Sketch of BEIJING

 
 


氷湖

写真・文  佐渡多真子

 北京に来て、初めて凍った湖の上に立ったとき、「氷が割れたらどうしよう」と、ドキドキしながら水の上にいるという不思議な感覚を楽しんだ。

 北京の冬は寒い。雪こそ多くないが、乾燥した気候の中、マイナス15度まで気温が下がると、心の芯までジーンと冷え込むつらい季節となる。

 けれども、そんな寒さに凍った湖は、子供たちの格好の遊び場となり、椅子型のそりをこいで、何時間も疲れを知らずに遊ぶ子がいる。

 「寒くないの?」と聞くと、白い息を吐きながら「不冷!(寒くなんかないよ)」と元気な答えが返ってきた。

 楽しいときって、どうして寒さを感じなくなるのだろう。温暖化や近代化で、この湖があと何年凍り続けるのかわからない。けれども、ずっとずっとこの湖で、子どもたちの楽しそうな笑顔を見ていたい。(写真/文 佐渡多真子)2003年12月号より

  note
 東郊 (Dong jiao) 市場の売り子は、ほとんどが河北省、河南省などからの出稼ぎ労働者と、北京近郊の農民。
 
  profile
佐渡多真子(Tamako Sado )
 1990年、フリーカメラマンとして独立し、日本の雑誌などで活躍。95〜97年、北京大学留学。その後、北京を拠点とした撮影活動を続けている。写真集に、『幸福(シンフー)?』(集英社)、『ニーハオ!ふたごのパンダ』(ポプラ社)がある。