首都の新交通システム 発車オーライA |
「軌道交通」が北京を変える
文・黄秀芳 写真・馮進
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2002年末から2003年にかけて、北京市内で5本の地下鉄が同時着工された。それは地下鉄5号線、オリンピック支線、10号線、4号線、9号線である。その数カ月前には都市鉄道13号線(西線)が開通したばかり。こうした集中的な建設ラッシュは、北京の交通建設史上、まれに見ることである。
北京市交通企画院の朱嘉広院長は「これは北京の軌道建設が高速で発展する段階に入ったことを示すものだ。軌道交通は、人々の生活を変えるだろう」と言い、北方交通大学の交通運輸学院副院長の申金升教授は「これは一挙に不足分を埋め合わせる補講のようなものだ」と言っている。
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無駄がなく、美しく設計された都市鉄道の駅 |
北京では、1960年代から地下鉄の建設が始まった。しかし都市鉄道13号線が開通するまでの30数年間に、地下鉄1号線、2号線の二本が開通しただけだ。その総延長は54キロである。
国際的な研究によると、ひとつの都市の人口規模が百万人を超えたとき、都市の軌道交通を中心とする交通システムが、技術的にも経済的にも明らかな優位性を持つようになる。百万人に達しない大中都市でも、持続可能な経済発展戦略の長期的な需要に適応し、都市の交通問題を解決するために、都市の軌道運輸の発展がやはり必要である。
北京の人口はすでに1300万人に達しており、どうしても軌道交通を大いに発展させなければならない時期にきている。現在の建設状況から見れば、2003年1月には、都市鉄道の残り区間の13号線東線が開通し、全長40・85キロの13号線は全線開通する。さらに9月には、全長18・9キロの地下鉄1号線の延長区間である「八通線」が開通する予定だ。
しかしこれらをすべて加えても、北京の軌道交通の総延長は114キロにしかならない。だがそれでも中国の各都市の中では、北京は一位なのである。
北京が最近公布した『北京市都市軌道交通路線網整備計画』によると、オリンピックが開催される2008年には、北京の軌道交通の総延長は300キロに達する見込みだ。2010年までには419キロ、2020年までには1000キロになるという。計画では、北京の軌道交通の路線は、今後7年間に毎年平均40キロの速さで増え続けることになる。
「もし北京でオリンピックが開催されないなら、北京の都市交通計画は現在と同じでしょうか」。中央テレビ局の取材を受けた北京市の劉淇市長は、この質問に対し、はっきりとこう答えた。「この交通計画と大気汚染防止計画は、オリンピックが開催されなくとも同様に実施されなければなりません」
実際、計画では、オリンピックと関連する地下鉄はたった一本しかない。それはオリンピック公園を起点に造られる全長わずか四キロのオリンピック支線であり、これは地下鉄
号線の一支線に過ぎない。だから劉淇市長は「オリンピックのためだけに交通施設を建設するという問題は、まったく存在しないのです」と言うのだ。
北京で現在行われている都市建設のインフラ整備事業は、主として第10次五カ年計画(2001年〜2005年)で決められたものである。関係者によると、国際オリンピック委員会は、北京の交通計画に当初からかなり満足していたという。なぜなら計画の重点が、軌道交通の発展に置かれていたためだ。
多くの北京人にとって、2001年12月7日のあの大雪は、なお記憶に新しい。あの日、北京全市はほとんど麻痺状態になり、いつもなら車で一時間もあれば行けるところが3、4時間かそれ以上もかかった。当時、唯一順調に動いたのは、地下鉄だった。
巨大都市である北京にはいま、1300万の人口と180万台の自動車がある。しかもこの数字は絶えず膨らんでいる。これが日増しに都市の交通に大きな圧力をもたらしていることは疑いない。
この数年、北京の道路建設は発展が速いとはいえ、旧市街を取り巻く既存の二環路の基礎の上に、あたかも餅を展ばすように、その外側に三環路、四環路、五環路を建設してきた。2002年9月末には平均の半径30キロ、全長200キロの六環路の東部分も完成した。しかしそれでも北京の道路は依然として車が順調に走らない。しかもまるで法則でもあるかのように、一本の道が造られるとたちまち渋滞が始まる。道路の建設が交通の発展に追いつかないのだ。
申金升教授は、これを「悪循環」と呼ぶ。21世紀の道路や交通手段が、依然、17世紀の馬車時代の速度を保ち続けているのである。
北京と類似した世界の大都市の交通状況と比較検討した結果、北京市政府は、北京と世界の大都市との最大の違いは、道路が広いか狭いかではなく、公共交通、なかんずく地下鉄の数量の差にあるとの結論に達した。だからこそ劉淇市長は、世界の大都市が交通問題を解決した経験から考えて、「地下鉄を発達させることこそが交通問題を解決する唯一の道だ」と述べたのである。
しかし、軌道交通の建設が本当に北京の交通問題を解決できるのかどうか、それに懐疑的な人もいる。
現在の状況から見れば、都市鉄道13号線の最大の役割は、遠く郊外に住んでいる人たちをより速く、より便利に、市内に運び込むことだ。しかし、市内の交通混雑は、これによって解決しはしない。社会的、文化的、経済的に重要な場所は、みな市内にある。
「本当に交通問題を解決しようと思うなら、現在のようにオフィスも娯楽施設も住宅区もみな市内中心部に集中しているという現状を改めなければならず、都市化建設を郊外にまで推し進めなければならない。軌道交通の建設こそがこうした改革を可能にする」と北京師範大学管理学部の文力教授は考えている。
