変わりゆく消費者意識 

文・ 鍾振奮 写真・カク軍 魯忠民

 

 
 

 市場経済の道を歩み始めて以来、次第に豊かな生活を送るようになった中国の庶民は、消費を追求すると共に消費者としての意識を高めるようになった。同時に世界各国で、消費者の権利を損なっている数多くの問題が中国にも出現するようになった。消費者保護を強化するため、1984年12月26日、中国消費者協会が設立された。これは組織的な中国消費者運動の始まりだった。

 

特 集1
  消費者のためにさらなる努力を

    董京生・中国消費者協会副秘書長は語る

 中国では春節(旧正月)の大晦日の前になると、よその地で仕事や勉強をしている多くの人々が故郷に帰る。この期間は、全国にわたってのべ一億人以上の乗客が鉄道を利用することになり、いわゆる「春節ラッシュ」が始まる。

1997年の「3・15」活動の一場面

 今年、まさにその切符を買おうとしていた人々にショックを与えたのは、鉄道部が春節ラッシュ期間(1月9日〜2月17日)の運賃を30%値上げすると宣言したことだった。これは大多数の懐にそれほど余裕がない庶民にとって、春節のお祭り気分に冷水を浴びせられたようなものだった。「どんなに高くても家には帰らないと」「値上がりはしたが、その分サービスはよくなるさ」。多くの人々は自らをこうして慰めるしかなかった。


各マスコミを通して、中国消
費者協会は宣伝活動を行う
 ただし、乗客たちは、自分の思い違いに早々に気がついた。車内は混雑を極め、掃除が行き届いていないため悪臭が漂っていた。最低限、備えてあるべきお湯さえ飲めず、服務員の影さえ見えない路線もあった。ふだんより多くの料金を払い、より冷遇された乗客たちは次々と中国消費者協会に手紙や電話でその怒りを訴えた。

 消費者の正当な権利が損なわれた時、多くの人々が思い浮かべるようになっているこの中国消費者協会とは、どのような性質の組織で、消費者の権利を守るためにどのような作用を及ぼし、実績をあげているのだろう?

 記者は、北京の西城区、展覧路大街の西側にある中国消費者協会を訪れた。緑に包まれた四階建ての赤レンガの建物は、人目を引くような派手さはないが、中国消費者保護の地であり、権利保護に関する重大事件が起きるたび、中国の有力媒体記者が取材に訪れる場となっている。董京生・中国消費者協会副秘書長が本誌の取材に答えてくれた。

         半官半民の組織

 記者 董さん、本日はよろしくお願いします。まず最初に中国消費者協会はどのような社会的組織であり、どのような役割を果たしているのでしょうか。

 董 中国消費者協会は法によって誕生したものであり、商品とサービスに関して社会的監督を行う、消費者の合法的権利を保護する全国的社会団体です。協会の主旨は、可能な限り消費者の権利を守ることであり、また消費者の合理的、科学的消費の在り方を啓蒙し、市場経済の健全な発展を促進するものです。

 中国消費者協会は、国家工商行政管理局に所属する民間組織であり、中央政府、全国人民代表大会、全国政治協商会議、国務院の各関係部門、全国総工会(労働組合)、共産主義青年団中央委員会、全国婦女連合会などの社会団体、有力マスコミ、専門家、学者、消費者代表など各方面の人材からなる指導部を組織します。理事は、政府関係部門、民間団体、マスコミ、各省、自治区、直轄市および関係方面の消費者代表の協議・推薦によって決定されます。日常業務は、常設の事務機構によって担われ、秘書長と副秘書長が専任で管理にあたり、会長に対して責任を担います。当協会の運営は、政府の資金と民間からの助成金の両方によってまかなわれています。


日本に長く留学し、消費者の権
益問題について専門に研究した
周暁紅博士は、帰国後協会に職
を求めた。副秘書長の董京生さ
んと相談し、ここで自分の力を
発揮したいと願っている

『中国消費者』誌は、中国消
費者協会の代弁者であり、中
国唯一の企業からの広告なし
で、しかも広範にわたる読者
を獲得しているメディアだ

 1984年以来、全国には県クラスの消費者協会(委員会)が3141設立され、そのうち31の省、自治区、直轄市ではすべて協会が誕生しています。16年来、中国消費者協会と各地の協会は、消費者からの訴えを540万5630件受理し、解決率は96・9%に達し、消費者のために経済的損失を30・6億元取り戻しています。

