朱鎔基総理の政府活動報告(2003)(八)


 代表のみなさん

 この五年来、わが国が勝ち取った諸方面の成果は確かに生易しいものではなかった。これらの成果は江沢民同志を中核とする第三世代の中央指導グループの正しい指導と政策決定のたまものであり、全国各民族人民が一体となって努力し、刻苦奮闘したたまものであり、海外の華僑同胞と海外の友人の支援、協力とも切り離せないものである。ここに、わたしは国務院を代表して、全国の労働者、農民、知識人、幹部、解放軍指揮員・戦闘員、警察部隊の将兵と公安幹部・警察官に対して崇高な敬意を表すものである。そして全国各民族人民、民主諸党派、各人民団体ならびにその他各界の人びとの政府に対する信頼と支持に対して、心より感謝の意を表すものである。また祖国の建設と統一に関心をよせ、それを支援してくれた香港特別行政区の同胞、澳門特別行政区の同胞と台湾同胞ならびに広範な華僑同胞、中国の現代化の建設事業に関心を寄せ、後押ししてくれているすべての各国友人に対して、心から感謝の意を表すものである。

 だが、われわれは当面わが国の経済と社会生活において、まだいくつかの際立った困難と問題が存在していることを冷静に見て取っている。それは主として次のような問題である。国内の有効需要の不足と供給構造が市場ニーズの変化に順応していないこと。農民と一部の都市部住民の所得収入の伸びが鈍化し、失業者数が増大し、一部の大衆の生活が依然としてかなり困難なものになっていること。収入の分配関係が今だに円滑に整えられるに至っていないこと。国有企業の改革の任務がなおかなり重いこと。市場経済秩序がさらなる整頓と規範化を必要としていること。労働安全に関わる重大事故が時折発生していること。一部地方の社会治安状況がよくないこと。一部地域では生態環境が悪化していること。一部の公務員が大衆から遊離し、形式主義、官僚主義の作風や虚偽・欺瞞、贅沢・浪費の行為がかなり深刻で、一部の腐敗現象が依然として際立っていること。これらの問題は、長年にわたって積み重ねられてきたものもあれば、体制の軌道転換と構造調整過程において完全には避けられない問題もあり、さらにはわれわれの仕事の中での欠点と至らなさとかかわりがあるものもある。今後引き続き措置を講じて、真剣にその解決をはかるべきである。

 二、今年度の政府活動についての提案

 中国共産党第十六回全国代表大会は今世紀の最初の二十年にわが国で小康社会を全面的に築き上げる奮闘目標を打ち出し、中国の特色のある社会主義事業の新たな局面を切り開くための方向を指し示した。二〇〇三年は中国共産党第十六回全国代表大会の精神を全面的に貫徹する最初の年であり、今年度の政府活動を立派に進めることは重要な意義をもつ。

 中国共産党中央の今年度の活動についての全般的な要請は次の通りである。

 ケ小平理論と「三つの代表」という重要な思想を指針とし、中国共産党第十六回全国人民代表大会の精神を真剣に貫徹し、発展という課題を党の執政と国家振興の第一義的な重要任務として堅持し、国内外の環境の変化によってもたらされる困難とチャレンジに積極的に対処し、内需拡大の方針を堅持し、引き続き積極的な財政政策と穏健な通貨政策を実施し、改革をさらに深化させ、対外開放レベルを全面的に引き上げ、経済構造の戦略的調整を速め、国民経済の持続的でテンポの速い、健全な発展を促し、経済発展のスピードと構造、品質、効率の相互統一を実現する。改革、発展、安定の関係を正しく処理し、民主・法制の整備、精神文明の建設と党の組織建設を着実に強化し、社会主義の物質文明、政治文明と精神文明のバランスのとれた発展を促す。こうした全般的な要求に基づき、第十期全国人民大会第一回会議では政府指導者の任期交代を合わせて考え、国務院の真剣な検討を経て、今年の政府活動について次のような建議を行う。

 (一)引き続き内需を拡大し、経済の安定と比較的速いテンポの成長を達成する

 経済発展の良好な勢いを保つことは、諸般の仕事を立派に進める上での基盤である。国内外のさまざまな状況を総合的に分析することにより、今年の経済成長率の所期目標を七%前後と定めた。この目標は必要なものであり、努力すれば達成可能である。カギとなるポイントは構造の調整と最適化を重視して、経済成長の質と効率の向上に取り組まなければならないことである。内需拡大の方針を堅持し、引き続き積極的な財政政策と穏健な通貨政策を実施し、消費需要と投資需要の経済成長に対する二重の牽引力を維持しなければならない。

 何よりもまず消費需要の拡大に力を入れること。当面の状況から見ると、投資需要の増大よりも消費需要の方がさらに重要である。引き続き都市部住民、わけても低所得層の収入を増やし、人民大衆の生活レベルの向上に努めなければならない。あらゆる方策を講じて農民の収入増に努め、農民の負担の軽減を貫く。貧困層の生産と生活問題の解決に着実に力を入れる。元の取り決めでは昨年の下半期に政府機関・事業体の職員の給与と定年引退・退職者の年金を増やす予定であったが、まず都市部における低所得層の生活難を優先的に解決し、各方面の利益関係にバランスを取ることを考慮して、この措置は繰り延べて今年実施されることになった。引き続き消費環境を改善し、消費政策を完備させ、消費分野を開拓する。

