青島と日本 固く結ばれた経済の輪
                         原絢子 李富根=文   侯賀良 劉世昭=写真

写真中央の五四広場は青島の新市街区のシンボルとなっている

 異国情緒漂う街並み、青くて美しい海、そして美味しいビールと海の幸。青島は海辺のリゾート地としてのイメージが強いかもしれない。

  しかし今、港湾都市としての優位性を生かし、中国でも有数の外資を引き付ける地となっている。特に地理的要因により、日本、韓国からの投資は急速に増え続けている。

 経済都市としても国内外から注目を浴び、その存在感を日ごとに大きくする青島の魅力はどこにあるのか。日本の企業はなぜ青島に進出するのか。日本人の生活環境はどうか。青島はどのように外資誘致を進めているのか。

  2008年のオリンピック開催を控え、ますます輝きを増す青島からレポートする。



特集1

于衝・青島副市長インタビュー
ビジネスチャンスは無限大

 青島市は2005年、「中国のブランドの都」「中国で最も経済活力を備える10大都市」「中国で最も風情ある都市」など数多くの称号を受けた。黄海沿岸の珠のように輝きを増す青島は、国内外からますます熱い注目を浴びている。積極的に外資を誘致し、青島の経済発展を促進する于衝・青島副市長に、青島の現状と日本との経済交流について話を聞いた。

于衝・青島副市長

 ――青島とはどのような都市ですか。

  青島は、中国で最もブランド企業が多い都市です。中国で最も早くブランド戦略を実施し、現在に至るまで絶え間なく発展させてきました。

  ブランド経済が発展した理由を私は次のように考えています。一つは、青島は孔子・孟子の故郷、山東省に位置するため、儒家文化の影響を深く受け、誠意と信用、規則を重んじ、知識を尊重する地であること。もう一つは、港町であるため、外来文化の影響を強く受け、包容力があって、他から学んだり吸収したりすることが得意であること。青島の世界的なブランド企業である青島ビールやハイアール、ハイセンス、オークマなどはすべて「中洋折衷」の産物です。

  青島はまた、山と海がある風光明媚な都市です。数多くの古典的なヨーロッパ建築が完全に保存されており、悠久な歴史文化を持つ美しい観光都市です。国際連合から「人間居住環境改善・最優秀モデル賞」を授けられました。

青島港

  「紅瓦、緑樹、碧海、藍天(赤い瓦、緑の木、紺碧の海、青い空)」の自然風景と国際ビール祭、海洋祭、国際ファッション祭などの祭典は、国内外から多くの観光客を引き付けています。05年は海外からのべ68万4400人の観光客が訪れました。

  さらに、中国の海洋科学研究機関の4分の1、研究者の半分以上を擁す海洋科学技術の都市でもあります。08年には、オリンピックのヨット競技がここで開催されます。北京オリンピックの唯一の分会場であり、現在、着々と準備が進められています。

  ――投資の魅力はどこにありますか。

  青島は20年来、電子通信、情報家電、ゴム・化学工業、飲料・食品、自動車・船舶、服飾の産業を支柱とした経済建設を進めてきました。また、経済技術開発区、保税区、輸出加工区を保有した数少ない都市の一つです。

  現在、60以上の国や地域の企業1万7800社余りの青島への投資が批准されています。05年の青島市の域内総生産は前年比16.9%増の2695億5000万元でした。輸出入総額は約305億ドル、そのうち輸出額は同比26.4%増の約176億ドル、輸入額は同23.5%増の約129億ドル、外資系企業が占める輸出額の割合は61%です。米経済誌『フォーチュン』から「中国のビジネス最適都市」の一つに選ばれ、特に「最も優れた環境」と「将来最も潜在力がある都市」の項目ではトップ3に入りました。

青島は北京オリンピックのヨット競技の開催地だ。現在、会場の建設に拍車がかかっている

  青島はまた、中国北方運輸の中心地です。天然の良港である青島港は、黄河流域を含む中国北方の重要な国際貿易港であり、海上運輸のターミナルです。130以上の国や地域の450余りの港と貿易往来をしています。