 記者 解決率の高さは、協会の実力を示していますね。

 董 『中華人民共和国消費者権益保護法』(略称は消法)によれば、中国消費者協会とその指導する各クラスの協会には以下七項目の職能があります。第一、消費者に情報を提供し、相談に応じること。第二、関係行政部門の商品およびサービスに対する監督調査に参加すること。第三、消費者の合法的権利問題に対して、関係行政機関に報告し、調査を行い、提案すること。第四、消費者のクレームを受理し、クレーム調査を行い、調停すること。第五、クレーム事項が商品やサービスの質の問題に関わる場合、査定部門に査定をさせ、結果を明らかにすること。第六、消費者の権利を損なう問題に関し、消費者の訴訟を支持すること。第七、消費者の合法的権利を損なう行為について、メディアを通し、公開し、批判すること。

 例えば、1994年創刊の専門季刊誌『中国消費者』では、比較実験や、権威検証を初めて公開したのを始め、専門事項調査および消費者への警告などの専門欄を設け、消費者が出した具体的な質問に対して答えています。報道の客観性と公正のために、雑誌には広告を掲載していません。そして、消費者の身体および財産の安全を損なう重大な欠陥、消費の落とし穴については1997年以来、中国消費者協会は消費警告制度を設け、消費者に対して注意を促し、危険な消費方式による被害から事前に消費者を守る役割を果たしています。

 1994年1月18日、ハルビン市消費者協会はハルビン精品商厦が偽物の毛皮コートを販売したというクレームを受けました。関係部門の査定を経て、消費者協会は『消法』第四九条に基づき調停を行いました。その結果、精品商厦は、代金の4200元を全額返したばかりでなく、賠償金としてさらに4200元を支払いました。これは消費者協会を通し代金の倍を賠償した最初の例となりました。

        知名度抜群の法律

 記者 中国の消費者の力強い味方として、『消法』は起草から施行まで8年がかかりましたが、その間約20回の改正が行われました。この法律は、消費者のどんな権利を規定したのでしょうか。また消費者には権利を守るためのどのような手段があるのでしょうか。

協会には専門の場所を設
け、毎日消費者からのク
レームを受け付ける
  

 董 1993年10月30日、第八期全国人民代表大会第四回会議では満場一致で『中華人民共和国消費者権益保護法』を可決し、1994年1月1日から施行しています。『消法』の制定と公布は、中国の消費者保護の歴史にとって重要な道しるべといえます。これは中国の消費者保護がすでに法制化の軌道にのったこと、つまり法によって消費者が保護される新段階に到達したことを示しています。広範囲にわたる教育と宣伝を経て、『消法』は、庶民の間で最もよく知られた法律となっています。

 また、ほかの法律と比べ、『消法』は、先進的な面があげられます。この法は主に経営者に規範性を持ち、市場において弱者である消費者に有利になっています。特にその第四九条の「偽物を買った場合の懲罰性賠償」の項の主旨は、利益を守る仕組みを通して、多くの消費者が積極的に自分の権利を守り、進んで違法行為を摘発するよう働きかけています。これはわが国の民法上の特筆される前進であり、消費者の権利が国家によって守られることを体現したもので、『消法』の重要な柱となっています。わが国の消費者保護における立法の実践に基づき、さらに国外のこうした方面の規定を参照し、『消法』は以下九項目の権利を定めています。安全権、知情権、自主選択権、公平交易権、求償権、結社権、関係知識の獲得権、人格尊重および民族風俗習慣の尊重権、監督権です。

 


北京市の工商行政管理局で
は消費者のクレーム受理の
ために「12315」のホット
ラインを設けている
 各地の消費者協会はさらに『消法』実施にあたって、いくつかの細則を設けています。たとえば浙江省では、患者が病院で診療を受けるにあたっての費用の支払いについての規定があり、また分譲住宅について比較的明確な規則が定められています。また1999年8月30日、広東省は『消法実施弁法』を採択し、そのなかで精神的損害についての賠償を定めています。これはわが国における精神的損害の賠償についての最初の法規で、また同時にこれは、医療衛生サービス業を調整の範囲に入れるとしており、例証責任について消費者に有利な規定を設け、消費者の知情権を細分化しています。

