朱鎔基総理の政府活動報告(2003)(六)


  (六)科学技術・教育による国家振興戦略を実施することを堅持し、科学技術のイノベーション能力と国民の資質を高めた

 科学技術、教育を発展させることは、経済の振興と国の現代化を実現するうえで根幹となるものである。ここ数年、われわれは終始、科学技術・教育による国家振興戦略の実施を極めて重要な課題としてとらえ、主として資金投入の増大、改革の深化、政策の充実などの面で一連の措置を講じてきた。

 科学技術、教育への資金投入をかなり大幅に増やした。五年来、中央財政の科学技術への資金投入は累計二五〇〇億元に達し、それ以前の五年に比べて二倍以上に増えた。全国における研究、実験の開発経費は、一九九七年の五〇九億元から二〇〇二年の一一六一億元に増え、国内総生産(GDP)に占めるウェートは〇・六四%から一・一三%まで引き上げられた。中央財政は国家ハイテク研究発展計画、国家自然科学基金、国家創造・革新システム整備などに対する特別投資をかなり多く増やした。科学研究の条件が著しく改善した上、科学技術の革新を促した。二〇〇二年度全国における財政的教育経費の資金投入は三三六六億元で、一九九七年度の一・八倍となり、国内総生産(GDP)に占めるウェートは二・五%から三・三%まで高められた。一九九八年から、中央財政支出における教育経費の比率は年毎に一ポイント伸び、これだけで五年間四八九億元増えたことになる。中央財政は大量の資金を捻出して小中学校・高校教員の給与遅配や老朽校舎の改築などの問題を解決した。これと同時に、「奨学金、学資ローン、アルバイト先の斡旋、助成金、減額と免除」を旨とする就学援助政策システムを確立し、家計の困窮している学生が学業を継続できるよう取りはからった。

 科学技術、教育の体制改革を全面的に深化させ、科学技術・教育と経済・社会の発展との緊密な結合を積極的に推し進めた。一九九九年以来、前後して国務院諸部門所属及び省クラス所属の応用型科学研究機構に対して企業化へのメカニズム転換を図る改革を行い、条件の整った公益性のある科学研究機構に対しても様々な形の市場化改革を行い、科学技術成果の転化や産業化の効果的なメカニズムを初歩的に打ち立てた。企業化へのメカニズム転換を行った科学技術研究機構はすでに我が国のハイテク産業の新鋭となっている。改革を通して、企業は逐次技術革新の主体となりつつあり、国の科学研究機構、大学及び地方における科学技術力は絶えず増強された。「共同で建設、調整、提携、合併」などの形を取って、大学の管理体制に対し重要な改革を行い、中央と省の二つのクラスの政府管理、省を主とする新たな体制を確立し、従来のタテ割りやヨコ割りの分割、学校の規模が小さすぎ、専攻開設分野が狭すぎるといった局面をはじめて一新し、教育資源の最適配分を達成した。カリキュラムと試験による評価制度に対する改革を積極的に推し進め、これと同時に、農村における義務教育に対しては、国務院の指導のもとに、地方政府が責任を負い、段階ごとに管理を行い、県を主とする新体制を実行し、農村教育の改革と発展を力強く推し進めた。

 国の科学技術評価システムとインセンティブ制度を充実させ、技術と管理の収益配分への参加に関する政策を制定し、突出した貢献のある科学者、技術者と経営管理者を奨励した。科学研究機構の内部において、積極的に招聘任用制を推し進めた。若手の優れた大学教員を奨励した。国は何度も教師の給与基準を引き上げ、教師の勤務や生活の条件を改善した。ずば抜けた革新的人材の育成を奨励した。これらの措置は広範な科学者、技術者と教師の意欲を効果的に奮い立たせた。

 人材による祖国富強戦略を実施し、人材の育成、誘致と適性登用を重要な任務とした。全国における人材陣の整備計画綱要と西部地区における人材の開発十カ年計画を策定し、実施し、公務員、企業経営管理人材と専門技術人材陣の整備を強化し、人材の育成、導入と登用の制度と措置を充実させ、その才能が十分発揮され、人材を輩出する望ましい環境を創り出すことに努めた。幹部に関する人事制度改革を深化させ、公務員に対する試験採用、競争による昇格、職務ローテーション制及び育成・トレーニング制度を推し進めた。政府特別手当てを受領している専門家の選考制度を充実させた。「留学をサポートし、帰国を奨励し、出入国を自由にする」といった政策の実施を堅持し、留学人員の創業パークを設置し、科学研究と起業を助成し、多くの海外留学人員の帰国を誘致した。

