朱鎔基総理の政府活動報告(2003)(九)


  (四)経済体制の改革を深化させ、対外開放を拡大する

 公有制を主体とし、多種多様な所有制の経済がともに発展を遂げるという基本的経済制度を堅持し、それをさらに充実させ、いささかもゆるぐことなく公有制経済を打ち固め、発展させ、いささかもゆるぐことなく個人経営、私営などの非公有制経済の発展を奨励し、バックアップし、導く。現代企業制度を構築するという要請に基づいて、引き続き国有企業に対し規範化した公司制への改革および株式制への改造を推し進め、監督メカニズムを充実させる。基準に適った大企業の海外での上場を積極的にサポートする。本業が明確で、独自の知的財産権と有名ブランドを有し、強力な国際競争力を持つ大会社と大手企業グループの形成を加速する。軍需工業などの困難を抱えた業種に対し企業の調整、再編および苦境脱出の仕事をより立派に行う。引き続き電力、電信・電話、民間航空などの業種における改革を完成させる。トップダウン方式で整然と国有資産管理体制の改革を行う。国内の民間資本の市場参入分野を広げ、さまざまな市場主体が公正な競争を行う環境を作り出す。さまざまな所有制の中小企業、特に科学技術型と労働集約型の企業の発展をサポートする。金融体制の改革を穏当に実施する。引き続き財政・租税、投融資体制の改革を推進する。収入分配制度の改革を深化させ、分配関係を逐次すっきりさせる。

 市場経済秩序を整頓し規範化させることは長期的な、困難に満ちた任務であり、たゆむことなく行わなければならない。表層と根本からともに解決し、根本の整備に重点を置かなければならない。引き続き特別対策に取り組み、重点を際立たせ、法に基づいて偽物・粗悪製品の製造・販売などの違法犯罪行為を締まる。制度化と法制整備を強化し、厳しく法律を執行し、市場管理を逐次法制化、規範化の軌道にのせる。市場経済秩序をゆゆしく破壊する重大案件の取り調べや処分を急ぐ。社会信用システムの確立を加速する。労働の安全を高度に重視し、監督管理を着実に強め、人民の生命、財産の安全を守る。改革、整頓を通じて、社会主義市場経済の新秩序を早急に構築する。

 「国外からの導入」と「海外進出」の相互結合を堅持し、対外開放レベルを全面的に引き上げる。世界貿易機関(WTO)加盟の移行期における諸般の対応作業を立派に行い、真剣に権利を行使し、公約したことを守り、義務を履行する。輸出奨励の諸般の政策措置の安定化を図り、市場多元化の戦略を実施し、あくまでも品質で勝負することを貫き、商品とサービス貿易を拡大する。国内の有力ブランドを育成し、サポートし、国際競争力を引き上げる。輸入構造を最適化させる。対外貿易体制の改革を深化させる。引き続き外資を積極的かつ効果的に利用し、先進技術、現代的管理ノウハウおよび専門人材の導入に重きを置き、国内企業が多国籍企業とさまざまな提携を行うようサポートする。投資環境の改善に努め、外商誘致と資金導入の仕事を規範化させる。比較優位のある各種所有制の企業が合弁、独資、合同経営などの形で多国間経営を展開することを奨励し、これをバックアップし、それによって国内の商品、特に資本財の輸出を牽引する。多国間、二国間および地域間の経済協力を積極的に推し進める。

 (五)就業の機会の増加と社会保障の仕事をよりよく推し進める

 各クラス政府は就業環境を改善することと就職口を増やすことを重要な職責としなければならない。「働く者が自主的に職業を選択し、市場が就業を調節し、政府が就業を促進する」という方針を堅持し、あらゆる方策を講じて就業および再就職の促進に取り組む。国有企業の改革にあたって、人員削減による効率の向上と再就職の促進を結びつけることを堅持しなければならない。一時帰休者・失業者の再就職を促進する諸般の政策・措置を真剣に実行する。就職のルートを広げ、労働集約型産業を積極的に発展させ、就業機会の増加とかかわりのある第三次産業、中小企業および個人経営・私営経済の重要な役割を十分に発揮させる。労働市場を規範化し、発展させる。自助努力によって就職先を見つけたり、自主的に創業することを奨励し、弾力的で多様な就業形態を積極的に提唱し普及させる。職業育成・トレーニングおよび就職のためのサービスを大いに発展させる。大学や職業専門学校の卒業生の就職、起業に対する指導とサービスの仕事を強化する。

