必需品となったパソコン

史秀英さん(左)にとってパソコンは、生活や仕事の上での親密なパートナー。年をとっても、学習熱は依然と高いままで、ここ数年で5台のパソコンを購入した

   史秀英さん(55歳)は最近、6000元余りでノートパソコンを購入した。史さんは定年退職後、公民教育とコミュニティーサービスを行うボランティア機関に所属している。1週間に2〜3日、西郊外の自宅から市の中心部にあるボランティア機関へ赴き、日常のコンサルティングサービスに参加したり、仲間と仕事の計画や手配について話し合ったりする。ノートパソコンは、仕事の便を図るために購入したのだ。

   史さんにとって、このノートパソコンはすでに5台目だ。1985年に1台目を購入して以来、パソコンはますます重要なものとなっている。文字入力、娯楽、連絡、仕事とすべてがパソコンで行える。自宅にテレビやAV機器がなくても構わないが、パソコンは欠かせない。

自宅でブロードバンドの映像ネットワークを使って、ドイツで留学している娘とチャットをする史さん

   史さんは退職前、ある研究院でドイツ語の翻訳をしていた。外国語に精通していたせいか、画面が白黒で言語がすべて外国語だった初期のパソコンに対しても、同年齢の人たちとは違ってしり込みすることなく、早くマスターしたいと思った。その原因について、「私は翻訳業に従事していましたが、タイプライターを使っていたころは、ほんのわずかなミスでも、もう一度打ち直さなくてはなりませんでした。毎回、このような無味乾燥な繰り返し作業に多くの時間を費やしていたのです。それに比べ、パソコンにはとても便利な修正機能があります。そこで、これを学ぼうと思ったのです」と語る。

史秀英さんが6000元余りで購入したノートパソコンは、外出先での仕事を便利にしてくれた

   小さなミス修正機能のために、史さんは広大なパソコンの世界へと入っていった。現在、もっともよく利用しているパソコンの機能は、インターネットだ。2000年に1人娘がドイツに留学してからは、インターネットが娘と連絡をとるための重要なツールとなった。自宅のパソコンに映像機能を取り付けると、異郷で生活する娘の姿を目の前で見られるようになった。「娘は、ただ家に戻ってこないだけで、北京の学校に通っているような感覚です。これまでの心配もなくなりました」

   娘との連絡のために、夫の王さんにもインターネットを学ぶよう、強いた。退職前、管理の仕事をしていた王さんは、パソコンを覚えたことがなかった。この世代の多くの人々と同様に、パソコンを敬遠していたのだ。

   今では、自宅のパソコンを2人で順番に使っている。

広がる交際範囲

北京にある「520ネットカフェ」で、仕事の合間にリラックスする人々

   王さんはパソコンでチャットを楽しむが、史さんは「直接会っておしゃべりするほうがいい」とあまり好まない。

   人によって興味や要求が異なるのは当然のことだ。オンライン上で知人や見知らぬ人とおしゃべりし、寂しさを紛らわす人もいる。しかし大部分の人は、インターネットを手軽な連絡ツールとして利用している。特に若者は、仕事が忙しくて友人たちと集まる機会が少ないので、チャットによって仲間との繋がりを保っている。

  若者たちはパソコンを起動させるとまず、広く利用されているメッセンジャーソフト(オンライン上でリアルタイムにコミュニケーションができる)の「QQ」や「MSNメッセンジャー」を確認する。もし、メンバーのアイコンが光っていたら、その友人はオンライン中であるしるしなので、仕事をしながら、時々メッセージをやりとりする。パソコンの前にいるのは自分1人だが、気持ちは友人たちと一緒だ。

   政府機関に勤める中年の李魯生さんは、早くからインターネットに親しんできたが、チャットはしたことがない。友人との交流方法は、やはり電話や会食だ。見知らぬ人とおしゃべりをすることには慣れていない。

ネットカフェのオンラインゲームは多くの青少年を引き付けている

  ある時、インターネットで偶然、フォルクスワーゲンの「車友会」(同じブランドの車を持つ人々が集まるクラブ)のフォーラムを見つけた。愛車への関心から、その内容を読んでみたが、すべて彼が興味を持っている車の話題だった。そこで、時間があるとそのフォーラムに参加し、他の人の書き込みを読んだり、自分の意見を書き込んだり、車の手入れの要点や補修方法、運転のテクニックなどを質問したりするようになった。李さんはこのフォーラムに参加して車に関する多くの知識を学んだ。また、他の参加者が教えてくれた車の手入れ方法も試してみたが、非常に効果的だったという。

