ある日、バスの窓からこの焼きいも売りのおじさんを見つけた。
子どもを背負ってゆったりと自転車をこぐ姿がほほ笑ましくて、次の停留所でバスを降りると、私は街の中を走っておじさんを追いかけていた。
彼に追いついて、そして30メートルほど先に行ったところで、カメラを向けた。自転車と競争していた私の姿がおかしかったからか、おじさんは期待以上の笑顔で応えてくれた。
北京で写真を撮っていて感じることがある。中国の人は、日本人よりずっと無邪気に見知らぬ人に接する人たちだと思う。道でも、汽車の中でもどこででも、私はこれまでにたくさんの親切を中国の人たちからもらっている。小さな日々のあたたかさに、私は北京でしばしば出会う。
(2003年2月号より)
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note
冬の風物詩だった焼きいも売りも、環境や美観を守るため、北京の街から姿を消しつつある。1個約2元(250g)。一般的に露天商の平均月収は日本円で1万円弱といわれている。
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profile
佐渡多真子(Tamako Sado )
1990年、フリーカメラマンとして独立し、日本の雑誌などで活躍。95〜97年、北京大学留学。その後、北京を拠点とした撮影活動を続けている。写真集に、『幸福(シンフー)?』(集英社)、『ニーハオ!ふたごのパンダ』(ポプラ社)がある。 |
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