SARSで車が飛ぶように売れた

              張春侠


 長年北京で商売をやってきた沈さんは、ずっと前からマイカーを買いたいと思っていたが、あれこれ見比べてみたものの、気に入る車は見つからなかった。しかし今回、北京でSARSが猛威を振るい、人々が家にこもっていたこの時期に、沈さんは逆に車の販売市場に出かけて行って、上海GM社の「SAIL」を一台買った。


 「もともと私は新型の車が出るまで、もう少し待つつもりだったが、いまは、すぐに買うときだと思った。それはまさに通勤の便利のためだ。SARSが流行っているので、マイカーがあれば少しは安心できるからだ」と沈さんは言うのだった。


 実は、沈さんと同じの心理状態にある人は少なくない。この4月以来、SARSが原因で、車の販売市場である「北方汽車交易市場」にやって来る客はかなり減った。しかし車の総売上げ台数は、このために減少することはなかった。「北方汽車交易市場」の李曼麗副社長は「毎日、車を見に来る人は確かに以前よりかなり減ったが、売れた車はかえって、少なくとも20%増加した。毎日、111台も売れているのです」と言った。


 いつもなら、車を買う時には必ず五、六人の親族や親友が「参謀役」としていっしょにやってくる。かりに一日に20台売れたとしたら、展示場はきっと人でいっぱいになる。でもいまは、一人か二人でやってくるだけだ。見に来るだけで買わない人はほとんどいない。


 そのうえ以前に比べ、車の買い方もずいぶん変わった。以前、人々は展示場に車を見に来て、価格を聞くだけの人がほとんどで、一回で車を買って帰る人は珍しかった。しかしいまは違う。車を買いたい客は、前もって買いたい車種や型を決めていて、電話で価格や現物があるかどうかを確認してから展示場にやって来て、直接、金を払って車を受けとる。4月の中旬以来、「北方汽車交易市場」の成約率は80%以上にも達した。


 不完全な統計だが、4月に「北方汽車市場」で売られた車は3621台で、今年最高の売り上げとなった。トップテンにある車種のうちに、11万元以下の車が40%以上のシェアを占めた。これはマイカーの購入が主流になったことを示している。しかも5月に入ってから、こうした傾向がいっそうはっきりした。5月の6、7、8日のわずかの三日間で、3003台の乗用車が売れた。専門家の分析によると、車市場のこういう爆発的な売れ行きは、さらに一カ月ぐらい続くだろうという。


 マイカー購入の急増に対応し、また、SARSの蔓延を防ぐため、関係部門は機を逸することなく、新車登録の手続きを簡素化する措置をとった。北京市公安局は5月6日、登録を申請した新車に仮ナンバーを発給すると発表した。その手続きは10分以内で済み、以前より半分以上短くなった。


 「これは素晴らしい措置だ。有効にSARSを予防できるだけではなく、車を使って仕事をする上で、時間に遅れることもなくなる」と、仮ナンバーをもらったばかりの李さんは言った。
この措置が発表されたその日だけで、729台の新車が仮ナンバーをもらったという。

                     『人民中国』インターネット版 2003年5月23日