専門家がSARSの誤解を指摘 北京


 最近世界およそ30カ国・地域で問題となっている重症急性呼吸器症候群(SARS)に関する意見交換が23日に北京で行われ、海峡両岸の医学関係者が出席した。

 中国工程院の院士(アカデミー会員)で広州市呼吸疾病研究所の鐘南山所長は、長い間第一線で治療に当たった経験を基に、これまでに把握した症例から、SARSの予防・治療状況についての詳細を説明。特にSARSについての誤解について次の3点を指摘した。

  (1)SARSは簡単に感染する病気ではない
 SARSの病原体は新種のコロナウイルスで、人間には現在これに対する免疫力がないため、各年齢層で感染が可能。これはこのウイルスの感染力が比較的強いことを示している。しかし、現在把握している状況によると、医療スタッフと患者の家族が最も感染しやすいグループで、主に近い距離の接触で伝染していることが分かる。このため、近距離または直接患者に接触しない限り、普通の人がSARSに感染する確率は比較的低い。

 また潜伏期間の感染率は低く、発病後に高くなる。そのため、潜伏期の患者と発病後の患者は区別する必要がある。

 (2)SARSの治療法は皆無ではない

 科学者は現在もSARSの病因学、感染経路、発病学の研究を続けている。多くの病気では、病原体が発見される以前に、臨床で蓄積された経験に基づく維持的、実験的な治療が必要となる。病原体が新種のウイルスであるため、一部の薬物によるSARSの予防・治療方法は効果的な手段とは言えないが、完全に成果がないわけではなく、一部の方法はすでに有効性が証明されている。高熱、白血球の減少、胸部のエックス線写真によってSARS患者と診断された場合、皮質ホルモンの使用で比較的よい治療効果を挙げることができる。

 科学者がこのほどコロナウイルスの遺伝子配列の解読に成功しており、これによってSARSの効果的な治療と治療薬研究の基盤が整ったため、治療薬研究の進展が期待される。

 (3)SARSは感染拡大により感染力を増すわけではない SARSの流行と臨床の特徴はほぼ把握されており、感染の発見、診断、隔離、治療を早期に行えば、ほとんどの患者に回復の見込みがある。過去数カ月の感染状況によると、SARSのウイルスは変異を続けているが、その感染力は次第に弱まっている。第2・第3感染者のウイルスの感染力は低下しており、最終的に感染は効果的に抑制されると考えられる。

                  ( 「人民網日本語版」より)2003年4月28日