7)都市化事業を積極的かつ穏当に推し進める。その重点として、都市の総合的受容能力の向上を図り、公共交通を優先的に発展させ、大都市に見られる交通渋滞、環境汚染など際立った問題の解決に力を注ぎ、「城中村(都市の中の村)」の撤去・改築を速めることである。(8)海洋経済発展計画の編成を立派に行い、海洋経済の発展をサポートする。
(六)諸般の改革を引き続き深化させ、対外開放の質とレベルを向上させる。全般的指導と統括的調整を強化し、体制改革の協同推進メカニズムを確立し、健全化させ、一部の重点分野とカギとなる部分の改革において突破口を切り開くよう努める。(1)行政管理体制の改革を鋭意推進する。政府機構の職責範囲を科学的に定め、行政運営メカニズムを充実させ、政府の管理とサービス方式を改善し、法に基づく行政を推し進め、行政の問責制を強化する。(2)農村の改革を全面的に深化させる。農村における租税・費用改革の成果を打ち固め、発展させる。郷鎮機構、農村義務教育と県・郷財政管理体制の改革を主要内容とする農村の総合的改革の推進に力を注ぐ。農村における土地請負関係の安定化と充実化を図り、農民の権益を確保する。農村の特徴に適合する新型金融組織を模索し、発展させ、さまざまな形の小額信用貸付組織を積極的に育成し、農村の金融サービス水準を向上させる。(3)引き続き企業の改革を推し進める。国有大型企業の株式制改革のテンポを速め、コーポレート・ガバナンス構造や、投資リスク規制メカニズム、内部統制メカニズムの健全化を図り、国有企業の政策的閉鎖・破産、社会的機能の分離、コアの業務と副次的業務の分離などの諸事業をさらに推進し、国有資本の経営予算制度を確立する。電信、電力、民間航空、郵政などの諸業種の管理体制改革を深め、鉄道投融資体制改革の推進に拍車をかけ、鉄道体制改革の総合案を検討、提起し、給水、ガス供給、給熱など市政公共事業の改革を引き続き推進する。非公有制経済の発展を奨励、支援、誘導する関連政策・措置を全面的に徹底させる。中小企業の成長プログラムを継続的に実施し、中小企業向けの社会化サービス体系の健全化を図る。(4)金融面の改革と創造革新を加速する。中国農業銀行の改革を段取りをおって着実に推進する。政策銀行及びその他の商業銀行、金融資産管理会社とノンバンク金融機構の改革を鋭意推進する。資本市場と保険市場を大いに発展させ、複層的な金融市場体系を構築し、債券市場の基礎的制度づくりを強化し、企業債券の発行規模を拡大し、産業投資基金のテスト作業を立派に行う。金利の市場化改革を着実に推し進め、人民元為替レートの形成メカニズムを充実させる。金融に対する監督・管理体系を完備させ、金融リスクを防ぎ止め、解消する。(5)財政・税制の改革を着実に推進する。財政移転支出制度を完備させ、予算管理制度の改革を深化させる。付加価値税転換の全面実施に関する方案及びその関連措置を制定し、鉱産物資源の有償使用制度を完備させる。(6)投資体制の改革を深化させる。企業投資プロジェクトの審査・確認手順を改善し、プロジェクト申請報告書の様式を公布し、『政府の審査・確認を要する企業投資プロジェクト目録』を修正するほか、企業投資プロジェクトに関する行政登録制の統一化と規範化を図る。引き続き「代建制」(建設管理業務を政府の管轄から民間企業への委託に移行する制度)を推し進め、政府による投資の政策決定責任追及制度の確立を急ぐ。(7)資源関連生産物の価格形成メカニズムを充実させる。精製油と天然ガスの価格を逐次整理し、各種用水の価格基準を適時に調整し、送配電価格の改革テンポを速め、風力やバイオマスなどの再生可能エネルギーによる発電の売電価格および費用分担に関する政策を充実させ、熱供給面の価格改革を推進する。