 投資のかなり速い伸びを維持すること。諸方面の要素を総合的に考慮して、今年は一四〇〇億元の長期建設国債を発行する予定である。国債資金運用の方向を調整し、それを何よりもまず継続プロジェクトと仕上げの工事に使う。いくつかの必要な新規建設プロジェクトも立件しなければならない。西部の開発、農村における生産・生活環境の改善、企業技術の改良、生態環境の建設及び科学・教育、文化、医療・衛生事業等の面でサポートの力を大きくする。社会投資と企業融資のルートを拡大し、民間の資金を国の奨励する産業と建設プロジェクトに投入するよう誘導する。低レベルの重複した建設を断固防ぎ止める。一部の地方で不動産投資の伸びがあまりにも過熱し、ハイグレードな不動産のむやみな開発という現象に対して、大いに警戒心を高め、盲目的な開発が招くリスクと損失を避けなければならない。

 引き続き金融リスクを防ぎ、それを解消するとともに、経済の発展に対する金融のサポート力を強化すること。銀行は優先的に国債プロジェクトの関連融資を提供し、売れ行きも収益もよい信用度の高い企業への融資を増大させ、農業と農村経済、中小企業とサービス業に対する融資サポートに力を入れ、消費者信用を規範化し、発展させる。金融サービスを改善し、金融の監督・管理を強める。証券、保険、通貨市場の発展を規範化する。

 財政・税務の仕事を立派に行うこと。引き続き収入増大・支出節減に努める。法に依拠して税金の徴収・管理を強化し、脱税、税金逃れ、税金ごまかしの行為を厳しく取り締り、徴収すべきものは残らず徴収する。各クラスの財政は支出構造を着実に調整し、重点支出を保証する。何よりもまず給与を期日通り全額給付することを確保し、引き続き社会保障支出を増加させ、農業、農村における義務教育と農村の医療・衛生への投入に力を入れ、中西部地区と貧困地域に対する移転支払に力を入れなければならない。

 (二)農業および農村経済の全面的な発展を促進する

 引き続き農業および農村経済を発展させることと農民の収入を増やすことを経済活動における重点の中の重点とする。都市農村における経済・社会の発展を統一的に企画し、「三農」の仕事を確実に推し進めなければならない。

 農業および農村経済の構造調整を速める。引き続き農業の地域的配置の調整を推進し、牧畜業、水産養殖業および農産物加工業に大いに取り組む。農業の産業化の経営を積極的に発展させ、農民の市場参加の組織化度合いと農業の総合的効率を引き上げる。農産物の輸出の拡大に努める。耕地を元の樹林、草地にもどすことに力を入れる。全国における草原生態保護整備計画の実施を急ぐ。農産物の品質安全システムおよび農業の社会化サービスシステムの整備を強化する。農村における土地請負政策を堅持し、充実させ、非農用地に対する管理と規制を立派に行い、耕地をやたらに占用することを厳重に取締る。引き続き農村の諸改革を深める。農村における租税・料金徴収制度改革のテストケースをめぐってその経験を総括し、政策の充実化をふまえた上で、全国的範囲において展開する。農民の負担を軽減させる諸般の政策・措置を真剣に実行する。食糧・綿花流通体制の改革をさらに深化させ、農民の利益を確実に保護する。

 農業基盤施設の整備および農業の科学技術に対する資金投入を増やす。節水灌漑、人間・家畜の飲み水、県・郷の道路、農村のエネルギー、農村における教育および医療衛生施設などの整備を速める。主要食糧生産地区に対する助成を大きくする。貧困扶助のための開発の仕事を確実に推し進める。集団的経済力を増強させる。県域経済の発展を推し進める。都市・町化の進展を加速させる。小都市・町の発展について科学的に計画し、合理的に配置すべきである。農村における余剰労働力の移転に対して協調と指導を強化し、農民が都市部で就労、就職する合法的権益を擁護する。

 (三)産業構造の調整および西部大開発を積極的に推進する

 新しいパターンの工業化の道を歩むという要請に基づいて、産業構造の調整を加速させる。経済成長を押し上げる重要な牽引の役割を果たすハイテク産業を積極的に発展させる。情報化を大いに推し進め、情報化によって工業化を牽引し、工業化プロセスを速める。一般産業の改造のために先進適用技術を幅広く採用し、設備製造業の振興に努める。鉄鋼、自動車、建材などの業種の発展計画と調整を立派に行い、盲目的な発展と無秩序な競争を防ぐ。立ち遅れた生産能力をさらに淘汰する。現代サービス業と観光業を積極的に発展させる。コミュニティーにおけるサービス業の発展を高度に重視する。

 西部大開発を着実に推し進める。重点を際立たせ、実効性に重きを置き、基礎をしっかりと打ち固めなければならない。引き続き生態環境の整備やインフラ建設を強化する。耕地の樹林への復元、天然林の保護および砂漠化防止を確実に推し進める。天然の草原において放牧を止め草地を回復するプロジェクトを実施し、関連法制の整備を強化する。重要プロジェクトの建設に力を入れ、工事の進度と品質を確保する。特色のある経済および優位性のある産業を積極的に発展させる。科学技術、教育の発展を加速する。東部、中部、西部地区の経済交流と協力を強化し、それぞれの強みを相互補完しあって、ともに発展することを促進する。すでに淘汰された、立ち遅れた工業設備、汚染源となる企業の西部への移転を防ぐ。効果的な措置を講じて東北地域などの旧工業基地が調整と改造を加速させることをサポートし、資源の採掘を主とする都市と地域がそのあとに続く産業を発展させることをサポートし、かつて革命根拠地であった地域および少数民族地域が発展を加速することをサポートする。

        (「人民網日本語版」より)2003年3月18日