 ここ数年、われわれは「両手でつかみ、両手のいずれにも力を入れる」という方針を堅持し、社会主義精神文明の建設の強化に大いに力を入れ、全民族の思想・モラルの資質と科学文化の資質をたえず向上させ、現代化建設のために強大な精神的原動力と知的な支えを提供し、経済、社会のバランスの取れた発展をも力強く促した。

 (七)持続可能な発展の道を歩むことを堅持し、経済と人口、資源、環境のバランスの取れた発展を促進した

 計画出産を実行し、環境と資源を保護することは、われわれの基本的国策である。絶対に環境破壊と資源浪費を代償に一時的な経済的成長を求めてはならない。われわれは終始持続可能な発展戦略を非常に際立った位置に据え、大幅に投入を増やし、根本から取り組み、表層部分から手をつけると同時に根本的解決をはかった。

 一、生態環境の保全と整備に力を入れた。一九九八年の特大級の洪水に見舞われた後、「伐採や放牧を禁じて植林し、耕地を元の樹林にもどし、耕地を湖沼に復元させ、囲い堤の撤去による洪水の放流、救済目的の工事実施、移転住民のための町作り、主堤防の補強、河川湖沼の浚渫(しゅんせつ)」といった基本的対策を総括し、実施した。重点森林地域と長江、黄河の上・中流において天然林の保護プロジェクトを実施した。生態環境が脆弱な地域で段取りを追って耕地を元の樹林・草地にもどす大がかりな作業を行った。「耕地を元の樹林にもどし、伐採や放牧を禁じて緑化し、食糧による貧困救済、個人による請負」という方法を講じるとともに、「樹林所有権を核心とし、食糧提供がカギとなり、種苗を先立たせ、幹部を保証とする」といった経験を総括し繰り広げた。国は無償で農民に食糧、種苗と生活補助金を提供し、耕地を元の樹林・草地にもどす農民の意欲を大いに引き出した。これは生態環境の改善、貧困地域における農民の貧困脱却と富裕化の早期達成において重要な役割を果たした。長江流域においては囲い堤の撤去による洪水の放流、耕地を湖沼にもどす、移転した住民のための町作り等の政策を実行し、二九〇〇平方キロの水面を回復し、洪水調節の容積を一三〇億立方メートル増やした。そのうち、?陽湖、洞庭湖においては湖沼の回復面積はそれぞれ八八〇平方キロと六〇〇平方キロに達し、千年以上にわたって湖沼の干拓による農地造成や湖沼と土地の争奪が繰り返されてきたが、ついに耕地を元の湖沼へもどす大がかりな回復作業という画期的な転換を実現した。

 二、資源に対する保護と合理的な利用を強化した。土地、鉱産物、淡水、海洋と生物などの資源に対する管理を強化した。土地使用に関する総合的計画を策定し、実施し、厳格な土地用途管理制度を実施し、耕地を着実に保護した。断固として鉱産物資源管理の秩序を整頓し、規範化させ、むやみやたらな採掘を規制した。海域の利用・管理は法制化の軌道に入った。一九九九年から、重点河川の全流域に対して水資源の統一管制を実施した。タリム川、黒河など流域の総合対策をスタートさせた。「引黄済津」(天津市へ黄河の水を引いてくること)などの突貫導水プロジェクトを実施し、都市部の給水を基本的に保証した。

 三、環境汚染対策を強化した。力を集中して重点流域、区域、海域、都市における汚染対策に取り組んだ。環境関係のインフラ整備を強化し、都市部の汚水とゴミの集中処理比率を高めた。環境法制と環境基準を健全化させ、法律執行への取り組みを強め、クリーンoプロダクツと環境管理システムの認証を推し進めた。環境保全産業とリサイクル型経済の発展をサポートした。自然保護区、景勝地と観光地の資源保護と環境保全を強化した。環境重視のための教育をくりひろげ、国民の環境保全参与への自覚を強めた。

 四、計画出産の仕事を強化した。人口の数を抑制し、人口の質を高めることを堅持した。現行の計画出産政策を定着させ、低出産レベルを維持した。重点として農村部、とりわけ中・西部地区の農村における計画出産の仕事を確実にやり遂げ、移動人口に対する計画出産の管理を強化した。人口と計画出産の目標管理責任制を構築し、充実させ、計画出産といった基本的国策を確実に実施した。

        (「人民網日本語版」より)2003年3月18日