(8)対外貿易の成長パターンの転換を速める。独自の知的財産権やコア技術を持つ製品の輸出を誘導し、一般貿易と高付加価値製品の輸出ウェートを引き上げ、高エネルギー消費・高汚染製品と資源関連生産物の輸出を規制し、エネルギー資源や重要鉱産物及び先進技術・設備、肝要な部品などの輸入を拡大し、戦略的な次元から重要物資の備蓄を強化する。加工貿易企業の参入基準を引き上げ、加工貿易のパターン転換・グレードアップを促進する。(9)先進技術、管理ノウハウと優秀な人材の導入を軸に、外資利用の質的向上を図る。サービス業の対外開放を積極的かつ穏当に推し進め、外資による投資が中西部地区、東北地区など旧工業基地及び産業政策に合致する分野へ移転するよう積極的に導き、中西部地区における外国優遇借款利用への後押しを強化する。海外投資を促進する政策措置と協調メカニズムを充実させ、企業の対外投資協力を奨励し、規範化させる。多国間貿易のルールの制定と自由貿易圏(FTA)の構築に積極的に参与する。
(七)教育、医療衛生、文化事業の発展に大いに力を入れ、経済社会の発展の協調性を一段と増強する。(1)教育事業の優先発展を堅持する。公共教育資源が農村、中西部地区、貧困地区、辺境地区、民族地区へ傾斜するよう促す。新たな農村義務教育経費保障メカニズムを貫徹、実行し、学齢期にある都市の家計困窮家庭や農民就労者の子女の就学問題をうまく解決する。職業教育の基礎能力の整備を強化し、農村の学生を対象とした中等職業教育を重点的にサポートする。質的向上を軸に、高等教育・教学の改革を速め、「二一一プログラム」(二十一世紀の高等教育発展に向けて、百校程度の優良大学を選定し、重点的に整備する)を引き続き実施し、高等教育機関の重点学科の整備を立派に行う。国による奨学金、就学助成金制度を確立し、充実させ、学資ローン政策を徹底させ、教育部直属師範大学では師範系学生に対し学費免除の制度を実施する。(2)公共医療衛生体系と基本医療サービス体系を完備させる。都市・農村住民をカバーする基本医療衛生保健制度を逐次構築する。都市部のコミュニティー医療衛生サービス体系を充実させ、経費保障のための対策措置を確実に実行に移し、民衆の病気予防・治療に利便を与え、医療費負担の軽減を図る。引き続き重大伝染病の予防・治療の仕事をりっぱに行う。中国伝統医薬と民族医薬事業の発展を大いに後押しする。医薬衛生体制改革の深化を目指す総体構想及び関連政策措置の検討、提起を速める。(3)文化、ラジオ・映画・テレビ、報道・出版、スポーツなどの諸事業を大いに発展させる。公共文化サービス体系、特に農村の文化基盤施設の整備を鋭意推進し、緊急の保存・修復が必要とされる文化財と文化・自然遺産の保護を強化し、国家博物館、国家図書館第二期、中国美術館第二期などの重要文化プロジェクトの建設を加速し、文化体制の改革を促進する。二〇〇八年オリンピック大会スタジアムの建設に全力を傾けていく。(4)現行の出産政策と低出産レベルを維持し、出生人口の素質向上を図る。農村部計画出産家庭に対する奨励・扶助制度を全面的に推し広め、農村の末端における計画出産サービスの条件を改善し、「少なく生み、早めに豊かになる」というプログラムの試行範囲を拡大する。高齢者事業を大いに発展させる。