 消費者の権利が侵害されたとき、『消法』を権利保護の武器とするほか、以下の五つの手段をとることができます。商店との和解、消費者協会へのクレーム、関係行政部門へのクレーム、仲裁をへて協議にいたること、そして法律に訴えることです。

 今年の春節ラッシュ期間に鉄道運賃が30%値上がりしたのち、1月18日、河北省石家荘の弁護士、喬占祥さんは、法律的角度から乗客のために公正さを求め立ち上がりました。彼は1999年10月に施行された『行政再議法』に基づき、鉄道部に行政再議申請をし、春節ラッシュの運賃値上げについては公聴会で意見を求めていないため、値上げは違法行為であり通知を取り消すよう求めました。その矛先は、値上げを批准した国家発展計画委員会にまで及んでいて、中国の庶民はいまや政府部門を訴えるまでになったのです! この行為は中国の消費者意識の高まりをまさに表しているといえるでしょう。

      日本式サービスの問題

 記者 1999年春、アメリカ東芝のノートパソコンのユーザーが、アメリカのテキサス州の裁判所に集団訴訟を起こし、東芝のノートパソコンの内部に設置されたフロッピーディスクコントローラー(FDC)に欠陥があるとしました。東芝はこれに対して十億五千万ドルの和解金を払いましたが、中国の20万の東芝パソコンユーザーは、中国とアメリカの法律の違いによって賠償を得ることができなかった。一部の消費者は東芝の中国の消費者に対する蔑視だとしています。


三菱自動車からの輸入車、パジェロが重大な技術的欠陥が発見された問題について、『中国消費者』誌の記者は、北京事務所の責任者を取材した

軒を連ねるノートパソコン専門店

 2月9日、三菱自動車製造の四輪駆動車、パジェロV31、V33の安全に関わる品質上の重大な欠陥があるとして、国家出入境検験検疫局は緊急通達を出し、その安全品質許可証を取り消し、輸入を中止しました。安全を確保するため、すべての三菱バジェロV31、V33は、三菱自動車と契約を結ぶアフターサービスステーションにいき、ブレーキオイル管をできるだけ早く交換するべきとされ、補修を経ず、ブレーキオイル管を取り替えていないバジェロについては使用が暫定的に禁止されました。一時期、中国の消費者の間にはサービスに関する疑惑が生まれ、民族蔑視ではないかと論議を呼びました。消費者協会はこのような事件をどう見ていますか? 外国企業と中国の消費者とのトラブルをめぐって、消費者協会はどのように力を発揮していますか。

 董 消費者協会は外国企業を経営者とみなしています。そして『消法』の消費者の適用範囲を観光旅行に訪れた外国人にも及ぶようにする予定です。消費者と外国企業がトラブルとなった場合、一般的には消費者協会が調停を行い、すでに起訴となった案件については、協会は消費者の法に基づく権利を保護する立場にたち、指導と補助を行います。総合的にみると、外国企業は協力的であり、予定に従って物事を処理していきます。いくつかの外国企業はみずからすすんで私たちと連絡をとり、私たちに対して商品展示会に参加を要請し、性能について理解するよう働きかけてきます。松下がかつて中国で生産したことのない充電式単三、単五電池にニセモノが出現した時には、協会に通報し、私たちは『中国消費者』誌上で注意を呼びかけました。このような保護は消費者と企業の双方にメリットがあります。

 東芝ノートパソコンの事件は、客観的にこの問題そのものを見るべきで、簡単にこれを民族蔑視ということはできません。東芝はアメリカ人には賠償するが、中国人には賠償がない、という人がいますが、事実上は日本人にも賠償はないのですから、民族蔑視の問題ではないことが見てとれます。中国市場の東芝ノートパソコンのトラブルは、中国の法律に基づいて解決すべきで、中国の法律は「損害賠償」のみを規定しています。ゆえに中国のユーザーは、損害を証明することができなければ、賠償を獲得することは非常に難しいのです。私たちは中国の消費者が理性と法律に基づいて権利を保護し、ただ感情のみに振り回されないことを希望しています。  三菱の事件発生後は、協会は三菱の北京事務所と連絡をとり、三菱本部の経営陣も私たちと接触をもちました。国家出入境検験検疫局は三菱と話し合いを進めました。相手方は最初、このような状況は中国の道路の状況が良くないために引き起こされるものであるとしました。私たちは、いわゆる四輪駆動は、道路の状況が悪いところのために設計されたものであり、道程がみな高速道路なら四輪駆動を購入する必要はない、それにこの車は特に中国のために設計されたものではないか、と反駁しました。

