朱鎔基総理の政府活動報告(2003)(五)


  (四)国有企業改革の推進を堅持し、再就職活動と社会保障システム整備を着実に強化した

 国有企業の改革は経済体制改革の中心的一環として位置付けられる。改革を断固推進しなければ、国有企業に活路はなくなる。五年来、われわれは社会主義市場経済に向けた改革の方向を堅持し、困難を乗り越えて前進し、厳しい課題に果敢に取り組み、仕事に一層力をいれ、国有企業の改革を深化させる難関突破戦を展開した。

 一、現代企業制度の整備を加速したこと。「財産権をはっきりさせ、権限と責任を明確にし、政府と企業を分離させ、管理を科学的に行う」という要求に基づいて、規範化した公司制、株式制の改革を積極的に進め、企業統治(コンポレート・ガバナンス)構造を充実させ、企業内部の分配制度、人事制度と雇用制度の改革を深化させ、インセンティブ・メカニズムと制約メカニズムを確立した。それと同時に、条件に合致した国有大型企業の体制転換や上場を奨励した。五年来、国有及び国有持株企業が国内外で四四二社新規上場し、それによって累計七四三六億元の資金を調達し、その中には、国外で調達した三五二億ドルの資金も含まれる。二、企業の優勝劣敗のメカニズムを形成させたこと。戦略上から国有経済の配置を調整し、国有企業の再編をはかり、有力な大手会社と大型企業グループがさらに力をつけ、強大になることをバックアップし、国民経済の重要な支柱と国際競争参入の主力となるようにした。それと同時に、国は職員・労働者を適切に再配置すること、企業と労働契約を解除した職員・労働者に対し、経済的補償を与えること、国務院の認可を経て企業の銀行不良債権を償却することなどの政策・規定を定め、長期的な赤字や債務超過に陥り、黒字転換の望みのない一部の企業や資源が枯渇した鉱山を平穏に破産、閉鎖させることによって、劣勢企業を市場から退出させるメカニズムを形成した。三、企業の負担と歴史的要因により蓄積された重荷を軽減したこと。国有商業銀行が不良資産を集中的に処理する改革と結びつけ、四つの金融資産管理会社を設立し、条件に合致した五八〇社の国有大・中型企業に対して「債権の株式権への転換」を実施することを定めた。「債権の株式化」を実施した企業においては、その資産負債比率が引き下げられ、そのうちの多数が赤字を解消し、黒字へと転換した。効果的な措置をとって、企業の抱え込んだ多数の余剰人員や企業による社会事業運営という諸問題の解決に努めた。四、企業の管理面での創造・革新を積極的に推し進めたこと。企業の情報化を大いに推し進め、コスト、資金と質の面の管理を強化し、企業の現代化管理レベルを全面的に向上させた。五、企業の外部からの監督・管理の強化に力をいれたこと。国務院は前後して一九二社の重点国有企業及び一群の国有金融機関に監事会を派遣し、国有企業と金融機関の指導者に対し、経済責任の監査を行った。これらは企業の経営と管理面での改善を促進し、国有資産の流失を防ぐうえで、重要な役割を果たした。

 なぜ国有企業の改革がこのように大きな進展を見せるに至ったのか、そのカギはあくまで吸収合併を奨励し、倒産を規範化させ、一時帰休者を再配置し、人員削減・効率増大をはかり、再就職プロジェクトを実施するという方針を実行し、再就職と社会保障システムの整備を確実に推し進めたことにある。ここ数年来、党中央、国務院は二回にわたって全国再就職対策会議を開催し、一連の政策と措置を相継いで制定、実行した。一時帰休者に対しては、再就職サービス・センターの設立を通じてその基本的生活を保障し、また社会保険料を代納し、再就職の実現を促進する。閉鎖した破産企業に対しては、なによりもまず職員・労働者を適切に再配置しなければならないのである。一九九八年以来、国有企業の一時帰休者は二七〇〇余万人に達し、そのうちの九〇%以上が再就職サービス・センターに入り、前後して一八〇〇余万人がさまざまなルートと方式を通じて再就職を果たした。それと同時に、「三つの保障ライン」を逐次充実させた。各クラスの政府は年々社会保障と再就職への資金投入を増やし、二〇〇二年に「二つの確保」と「最低生活保障」のために計上された中央財政資金は五九四億元に達し、一九九八年度の六・二倍となった。二〇〇一年より、遼寧省全域における都市部の社会保障システム整備のテスト作業が目に見えて成果をあげ、全国での逐次普及に向けて、経験を積み上げた。

