松下電器の北京2工場で生産停止、

中国人従業員5人がSARS感染


  松下電器産業の従業員が、新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS)に集団感染して入院し、同工場が全面的に生産を停止したのを受け、『中華工商時報』の記者は5月28日、北京にある松下電器(中国)の総経理である浅田隆司氏に電話取材を行った。

 浅田氏は流ちょうな中国語で次のように話した。「今回感染者が出たのは、カラーテレビ用ブラウン管を製造・販売する『北京・松下ディスプレイデバイス』と、隣の『北京松下照明』の2合弁会社。現在、両社とも操業停止中で、SARS感染者は依然として5人。感染が疑われていた4人の従業員は、感染していないことがわかった。感染拡大は抑制されたが、生産再開は状況を見て決定することにする。松下のモットーは『従業員の安全を第一に考えること』であり、顧客に『不利益を与えない』ことである」

 また記者は、「北京・松下ディスプレイデバイス」にも電話取材を申し込んだ。市場部の担当者によると、SARS感染者は同一生産ラインの従業員だったため、生産ラインを停止し、北京市政府の要請を受けて2週間の観察を受けているが、マネージャー、市場部、財務部などの部門は、通常業務を行っているという。また同担当者は続けて、45人の従業員が発熱で入院したとのうわさがあるが、現実には、4月中旬から続々と出た発熱者のほとんどは、風邪またはその他の病気が原因だった。隔離観察にしたのは、万一の備えであり、決してSARS感染者や疑い例患者だったわけではないと話した。

 SARSが原因で大型の合弁企業が操業を停止するのは初めてのことだ。松下電器の北京にある2工場では、続けて5人のSARS感染者、4人の疑い例患者が発見されたため、5月17日からの2週間の生産停止を決めた。2工場は、北京市北東部の首都空港高速道路沿いに隣り合っていて、それぞれ5200人、420人の従業員が働いている。5人のSARS感染者は、いずれも19歳から24歳までの男性で、それぞれの工場の従業員宿舎に生活しているという。そのうち、「北京・松下ディスプレイデバイス」の4人は5月17日(2名)と5月18日(2名)に感染が判明し、「北京松下照明」の1人は5月17日に判明した。
 
 共産党北京市委員会の劉淇書記と北京市の王岐山代理市長は、事態を重く受け止め、関係部門に適切な措置を取り、拡大を抑制するよう指示を出した。関係部門では、すでに両工場の敷地に全面消毒を行った。また、SARS感染者及び疑い例患者に対して宿舎及び工場医務室での隔離管理を実施し、感染者と密接に接触したとされる人たちに対してそれぞれ異なる所での集中隔離を行い、その人たちに接触した人に対しては自宅での医学観察を実施している。同時に、伝染病や発病原因の調査を行い、SARSのさらなる蔓延を防ぐ対策を行っている。

 北京の工場でSARS感染者が見つかった後、松下電器グループは5月20日、「緊急対策本部」を設置した。本部長に就いた海外業務の責任者である少徳敬雄氏は、今後、中国以外の生産基地を選ぶ必要も出てくるが、松下の中国戦略及び中国の工場を全世界の生産基地とするという位置づけに変わりはないと述べた。現在、同グループが中国に設立した生産、販売、研究開発機構は50にのぼる。2002年の中国市場での販売額は約300億元で、2005年の中国市場での販売目標は700億元である。(『中華工商時報』より抜粋)

          『人民中国』インターネット版 2003/5/30