 引き続き「二つの確保」および都市部における「最低生活保障」の仕事を強化し、「三つの保障ライン」を結びつけることを上手に行う。都市部企業の職員・労働者の基本養老保険制度と医療保険制度を充実させ、引き続き諸般の社会保険カバー率を引き上げる。国有企業の一時帰休者の基本生活保障を失業保険と一本化させる施策を穏当に推し進める。「最低生活保障」の基準および保障対象、補助レベルを合理的に定め、確実に保障すべきものはすべて保障するようにする。困難を抱えた国有企業および閉鎖・倒産した企業の職員・労働者の基本生活問題を適切に解決する。多くのルートを通じて社会保障基金を調達し、効率的に管理する。低所得層に対する救済制度を確立し、それを充実させ、都市部における特別困難な家庭の住居や子供の就学、医療および暖房など面の問題の解決を重視する。農村における新しいタイプの合作医療制度のテスト作業を立派に行う。社会福祉、社会救済、優遇・扶助・再配置および社会相互扶助などの社会保障事業を発展させる。女性、児童の合法的権益を擁護する。高齢者向けの仕事をよりよく行う。身体障害者のための事業の発展をサポートする。

 (六)科学・教育による国の振興戦略と持続可能な発展戦略を真剣に実施する

 引き続き科学技術、教育に対する資金の投入を増やす。科学と技術の中長期にわたる国の発展計画の制定と実施を急ぐ。国家創造・革新システムの整備を促す。基礎研究、ハイテク研究を確実に強化し、科学技術のイノベーション力と競争力を増強させる。「国家ハイテク研究発展計画」と「国家重点基礎研究発展計画」および重要な科学技術特別プロジェクトの実施を急ぐ。カギとなる分野といくつかの科学技術発展の最前線におけるコア技術を掌握し、数多くの独自の知的財産権を獲得することに努める。科学技術の基盤条件の整備を強化する。引き続き科学技術体制の改革を深化させ、科学技術サービス体系を充実させ、知的財産権の保護を強化し、発明や創造を奨励し、科学技術の成果の現実的生産力への転化を加速する。社会科学と自然科学を同様に重視することを堅持し、哲学、社会科学を発展、繁栄させる。教育体制の改革を深化させ、教育の革新を堅持し、資質教育を全面的に推進する。各クラス、各種教育の発展を加速し、教育の質を向上させる。農村における義務教育の県を主体とする管理体制を充実させる。引き続き学資ローンおよび国の奨学金設立の仕事を立派に行う。職業教育と育成・トレーニングを強化する。法によって民営の教育を規範化させ、積極的にサポートする。引き続き人材により国の富強をはかる戦略を実施し、さまざまな人材、特にハイレベルで至急に必要とされる人材を育成、誘致し、かれらが才能を十分に発揮し、事業をなしとげるための望ましい環境を作り出す。

 引き続き人口と計画出産の仕事をりっぱに行い、低い出産レベルを定着させる。都市農村の発展計画の仕事を強化する。さまざまな自然資源を合理的に開発し、着実に保護し、節約して使用しなければならない。海洋の開発を実施する。生態環境の保全と整備を強化し、環境保全産業の発展に大いに力を入れる。重点流域、区域、海域の汚染対策と都市環境の総合整備を強化する。防災・減災の仕事を上手に行わなければならない。

