【孫さんの一言】 この仕事は疲れるし汚いけれど、みんなのために頑張るよ。「為人民服務」(人民に奉仕する)、これが僕のモットーだからね。

 生まれ育った北京郊外の農村は、国家により土地が収用されたため、村人たちは市街地へ移住した。その際、国家は若者たちを就職させ、孫志広さんは公衆トイレの清掃員となった。

 この仕事を始めたばかりのころは、不満でいっぱいだった。でも、辞めることはなかった。もし辞めてしまったら、村人たちから「トイレさえ掃除できないのに何ができる? 役に立たないヤツだ」と言われてしまうからだ。また、自分はまだ若い。チャンスはいくらでもある。そんなに嘆くことはないさ、と考えたためだ。

 現在もっとも後悔していることは、子供のころ、しっかり勉強しなかったこと。そのため、競争が激しい今の社会において、プレッシャーを非常に感じるという。そこで、娘にはしっかり勉強させ、自分の好きな仕事に就いてほしいと願っている。

 趣味は釣りだ。時間があれば、勤務先の側にある後海に釣り糸をたらす。


   
[AM8:00]
清掃開始。床にモップをかけたあと、便器を磨いたり、洗面台を拭いたりと、一通り掃除を済ませる。。

  [AM9:30]
トイレの利用者に無料のちり紙をわたす。事務所には有料のティッシュやタバコなども置いてある。
 
   
[PM1:30]
昼食をとったあと、同僚たちと一緒にセンターまで給料を受け取りに行く。孫さんの月給は1600元。

  [PM3:00]
トイレの利用者が少ない時間帯は、近くの後海を10分間ぐらい散歩する。

 
   
[PM5:30]
もう一度、トイレ全体を掃除。利用者が気持ちよく使えるように、清潔なトイレを心がけている。

  [PM9:30]
検査員がやってきて衛生状況をチェック。ほとんど問題ないが、不備があると指摘される。
 
【仕事場拝見! 】


中国の公衆トイレには3つのレベルがあるが、孫さんが勤務するのは「2類」トイレ(注)。後海(観光スポット)のそばにあるため、外観は北京建築の風格を持つ。中は、男女それぞれのトイレと身障者用のトイレに分かれている。

 

清掃用具
チェック!
 
 
モップ。毎日必ず1回は床全体にモップをかけなくてはならない。毎月1本支給される



 
雑巾。手が届く範囲の壁やドアを毎日拭いている。毎月4枚支給される
 
 
 

ゴム手袋


芳香剤。便器の中に入れて、異臭を取り除く。毎月8袋支給される


トイレブラシ。毎月4本支給される



 
 
 
【プロフィール】 1973年、北京郊外の農村で生まれる。4人の姉がいる末っ子。87年、中学を卒業し、合弁の自動車組み立て工場で働く。97年、国家により、北京市西城区環境衛生局の下部組織に配属され、公衆トイレの清掃員となる。妻と小学1年生の娘との3人家族。(2006年4月号より)

 
本社:中国北京西城区車公荘大街3号
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