   李さんは見知らぬ人との交流を、フォーラム上で会話するだけに止めている。しかし、「車友会」の若い会員たちの交流は、オンラインからオフラインへと発展している。彼らは休日に集ってドライブに出掛けたり、貧困農村の子どもたちの学費を援助する活動を行っている。こうした活動の内容や写真がフォーラム上で発表されると、李さんもうらやましく感じる。それでもまだ、このようなグループ活動に参加しようとは思い切れない。「彼らはみな若者で、私のような年齢の人がいるかどうか・・・・・・」と考えてしまうからだ。

   インターネット上のフォーラムはとても多く、その内容も多種多様だ。専門性の強いフォーラムだけでなく、料理、育児、ダイエット、美容、病気の治療、養生など日常的なテーマが数多くある。興味さえあれば、どのフォーラムにも参加できる。これによって交際範囲が広がり、知識も手軽に手に入れることができる。

インターネットの利益と弊害

山東省のデジタル生活展示交易会で、オンラインショップの技術スタッフがオンラインショッピングの基本知識を紹介する

  史秀英さんと夫の共通の趣味は、自分の文章をホームページ上に掲載することだ。文章の内容は、生活の中で見聞した興味深いことや昔の思い出。文章を書く中で、わからないことや知らない言葉に出会ったら、真っ先にインターネットで調べる。パソコンが便利な辞書または書籍となっているのだ。書けば書くほど文章が上手くなるだけでなく、知識も広がり、再学習のプロセスとなっている。

   夫妻は今、インターネット上で発表した文章を集め、プリントアウトして冊子を作ろうとしている。これは老後生活の成果の一つとして、達成感を得られるだろう。

   パソコンやインターネットの学習機能は、さまざまな年齢層の人々に有益だ。特に学校に通う子どもたちにとって、パソコンはなくてはならない学習道具となっている。

   大都市ではインターネット学校が十分に普及しているので、子どもたちは余暇に学校の勉強を補うため、そこで学ぶ。有名な学校が運営するインターネット学校は、高レベルな練習問題が用意されているだけでなく、カリスマ講師に教えてもらうことができるので、卒業間近の子どもたちにとって大きな助けとなる。

 子どもたちはインターネットに対して、自然と親近感を抱いている。インターネット学校での勉強以外にも、オンラインゲームで楽しみ、インターネット語をたくさん創り出している。ネット語には、よく使う言葉を簡略化または変化させたもの――「這様子→醤紫」(このようなの意)、英語の音訳の簡略化――「FANS→粉絲」(ファンの意)、交流を便利にするために生み出されたもの――「頂」(支持の意)などがある。

自宅でオンライン株取引をする王暁梅さん(写真奥)夫妻

   しかし、こうしたネット語は簡単に覚えられるので、正統な言葉の習慣を覆してしまっている。作文の中でネット語を使う子どももいる。一部の教育者はこれを心配し、基礎教育段階の子どもたちがネット語を使用することを禁止すべきだと考えている。しかし、ネット時代の今日、これを禁止することは不可能だろうと思っている人は少なくない。

   インターネットで、子どもたちがもっとも夢中になっているのはゲームだ。ゲームは子どもたちの反応能力を鍛え、想像力をかき立てるなど、長所もある。しかし、一部の子どもたちはインターネットの世界に深くはまり込んでしまい、ゲームやチャットがやめられず、学業をおろそかにしている。自宅でインターネットを制限されると、街のネットカフェへ行き、何日も家へ帰らない者さえいる。

順番を待つ客に、無料でインターネットサービスを提供する美容院もある

   この問題は、社会的にも注目されている。政府の関連部門は、未成年者がネットカフェに出入りするのを禁止する法規を定め、利益ばかりを考え道義を忘れているネットカフェを厳しく取り締まっている。

   過度にインターネットに夢中になるのは、一種の病的状態だ。つまりインターネット中毒である。北京の301病院には最近、ネット中毒を治療する病室が設置された。夏休みは、診察に訪れた子どもたちでいっぱいになった。