 (七)社会主義の民主法制の整備と精神文明の建設を強化する

 社会主義の民主政治を発展させ、社会主義の政治文明を築き上げる。末端における政権の建設と都市農村の末端における民主政治の建設を強化し、法によって国を治めることと徳によって国を治めることを結びつける。社会主義法制の整備を強化し、行政法規を充実させ、法によって行政のレベルを高め、全人民の法的資質を向上させる。先進的文化の前進の方向をしっかりと把握し、社会主義精神文明の建設を大いに強化する。公民のモラルづくり実施綱要を真剣に貫徹し、愛国主義教育を強化する。民族の精神を発揚し、育むこと。大衆の精神文明創りの活動を広く繰り広げる。文学・芸術、報道・出版、ラジオ・映画・テレビ等の諸事業を繁栄させることにさらに力を入れ、数多くの優れた作品を創出するよう努める。文化体制の改革を深化させ、文化事業と文化産業を積極的に発展させる。文化財と文化遺産の保護を強化する。国際文化交流を強化する。科学知識を普及し、迷信に反対し、文明的かつ健康的なライフスタイルを唱導する。ポルノ一掃や不法出版物取締りのキャンペーンをたゆむことなく繰り広げていく。インターネット・ウェブサイトの整備と管理を強化する。医療・衛生、スポーツ事業の改革と発展を積極的に推し進める。大衆の健康維持・増進の仕事の展開に力を入れ、たえず競技スポーツのレベルを高める。二〇〇八年の北京オリンピック大会と二〇一〇年の上海世界博覧会に向けての前段階の準備作業に真剣に取り組む。全力をあげて社会の安定を維持する。「刑事犯罪を厳しく取り締まる」方針を堅持し、取締りと防止を結び付け、予防を主とすることを堅持し、社会治安総合対策の諸措置を全面的に実行する。法に基づいて様々な違法犯罪行為を厳しく取り締まる。邪教組織の犯罪活動を厳重に防ぎ、処罰する。

 (八)着実に政府部門みずからの建設を強化する

 改革開放と現代化の建設を大いに推進する新たな状況下において、さらに政府部門みずからの建設、特に政府部門の作風づくりを強化することは極めて重要である。

 行政管理体制の改革を深化させる。政府と企業の分離を堅持し、簡素化、統一、効率の原則に基づき、政府の職能をよりいっそう転換させ、政府機関の部門配置を調整し、部門別の職能と職責をはっきりさせ、行政審査・許認可を減らし、政府部門の管理レベルを高め、行為が規範化され、調和のとれた運営が進められ、公正かつ透明で、廉潔、高効率の行政管理体制を形成することに努める。党の十六期二中全会において審議、採択された『行政管理体制と機構の改革の深化に関する意見』に基づいて形成された『国務院の機構改革案』を、今大会に提出して審議を求めることになっている。

 法に依拠した行政を堅持し、政務を厳粛に治める。公務員制度を充実し、資質の高い公務員陣を育て上げる。電子政務の整備を速める。引き続き腐敗反対の闘争をよりいっそう展開し、部門や業種の不正な気風の是正に力を入れ、法律に違反し規律を乱す各種案件を真剣に取り調べ、処理する。制度の整備を強化し、行政に対する監督と会計監査の監督を強化し、根源から腐敗を防ぎ止めることに努める。投書や苦情の受付の仕事を立派に行い、世論による監督と社会による監督を強化する。確実に活動の作風を転換し、形式主義や官僚主義に反対し、民衆を疲弊させ財力を無駄になるような売名行為的な「イメージづくりのためのプロジェクト」は立件せず、水増し報告やホラ吹き、強制命令等の劣悪な気風を是正し、贅沢や浪費に反対する。各クラスの政府公務員は末端に深く入り、大衆の中に深く入って大衆の声に耳を傾け、その苦しみに関心を寄せ、大衆の苦情や反響が強くかつ不満を抱いている問題を適時に解決しなければならない。新たな情勢下において、憂国意識を強め、治にありても乱を忘れることなく、謙虚かつ慎重で、おごることなく、あせることのない作風をひきつづき保たなければならず、刻苦奮闘の作風をひきつづき保たなければならない。

        (「人民網日本語版」より)2003年3月18日