特集 西部大開発を引っぱる 人口世界一の巨大都市・重慶

水運が物流の中心に

朝天門埠頭は嘉陵江と長江が交わるところにある

 長江は、中国のもっとも長い大河である。この長江を、自動車や石炭などを満載した貨物船が、ひっきりなしに上り下りしている。

 重慶は、長江の上流にある大都市で、中国の西南部の内陸にある。有名な三峡下りの起点となっている。辺鄙なところに位置しているが、長江の流れによって下流の武漢、南京、上海など長江沿岸の十数の大中都市と密接につながっている。

 陸路の交通がまだ発達していなかったころは、長江が、重慶と中国東部や海とを結ぶもっとも重要なルートだった。しかし1950年代、道路や鉄道が急速に発展する一方、長江上流の船舶の航行能力には限界があったため、長江の重慶地区の水運はいったんさびれてしまった。

 だが今、湖北省宜昌市三斗坪に建設中の三峡ダムの工事が進み、ダムは135メートルの貯水ラインまで水を貯めた。これによって三峡の上流の水位も数十メートル上昇した。

1930年代に造られた九竜坡埠頭。手前にある工場は第二次世界大戦の時に建てられた。いくたびも改造されて、現在は長江上流の近代的な大型コンテナ埠頭になっている

 川面は広くなり、大きな船が通れるようになった。長江は中国西南部と華中、華東を結ぶ黄金の水路となり、また新たに生気を取り戻した。

 重慶市交通委員会の何昇平主任によると、この2年間、重慶の水運量は増加し続け、2004年には、水運が重慶のもっとも重要な運輸の手段となった。しかも重慶の対外貿易の物資は50%が水運を利用している。今後、三峡ダムの貯水ラインが175メートルになれば、一万トン級の船舶が、長江をさかのぼって重慶まで来られるようになるという。

 中国の指導者は、重慶市の発展目標を「長江上流の経済センターとして建設すること」と提起した。これが重慶の重要な発展方向となっている。

 長江の水運建設をさらに進めるため、重慶は、航路の浚渫と同時に、水運のインフラに対する資金投下を増やしている。九竜坡などの古い埠頭を拡張、改善し、万州、寸灘にも新たな大型の港を建設した。

 いまや長江上流の岷江、沱江、嘉陵江の沿岸の四川省、貴州省から、物資が絶えず重慶に集まって来て、よどみなく外に運ばれてゆく。重慶はまさに中国西南部の重要な物流ターミナルになっている。

 


「三峡は私の誇り」
                                    遊覧船のガイド 徐華萍さん

ガイドの徐華萍さん

 徐華萍さんはガイドとなって、三峡をもう十年以上往来してきた。彼女は三峡のどの場所も、それにまつわるどの物語も、みなはっきりと暗記している。

「長江が高く険しい山々を貫いて流れ、三峡独特の雄大な美しさをつくりだしています。私は三峡のこうした大迫力が大好きです」と彼女は言うのだ。

 徐さんの仕事ぶりはとくに目だっている。彼女がガイドした観光客たちはみな彼女に良い印象をもつ。他の地方で働かないかとの誘いがたくさんあったが、彼女はずっと重慶に留まっている。

「重慶の気候は温暖、湿潤なので、ここで暮らすのはとても快適。また、自分が重慶人なので、観光客に三峡の壮麗な景色を説明することができるのを非常に誇らしく感じます」と彼女は言う。

 近年、重慶や三峡がだんだんと世界に知られるようになってきたため、さらに多くの外国の観光客がここにやって来るようになり、重慶の観光業は新たに発展した。三峡ダムが貯水を始めた後、長江の水位は上がり、三峡は、これまであった景観が一部水中に没したものの、一部の新しい景観が出現した。

 また政府は長江の環境保護に大きな資金を投入し、水質はかなり改善された。「今日の三峡は、水はさらに清く、山はさらに秀麗となりました。ガイドとして、自然を愛する人たちが三峡にやって来て、三峡独特の風光を観賞してほしいと思います」と徐さんは言っている。 (2005年3月号より)

 

 

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