 中国中央電視台 (CCTV)の報道によると、中国には現在、250万人のネット中毒者がいる。最年少は12歳、最年長は72歳だ。

実用的な利用法

重慶市雲陽県のUターン農民は、労務輸出訓練基地でパソコンの入力方法を学んでいる

  李魯生さんは今年の春節(旧正月)休み期間、一家で山東省の実家までドライブに出かけようと計画した。

   自分で車を運転していくには、道を知らなくてはならない。ここ数年帰省していなかった李さんは、そのことがとても心配だった。そこでまず、インターネットで運転ルートを調べた。ネット上の地図には、県級の道路や道中の村・鎮まで詳しく記されている。李さんは地図をプリントアウトし、その地図を見ながら運転したため、ほとんど道に迷うことなく、順調に故郷の村に到着した。

   李さんのように、インターネットのサービスを利用している人は少なくない。特に旅行に出かけるため、各観光地の特徴や気候、参観料などを調べたり、ホテルを探して予約したり、フライトチケットや列車の切符を予約したりする人が多い。旅行社にツアールートや費用などを直接問い合わせることもできる。

北京で「2005年百万家庭インターネット・デジタル生活技能大会」が開催された。写真は、携帯のショートメールの技術を競う選手たち

  このような機能に合わせてここ数年、インターネット銀行が大きく発展してきた。サービス項目がどんどん増え、整えられて、各種振替業務のほか、携帯電話の通信料、電話代、ガス代など一部の生活費用を支払うこともできるようになっている。

   これと同時に、手軽な電子ビジネスも人々の生活の中に入り込んでいる。数年前、オンラインショッピングが始まったばかりの頃は、オンラインショップの信用性や商品の品質、価格など、すべてにおいて懸念を示す人が多かった。しかし、外出せずに欲しいものを手に入れることができるということは、気持ち良いことで、ここ最近、日増しに盛んになっている。今では、インターネットユーザーの半分近くが、これを経験しているという。

   オンラインショッピングの商品の多くは、書籍、CD、コンピューターのソフトウェア、日用品(化粧品、小物、健康用品など)だ。比較的低価格で、簡単に配達できるから、オンラインショッピングの初心者が手始めに購入する品もこれらだ。

浙江省寧波市の第4回パソコン博覧会では、さまざまなイベントが開催され、観客が次々と訪れてパソコンを購入していった

   大型のオンラインショップの経営は日に日に規範化されている。もしオンライン上で店を開こうと思ったら、身分証明書のような正規の証明書で登録しなくてはならない。毎回取引が終わると、購入者はその商店の商品やサービス、信用について評価する。

   規範化された管理が進むにつれ、オンラインショッピングに対する安心感は少しずつ高まっている。そして、さらに多くの日用品や携帯電話、デジタルカメラ、家電などが売買されるようになった。もちろん、ネット上の一部の商品は、一般の商店よりも安いということが人々の心を動かしていることは間違いないだろう。

 市内間の取引だったら、代金の支払いは着払いでも先払いでもいいし、直接対面して取引を行うこともできる。市内間でなくとも、着払いや先払いの方法を選べる。どの方法をとるかは、購入者、サイト、ショップの間の信用度による。(2005年10月号より)



 ▽ 中国社会科学院の社会発展研究センターが今年初め、北京、上海、広州、成都、長沙の5都市に対して行った調査によると、インターネットユーザーの1日あたりのネット利用時間は平均2.73時間、男性の利用時間は女性に比べかなり長い。

 ▽ インターネットユーザーは、インターネットを利用しない人よりもネット上の内容を信じやすいが、内容のほとんどを信じるユーザーはたったの48%。

 ▽ インターネットに接続して何をするか? 「ニュースの閲覧」が65.9%で、「ゲームで遊ぶ」「音楽をダウンロード」「調べ物」「チャット」と続く。中国のユーザーがよく利用するポータルサイトは「新浪(SINA)」「捜狐(SOHU)」「網易(NETEASE)」「百度(BAIDU)」「雅虎(YAHOO)」。基本的にすべて中国語のサイト。 

 ▽ 中国情報産業部の予想によると、中国のインターネット人口は今後も増え続け、今年は1億2000万人に達する。

中関村にあるパソコン市場は北京市で最も人気がある電子商品市場



 
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