今後50年の予測によると、北京市の人口は依然として増加し続け、2040年前後には、北京に戸籍を持って住んでいる人口は1400万前後のピークに達し、流動人口も300万前後に達するという。だから、市区の人口を郊外に移転させなければならないのだ。こうした考え方はすでに、計画の中に織り込まれている。
将来、北京の都市の構成はどのようになるのだろうか。
北京市計画委員会が発表した計画によると、北京市の行政管轄区域は、市区、郊外の14の衛星都市(一部の県城を含む)、30の中心的な鎮(地方都市)、普通の鎮、の四クラスによって構成される。
総面積は1万6800平方キロ。市区の面積は1040平方キロで、市区は市内の中心地区とそれをとりまく十カ所の大規模居住区によって構成され、定住人口は2010年に、市中心地区が450万人、大規模居住区が200万人となるよう計画されている。市内の中心地区の範囲はおおむね四環路の内外で、面積は約300平方キロである。旧市内の定住人口は、現在の160万から150万以下へと次第に減少する。
都市建設がまだ完成しない段階では、交通が先行する。交通問題を解決することによってのみ、人々は空気のきれいな、人口密度の低い郊外や衛星都市の生活を自ら選ぶことができるようになる。だから、21世紀に入ってから、北京でこれほど大規模な軌道交通を建設するのは、理解できないことではない。
『北京市都市軌道交通路線網整備計画』によると、2007年までに、軌道交通の営業距離は300キロになる。それによって六割の北京の人が外出に公共交通を利用し、その中で軌道交通が占める割合は現在の10%から50%に増加することが可能となる。
四方八方に延び、発達した交通路線によって、五環路内では出発してから20分以内で旧市内に到着でき、二環路以内ではどの場所からも5分以内で地下鉄の駅に着くことができ、もっとも遠い郊外の密雲県から市内まで一時間以内で着けるようになるだろう。
【関連資料】
1913年、北洋軍閥の袁世凱政府は、中仏実業銀行と『金貨借款契約』に調印し、一億フランの借款を得て、路面電車を建設しようとした。しかし、1914年に第一次世界大戦が勃発したため、この計画は一時ストップした。
1921年5月9日、この契約に基づいて、正式に『北平路面電車契約』が結ばれ、「北平電車股フン(株式)有限公司」が設立された。
1924年12月18日、北平で初の路面電車の路線が正式に開通した。全長9キロ。10両の電車が配置され、当時としてはもっとも近代的な交通機関となった。
1929年、路面電車の営業路線は六路線になり、総延長は約40キロになり、電車は82両になった。
1940年、天橋から永定門までの路面電車第七路線、全長1キロが開通した。
1945年、国民党政府が、電車会社を接収・管理した。
1948年、電車会社は毎年赤字で、ついに破産した。
1949年〜1956年、北京市政府は、路面電車などの公共交通の発展に重点を置き、軌道交通は1956年に全盛期を迎えた。しかし、都市の発展につれて、路面電車は都市の公共交通の需要を満たすことができなくなった。
1966年5月6日、北京で最後の路面電車が運行を停止した。かつて輝かしく活躍した路面電車は、北京から姿を消した。
1965年7月1日、北京の地下鉄1号線が着工され、69年に完成した。その後、次々に延長され、天安門を経て四恵東まで建設された。
71年3月、地下鉄2号線が着工され、84年9月19日、環状線の北、東、西部分が開通し、87年12月28日、全線開通した。
2002年9月28日、北京都市鉄道 号線(西線)が開通。2003年1月末、全線開通。
2003年末、地下鉄1号線の延長線(東区間)が開通の予定。
【関連解説】
北京市都市建設設計院の劉遷・副技師長によると、現在、軌道を持つ鉄道を中国語で「地鉄」「軽軌」「城鉄」と呼んでいるのは、あまり科学的ではない。学術界の規範的な呼称に照らして言えば、これらはすべて「都市快速軌道交通」と称されるべきだという。
もしこれらを区分するとすれば、輸送量によって等級をつけるべきであり、一時間の片道旅客の輸送量が5万人を超える「超大量輸送システム」、3万人〜5万人の「大量輸送システム」、3万人以下の「中量輸送システム」の3種類に分類することができる。
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都市 |
年間旅客輸送量(延べ人数) |
切符の基本料金 |
1位 |
モスクワ |
26億人 |
1セント |
2位 |
東京 |
25億人 |
78セント |
3位 |
ニューヨーク |
15億人 |
1ドル15セント |
4位 |
メキシコシティー |
15億人 |
11セント |
5位 |
パリ |
12億人 |
87セント |
6位 |
大阪 |
9億4800万人 |
78セント |
7位 |
サンクトペテルブルク |
8億2100万人 |
1セント |
8位 |
ロンドン |
8億1500万人 |
1ドル17セント |
9位 |
ソウル |
8億1200万人 |
28セント |
10位 |
香港 |
6億3000万人 |
32セント |
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北京 |
5億1000万人 |
35セント |
(2003年3月号より)
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