 三菱はまた中国にはリコール制度がないといいましたが、私たちは製品に欠陥があれば、無料で補修し、製品を取り替え、傷害を受けたユーザーに対しては賠償をするべきであるとしました。三菱側はまた正規の貿易ルートで中国に入った車両についてはブレーキオイル管を交換するとしたため、私たちは再度反駁し、三菱は安全の質において著しく欠陥のある製品を生産したのであり、補修と交換を行う責任と義務があり、当然人身、財産において損害をもたらした三菱には逃れられない責任がある、と主張しました。

 


聯想ブランドのコンピューター
は消費者協会が発行する「三・
一五」のマークを貼っている
 困難きわまる話し合いを経て、三菱自動車北京事務所は私たちの意見に同意し、中国国内の三菱バジェロV31、V33に対し、無料補修とブレーキオイル管の無料交換を行い、四十四カ所の特別契約アフターサービスステーションを提供することになりました。

 中国消費者協会は三菱のこの処置に対し、賛成しましたが、まだまだ不足しているとしました。三菱はパジェロV31、V33について、補修するだけでなく、消費者が受けた損失について賠償し、設計の欠陥によってユーザーが支払った検査費用、輸送費用、補修にいたるまでの移動費用、欠勤による損失の賠償、またこの車の欠陥によって別の車を使ったためにかかった費用についてすべて賠償するべきです。三菱自動車の欠陥による人身傷害、死亡事故に対し、製造元は賠償するべきで、死亡賠償、親族賠償、医療や欠勤による損失の賠償など、またユーザーの身体に障害が残った場合は、その車椅子、杖などの費用も支払うべきです。

 中国消費者協会は、特に、『消法』第四八条に基づき、関係部門によって不合格製品だと認定されたものについては、購入者が返品することができると指摘しました。もし中国のユーザーが返品を要求した場合は、三菱は代金を返さなくてはなりません。

 話し合いを経て、日本側は私たちの意見に同意し、三菱は消費者協会を通じて中国のユーザーに謝罪し、また中国の関係部門の処理に積極的に協力することを表明しました。消費者協会の提案した権利上の要求についても、真剣に検討ののち、できるだけ早く回答することになっています。

     消費者保護の活動テーマ

 記者 私たちの知るところでは、1997年から消費者協会は毎年活動テーマを掲げていますね。97年は「誠実を重んじ、偽りに反対する」、98年は「農村の消費者のために」、99年は「安全でかつ健康的な消費」、2000年は「クリーン消費」、そして今年は「エコロジー消費年」。このようなテーマはどのように決まるのでしょう。また今年は協会ではどのような重大な活動が行われるのでしょう?

中国消費者協会が組織し
たエコロジー消費を提唱
するイベントの開幕式
 

 董 いわゆる「年間テーマ」は、消費者協会が広い範囲において『消法』を宣伝する基盤のなかで毎年特に一つのテーマを引き出し、全社会の注目を一つの方面に集中させ、消費者の権利保護を深く発展させていくものです。年間テーマは、権利保護を実践していくなかで弱い部分に特に決定されるもので、問題解決に役立ちます。全地球を席巻したエコロジーブームの一部分として今年の主題は「エコロジー消費」を提唱したのは、人々の生活がすでに衣食の困難を解決し、まずまずのレベルへ移行したことに基づいています。エコロジー消費は、エコロジーを意識した製品のみにとどまらず、資源再生、エネルギー利用法、環境保護などを含み、次の五つのRで総括することができます。つまり、資源節約、汚染減少(Reduce)、エコロジーライフ、環境保護を考慮して製品を選択(Reevaluate)、再使用、多利用(Reuse)、分類回収、循環再生(Recycle)、自然保護、万物共存(Rescue)です。今年は特に「エコロジーライフ、環境保護を考慮して製品を選択する」に重点をおいています。また社会監督方面では、食品、化粧品、建築材料の三つに重点をおいています。エコロジー消費は、消費者に「予防を主とする」ことを教えるものです。