 実践が立証しているように、国有企業の改革と再就職の促進、社会保障システム整備の強化に関する党中央、国務院の一連の方針・政策は正しいものであり、相互に関連し合った完全な体系でもある。全面的にそれらを貫徹、執行してこそはじめて国有企業改革の目標の達成が保証できるのである。

 (五)対外開放のレベルを全面的に向上させることを堅持し、国際経済・技術協力と競争に積極的に参与した

 経済のグローバル化が深く進展し、国際競争が日ましに激化する情勢のもとでは、世界の発展の潮流に順応し、対外開放の拡大を堅持してこそはじめて、国内外の二つの市場、二つの資源をよりよく利用し、自国を発展させ、強大にすることを速めることが可能となるのである。国際経済の厳しい環境に直面して、われわれは積極的に対処し、プラス面を生かして、マイナス面を避け、挑戦をチャンスに変え、対外開放の新しい局面を切り開いた。

 ここ数年来、内需拡大の方針を堅持すると同時に、輸出の拡大に関してもいささかもゆるがせにしなかった。一九九八年後半、アジア金融危機の影響を受けて、わが国の対外貿易の輸出にマイナスの伸びが見られたことがあった。このような状況の下で、われわれは人民元を切り下げないことを堅持し、輸出を奨励する一連の政策・措置を思い切ってとった。あくまで市場の多元化戦略と品質で勝負する戦略を実施し、新興市場の開拓に大いに力を入れ、輸出商品構造の改善に力を入れ、その質的向上とグレード・アップをはかった。対外経済貿易体制の改革を深化させ、対外貿易の経営主体の多元化を推進し、通関港の管理レベルと通関能力を高めた。効果的な措置をとったため、さまざまな困難を克服し、輸出には大幅な伸びが見られた。それと同時に、国内で至急必要とされる設備、技術と欠乏している原材料を大量に輸入することによって、経済の発展と技術の進歩を促進した。実践が立証しているように、人民元の為替レートを安定させ、あらゆる方策を講じて輸出の拡大をねらう政策決定と措置は正しいものである。

 われわれは条件の整った各種所有制の企業が海外へ進出し、国際市場を開拓し、国外で投資して企業を運営することを奨励し、設備、部品と労務輸出を促進した。国によってそれぞれ異なる投資、協力方式を取った。発展途上国、とくに周辺諸国に対しては経済技術面の援助を与え、資金付きの請け負いを繰り広げ、投資して経営を行い、無利子、低金利の貸付を提供した。こうすることによって、古くからの友好をうち固めるとともに、互恵を促し、ともに発展していくことにも役立ち、その意義は大きい。

 国際資本の移動の新たな特徴に基づいて、われわれはチャンスをつかみ、外資利用を積極的に拡大し、外資利用の質的向上に力をいれ、外資誘致を国内の産業構造調整、国有企業の再編・改造、西部大開発と結びつけた。この数年来、投資環境の改善に力をいれたため、交通、通信施設などのハード面での環境は大きく変容した。法制の整備に努め、政策の透明度を高め、良質のサービスを提供したため、ソフト面での環境もかなり改善された。これは外資への吸引力を増強する根本的かつ効果的な措置である。

        (「人民網日本語版」より)2003年3月18日