特集2 先進国との差が生んだ創業のチャンス |
出国から帰国がブームに
改革・開放政策が始まったばかりの20年ほど前の中国は、若者たちの「出国ブーム」に沸いていた。先進国に留学し、進んだ科学技術や文化を学びたいという若者は今でも多い。しかし近年は、それに加えて留学生の「帰国ブーム」も起こってきた。 1980年代、公費派遣の中国人留学生の帰国率は40%前後だった。それが2000年になってからは、96%前後が帰ってくるようになった。初期のころの帰国留学生は、政府や研究機関に就職したが、最近の傾向は、帰国して自分の専門を生かし、企業を創業したいという人が増えている。彼らは「新海帰」と呼ばれる。 海外留学生はだれでも、故国に帰りたいという自然な感情が働くが、「新海帰」の増加の根本的原因は、中国の経済発展が速く、しかも前途が有望であること、個人がその能力を発揮できる空間が広がっていることが挙げられる。 現在、中国と西側先進国とでは、近代化の進み具合に大きな差がある。しかしこの差こそ、多くの中国人留学生の目には「大きなチャンス」と映る。彼らの飛びぬけた専門的な素質と広い視野は、創業する上での優れた資源になっている。
現在、中国全国に110以上の留学生創業園区があり、ここに入っている企業は数千社を数える。それは、北京、上海、広州、深センにもっとも集中している。その中で、14カ所の「孵化園」や「創業園」を抱える北京の「中関村科技園区」はとくに注目されている。 その1つ、「中関村国際孵化園」は、2000年12月に、大型国営企業と3社の創業サービス機構が投資して創設された。この「孵化園」は、「政府が指導し、市場が運用する」というモデルに基づいて、政府と社会の資源を利用し、留学生が帰国し、創業するうえで全面的なサービスを提供した。 2005年5月初めまでに、20数カ国から帰ってきた400人の留学生を受け入れ、ハイテク技術の企業360社が創業された。2004年に選ばれた50人の優秀な創業留学生のうち、10人がこの「孵化園」から出た。 さまざまな手厚い優遇政策
もし、1人の帰国留学生が、特許の技術を持って、創業しようと「孵化園」に入って来るなら、まず北京市政府の優遇政策を受けることができる。それは例えば、外国に住もうと北京に住もうと、どこに住むのも自由、中国のパスポートで直接、企業の登記ができる、創業し、収入があれば、納税後、すべてを外貨に換えても、国外に持ち出してもよい、などである。 さらに「孵化園」では、政府の窓口が園内に置かれ、企業登記のサービスは1つの窓口だけで済む。これによって、企業の登記に要する時間は、従来の2カ月から1週間に短縮された。 もし資金が不足した場合は、科技園区管理委員会が無利子のローンを申請するのを助けてくれるし、「孵化園」が企業の家賃を免除し、その分を企業の株にして持つなどの方式で企業に資金を注入することもできる。また、優れたプロジェクトに対しては、推薦会が開催される。これは「三三会」と呼ばれ、毎月第3週の水曜日に定期的に開かれ、3つの重点プロジェクトと若干の推薦プロジェクトが投資者に紹介される。 このほか、帰国留学生は全員が独立して創業することを望むわけではない。多くの高級専門技術者たちは園区内のハイテク企業で、CEO(最高経営責任者)やソフト技術者、部門の責任者などとして役割を果たしたいと望んでいる。このため、中関村科技園区と「北京双高人材発展服務センター」は共同で、個人専門の職業紹介サービスを始めた。この中には、就職ガイダンスや情報の提供、海外と結ぶビデオ面接試験などのサービスが含まれている。
外国の「孵化園」に比べて、中関村の「国際孵化園」は、家族的な感じを受ける。「孵化園」の劉暁民総経理は「ここに入ってきたばかりの企業は幼児期の子どもなので、子どもを育てるように彼らの成長を助けてあげなければならない。『孵化園』の理念は、自分の利益と企業の利益を結びつけて、共同で創業することです」と言っている。 中関村地区は大学が集まっている。これは、帰国留学生たちのハイテク企業に豊富な科学教育の資源と人材の資源を提供している。そして「孵化園」もまた、企業と大学の協力に、交流と連絡の場を提供している。 2001年から、清華大学経済管理学院と北京大学があいついで中関村の「国際孵化園」と協定を結び、「孵化園」をMBA(経営学修士)の実習基地にした。北京航空航天大学と中国科学院の軟件学院は、ここを自分のソフト技師の実習基地に定めた。最近、シンガポールの南洋理工大学の創業センターも、ここにグローバルな人材養成の実施基地を設立した。 このほか、各大学も相次いで、中関村科技園区管理委員会と協力し、「北大留学人員創業園」や「北京科大留学人員創業園」などの帰国留学生の創業園を設立した。(2005年11月号より) |
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