中国消費者協会が主催した「砂
糖と健康」専門家討論会

2001年の「3・15」活動のテ
ーマはエコロジー消費だった

 年間テーマに基づいた活動は、広い範囲にわたる消費者の歓迎と社会的な注目を受けます。北京市百貨大楼、天壇家具公司、北京三元食品公司、普蘭徳洗染公司など17の企業は、エコロジー同盟を組み、消費者に向けて「エコロジー健康製品を提供し、エコロジー消費環境を創建する」として「エコロジー誓約」を打ちだし、そのなかには製品設計、生産、および原料の使用上人々の健康、安全および環境保護に注意を払い、エコロジー製品の開発と生産に力を注ぎ、国家が明確に生産と販売を禁止している汚染、公害、有毒製品については自発的にボイコットし、エコロジー管理を行い、心地よく安全な購買環境を整えることなどが含まれています。消費者はエコロジーマークの表示のある果物や野菜などを売り場で選ぶことになります。このような、環境、安全、栄養に配慮した品々は大歓迎されています。また、部屋の内装を行う場合にも、消費者は環境保全マークのついた建築材料を選び、室内の空気汚染について、特別に注意するようになっています。多くの消費者は特に専門家に頼んで室内の空気の測定を行い、ホルムアルデヒドやラドンなど、体に有害な気体の過剰度をチェックしています。一部の工場は、今年は特にエネルギー節約、環境保全に役立つエコロジークーラー、エコロジーカラーテレビ、エコロジー冷蔵庫などを売り出し、消費者に大いに歓迎されています。このほか、『中国消費者』誌上では、このテーマについて関係のある牛乳、化粧品、子供むけの食品、内装材料などについての調査報道を行い、多くの比較実験、調査からのデータを通して、消費者に対し警告を示し、消費者の安全のエコロジー消費を推進しています。

 記者 エコロジー消費の提唱者として、消費者協会およびご本人はどのようになさっていますか。

 董 中国消費者協会のスタッフはもちろん自ら手本を示さなくてはなりません。例えばオフィスではタバコは禁止ですし、私たちの名刺は再生紙を使っています。内部の清掃は行き届き、ゴミは分別処理しています。私たちのスローガンは、全員が使い捨てを減らそう、というもので、資源の節約に努めています。私自身は、タバコを吸いませんし、外食の時は自分でハンカチと箸を持ち歩き、使い捨ての箸や紙ナプキンは断るようにしています。そして野生動物を食べず、合理的消費を提唱し、誰かを接待するときも、豪華に見栄を張るようなことはせず、節約を持って旨としています。私たちは少しずつ、実際の行動によって住む環境を保護し、エコロジー消費に対し、私たちの責任を果たそうとしています。

 

特集2

    中国の「3・15」事業

 3月15日は、「世界消費者の権利の日」だ。1988年、中国消費者協会も国際消費者機構(CI)に加盟し、「世界消費者の権利の日」の全国的な記念活動をはじめて行った。この後、3月15日は、「中国消費者の日」となった。毎年この日には、各地で消費者権利保護の活動が行われ、中国の消費者の権利が最大限に守られる。「3・15」はすでに中国の消費者権利保護の代名詞となっており、「3・15」事業は、中国の消費者の権利を守るものとなっている。

     「3・15」は消費者の日


中国消費者協会は国際交流も盛ん。ヨーロッパを訪問した協会代表団と、関係者との交流の様子

2001年の「3・15」活動のテ
ーマはエコロジー消費だった

 1988年の3月15日から、中国消費者協会は「世界消費者の権利の日」の宣伝活動を国内で率先して行っていた。しかしある雑誌社の編集者、王さんにとって、その日と自分の深い関わりが分かったのは、1991年のことだった。この年から、消費者協会などの機関は、中央テレビと協力して、「3・15の夕べ」を行い、消費者の権利保護について宣伝し、これにより消費者の日と消費者の関係は深いものとなった。