(八)人民大衆の切実な利益に関わる際立った問題の解決に本腰を入れ、調和のとれた社会の建設を促進する。(1)引き続き積極的な就業政策を実施する。労働力を大量に吸収する集約型産業、中小企業、サービス業を大いに発展させる。就業トレーニングを強化し、労働者の就業技能を増強させる。大学新卒生の就業と一時帰休者・失業者の再就業に重点をおき、「ゼロ就業家庭」や就職困難者の就業を積極的に支援する。就業の促進と就業体制における都市・農村の統一的配慮を目指すモデル事業を推し進める。(2)所得分配の適正化に取り組む。第一次分配における労働報酬の割合を適宜に引き上げる。賃金の協商メカニズムを健全なものにし、最低賃金制度に合理的な調整を加え、またそれを厳格に執行し、国有企業・事業体、わけても独占業種の所得分配をさらに規範化させる。租税の徴収・管理を強め、法外な所得に対して効果的に調節する。賃金支給の保証金制度を実施し、農民就労者の賃金支給に対する監督・管理を強化し、農民就労者の合法的権益を確実に守る。(3)社会保障システムの整備に拍車をかける。都市部の基本養老、基本医療と労災保険を所有制の異なるすべての企業まで早急に行き渡らせ、基本養老年金個人口座の積立のモデル事業を着実に推し広め、重病医療共済を柱とする都市部住民基本医療保険のモデル事業を実施し、農民就労者向けの労災保険と重病医療保障事業を全力をあげて推進する。地域間移転に伴う社会保険関係の継続ポータビリティに関する規定を検討する。社会保険基金、住宅積立金に関連する管理制度を健全なものにし、基金の安全を確保する。都市部の最低生活保障制度をさらに充実させ、農村部住民向けの最低生活保障制度を全国で確立する。都市、農村の社会救済システムの充実作業を早急に進め、心身障害者、農村の「五保戸」(農村において労働力を喪失し、身寄りがないため衣、食、住、医療と葬儀など五つの保障を受ける世帯)、孤児、心身障害児などへの救済と保護を強める。(4)食品・医薬品安全および安全生産に関わる事業を強化する。引き続き食品・医薬品の安全推進を目指した特別整頓活動を進め、食品・医薬品の質や飲食業の衛生状況に対する監督・管理を大いに強化する。安全生産の体制やメカニズムを完備させ、企業を主体とした安全生産責任を強化し、炭鉱のガス漏れ対策と整頓・閉鎖といった二つの難関突破の任務を鋭意推進する。危険化学製品、花火爆竹、交通運輸、消防、建設、民用爆破器材などの重点業種を対象に安全整頓活動を進め、学校や娯楽施設などの安全予防対策を強化する。(5)引き続き貧困脱却扶助・開発事業に取り組んでいく。貧困脱却扶助への財政資金と公共事業の労務提供による救済事業資金を適正に管理、運用し、国家貧困脱却扶助・開発重点県における農村小型基盤施設の整備を強め、転住による貧困脱却扶助のモデル事業の推進を継続する。ダム地域の住民転住を支援するための後期政策を徹底化させる。被災地区の復旧作業をりっぱに進める。(6)社会の安定を維持、促進する。土地収用やそれに伴う家屋の取り壊しと移転、企業の体制改革、法に関わる訴訟などの面の問題を高度に重視し、またそれを本腰を入れて解決していく。応急保障を強化し、応急対策予備案体系の健全化を図る。社会治安防犯・抑制システムの整備を強化し、安心・安定・安全を創出する活動を広範にわたって繰り広げる。
代表のみなさん 二〇〇七年の改革、発展、安定をめぐる諸任務は並大抵のものではなく、非常に重いものである。われわれは胡錦濤同志を総書記とする党中央の指導のもとに、ケ小平理論及び「三つの代表」の重要思想という偉大な旗じるしを掲げ、科学的発展観並びに社会主義調和社会構築という重要な戦略的思想を全面的に実行し、心を合わせて協力し合い、着実に仕事に取り組み、発奮進取し、経済・社会発展の所期目標の達成並びに国民経済の良好で急速な発展の促進に向けて努力奮闘しよう。
(この報告については、今会議で最終的に審議、採択され、新華社から発表されるものが基準となる。)
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