 王さんの記憶によると、1991年、中央テレビが最初の「3・15の夕べ」と題された特別番組を放映した時は非常に盛り上がり、みなの注目を集めた。この時の現場はまるでクレーム大会のようで、まぐさを切る機械でケガをした人、レストランで使っていたカセットコンロ用ミニボンベが爆発し、容貌がそこなわれた人、不良品のタネを蒔いたために、一粒の収穫もあげられなかった農民、不純物が混じった綿が大量に市場に流れ込んでいること……など驚くべき事例がテレビを通して明らかになると、たちまち消費者からすさまじい反響が巻き起こった。みなは違法行為を働くメーカーや商売人に対し、驚きとともに激しい怒りを爆発させ、同時に一つの問いが沸いていた。それは、我々はどのように自己の権利を主体的に守ることができるのか? ということだ。

     偽物撲滅の英雄

 市場経済体制がつくられた初期、経済秩序は比較的乱れ、市場に偽物を作ったり売ったりする情況がかなり深刻になっていた。この時、一人の人物が出現した。「偽物撲滅の英雄」といわれる王海さんである。『消法』第49条は、経営者が提供する商品あるいはサービスに、詐欺行為があった場合、消費者の要求に応じて受けた損失に加えてさらに賠償をしなければならない。その賠償は、商品購入代金あるいはサービス代金の倍である、と定められている。この規定は民法の大きな進歩であり、消費者の権利が国家によって守られていることの体現である。

 1995年3月、青島出身の王海さんは、北京の隆福大厦で、12のソニーのヘッドフォンを買い、専門家によってそれが偽物の粗悪品であると判定されると、『消法』にてらし、賠償を求め、ついに懲罰的性格を持つ賠償を獲得することができた。この時以来、王海さんは、偽物撲滅の道をひた走り、偽物と疑わしいもの、または明らかな偽物を見つけると、それを購入した。王海さんは偽物撲滅を職業とするようになり、中国消費者保護基金会から「偽物撲滅消費者賞」を受けた。彼の行動は、偽物の製造者や販売者を懲らしめ、市場のルールを整えるのに、前向きな役割を果たし、消費者保護活動の推進にあたって、一時期、典型的な例となった。庶民は拍手喝采し彼を称えたが、偽物を作り、販売していた者たちは、王海さんを「ズルイ奴」とよんで脅しをかけた。そのため王海さんはマスコミに登場するときには、サングラスをかけ、化粧を施し老人の格好をするようになった。この王海さんの華々しい活躍によって、『消法』第四九条は、消費者の権利を守る大きな推進力になった。


1999年1月4日、重慶市キ江大
橋の倒壊では数10人の死者が
でた。被害者の家族は劣悪な
工事を行った責任者に対し、
責任を厳しく追及している

消費者協会は街頭に相談センターを設け、商品の真偽の見分けかたなど、消費者の質問に答える

 民法の専門家、何山さんも身をもってこれを試してみることにし、1996年4月、2900元で、中国の著名な画家である徐悲鴻の作品であるとされた『群馬』『独馬』の二幅の絵を疑わしいと思って購入した。その後、何山さんは、西城区法院に訴えた。専門家の鑑定を経て、この絵は確かに偽物であり、何さんは購入代金の倍額を補償され、それを中国消費者協会の偽物撲滅基金に寄付した。多くの人々は彼らとは違って、最初は受け身で、クレームをつけるだけだったが、最後には熱心な権利を意識した消費者となった。

 1995年、山西省曲沃県の農民、王憲貴さんは、新築中の家の完成間近になって、セメントが劣悪品であることを発見した。数十年苦労してためたお金で建てた家は取り壊すことも、建て続けることもできなかった。最後には消費者協会の人々が彼の損失を取り戻した。そこで彼は自分の建て直した新しい家を消費者クレーム受付所にし、自らが所長となり、報酬なしで駆け回り四十件あまりのクレームを処理した。周囲の農民は問題が起きると彼に助言を求めるようになった。一時期、王憲貴さんと曲沃県の方法は、当地の話題の的となった。

広告に顧客のために誠意
のサービスをするとうた
った販売業者もいる
  

  「お客様」のために学校も

 「3・15」事業が、中国国内に広く行き渡ると、企業や商店などでは次第にお客との関係を重視するようになり、消費に関する情報を提供し、問い合わせに答えるサービスなどを行い、消費に関する知識を普及させ、誤りをただし、消費に関する警告を掲示する、健康的かつ合理的な消費を提唱するようになった。いま、北京にはいくつかの消費者学校がある。  朝陽区の藍島大厦は、北京でも有数のショッピングセンターで、1993年の1月以来、売上高は年々伸びている。ここでは消費者を何よりも重視することを経営理念として掲げ、その標語は次のようなものだ。「商品は質で勝ち、買物は便(便利)で勝ち、環境は雅で勝ち、サービスは情で勝ち、機能は全で勝ち、経営は特で勝つ」。これにより、消費者に優れた企業のイメージを普及させている。

 1996年以来、藍島大厦は、パソコンが家庭に普及する商機を正確に見抜き、藍島パソコン教室を設けた。そして専門知識を持つ講師を雇用し、週末や休日、夏・冬休みなどお客が集中する時期には、彼らに対して無料で受講させた。また時には、大企業からの専門家を招いて、ユーザーに対して専門知識の解説を行う講座なども行っている。これらの講座は総計2000時間にもなり、受講者はすでに2万人にものぼる。講座によって、パソコンを買ったが、使い方がわからないためにパソコンを壊してしまい、返品するという現象が著しく減った。ここでパソコンを買う人の数は増え、時には一日400台も販売し、売上高がほかのデパートをはるかに引き離すようになった。これは講座の収穫といえるだろう。


工商、公安、文化の関係部門は
協力して、違法なインターネッ
トカフェを取り締まることによ
り不正な消費を撲滅させた

パソコン売場が開設したパ
ソコン教室では、コンピュ
ーターの基礎知識とソフト
ウエアの使用法を教える 

 生活水準の向上に伴い、人々の消費概念、消費行動には大きな変化が見られ、より快適な生活を求めるのは流行になりつつある。車を買う人も増えており、北京の東北部にある亜運村の自動車交易市場は、北京最大の車販売センターとして、人の流れが絶えない。また時に行われるモーターショーでも、車を見物したり購入したりする人が後を絶たない。このセンターではみずからの優位を利用して、自動車学校を創設した。2000年4月以来、数千人の人々がここで無料のレッスンを受けている。学校では、車メーカーの専門家、専門の補修人員、それにディーラーを雇い、ユーザーに向けて車の使用知識、機械原理、車の維持修理についての講座を行っている。購買希望者に向けても、車の購入面についての知識を紹介することは、よい指南役を果たすことになる。

      今後の課題  

 

「霧中の花、水中の月、誰がこの変幻する世界を見分けられる?」これは「3・15の夕べ」の晩会で歌われた主題歌『霧裏看花』だ。この歌詞は、消費者の心理を表している。

2001年の「3・15」では、中
国消費者協会が「全国消費者
権利保護十傑」を選出した 

 中国は、計画経済から市場経済への移行にあたり、法律、法規が未整備な時期に、メーカーや販売業者が利潤追求を第一とし、偽物、粗悪品を市場に出回らせ、消費者の疑い、苦悩はやむことがない。そこで、消費者協会の果たす役割はどうだろう? 内部組織にはいくつかの問題がある。この組織は民間組織ではあるが、少なくない部分において、半官の機構であり、会長は工商局のトップが担い、理事は、技術監督、衛生、物価などの政府部門の要員からなる。理事以上はほぼすべてが各部門の役人であり、民間の普通の消費者を代表する人はわずかである。このような協会が消費者の権利について必要な政府部門と対話するにあたり、独占状態にある行政部門と業界(例えば郵政部門など)において各部門の権利を損なう事柄では、内部の人々への配慮によって、後退することになりかねない。また協会の人々の手当てや一部の活動費は、政府の補助金であり、限りがある。活動を行うにあたり、一部の地方の消費者協会はメーカーや販売業者などに費用を負担してもらうことがあり、これが消費者の疑惑をひきおこす。経営者の資金で活動する消費者協会が公正性、権威性を保ち、消費者のために戦うことができるのだろうか?

 消費者がほんとうに安心して消費するためには、まだ各方面の努力が必要なようだ。(2001年10月号より)