  青島港は16の埠頭と36の万トン級以上のバースを有し、05年の貨物取扱量は1億8700万トンでした。コンテナ取扱量は631万TEUに達し、中国第3位、世界第15位です。今後5年、270億元を投入して建設を進め、名実相伴った国際運輸の中心に発展させる見込みです。

  空の便も充実しており、東京やソウル、パリなどと14本の国際線で結ばれています。高速道路の総延長は525キロで、準省級の都市の中でトップです。

  ――日本からの投資も集中していますが、どうしてだとお考えですか。

  青島と日本の経済貿易の急速な発展には、いくつかの要因があります。
 
  (一)地理的条件の良さ。青島から大阪および東京までは、それぞれ空路で2時間、2時間40分の距離です。海路も便利なので、日本企業はコストを抑え、利益を拡大することができます。
 
  (二)日本企業の産業構造と技術力の高さ。日本企業の技術力は総じて高く、自動車、電子、造船、石油化学などを主とした産業構造は、青島の産業構造の調整と経済発展の需要に合致します。
 
  (三)ソフト面の充実。青島は「投資および生活に最適な都市」や「最適の合作パートナー」の称号を受けているとおり、ソフト面の環境も整っています。効率的かつ廉潔な市政府のイメージと、「誠意、調和、寛容、卓越」の精神、「親商、安商、富商(投資家に親近感を、投資家に安心感を、投資家を豊かに)」の理念、「すぐに面会、すぐに話し合い、すぐに処理」という仕事ぶりは、日本企業に強い印象を与えているようです。

青島ビール博物館。2005年10月に青島を訪問した関西経済界のメンバーは、ここで搾りたてのビールを味わった(写真・于明新)

  ――今後、日本企業にとってどのようなビジネスチャンスが潜んでいますか。
 
  2006〜10年の発展計画において、対外貿易の面では、科学的発展観と持続可能な発展の戦略に準じ、重点の強調、サービスの強化、環境の優良化、レベルの向上をさらに進めます。サービスのアウトソーサーや六大産業に合った設備製造業の誘致を強化し、大型国有企業や現代サービス業、公共設備とインフラ建設において、外資を積極的に利用します。
 
  青島は特に製造業の発展に適しています。家電とそのデジタル化、自動車・船舶とその部品、石油化学の裾野産業、食品、アパレル、そして展示会、観光、設計、金融などの現代サービス業とIT産業、どれも日本が強い産業です。日本のビジネスチャンスは言わずと知れたことでしょう。

  また、08年のオリンピックが近づくにつれ、青島の経済発展と都市の地位向上はますます加速されます。ここにもビジネスチャンスは無限にあります。05年、私は百億ドルの契約を携えた代表団を率いて日本を訪問しました。近いうちに、60億ドルの契約を携えて訪日する予定もあります。

  ――日本との経済交流が盛んに行われていますが……。 

青島と日本の経済交流はますます深まっている。2005年10月に青島で開催された投資環境説明会の席上、関西経済界の訪問団と青島市政府は合作協議に調印した(写真・于明新)

  中日の政治関係が低迷している現在、青島と日本間の交流は、非常に大きな意義があります。経済貿易におけるウィン・ウィンはその一つですが、さらに重要なことは、これによって双方の社会が進歩し、両国人民の理解と友好が深まっているということです。

  青島は日本との経済交流の発展を特に重視し、ほぼ毎月、投資誘致団を日本へ派遣しています。また、貿易促進会や開発区などは日本に事務所を設け、日本企業と常に連絡を取り合っています。
 
  04年11月には、日本で開かれた黄海および渤海沿岸の中国、日本、韓国の10都市で構成された「東アジア経済交流推進機構」の発足式に参加しました。05年1月には、200人の訪日団を組織して、東京、大阪、福岡などで投資環境説明会や各産業の投資誘致会を開催しました。同年6月には、愛知万博で「魅力的な青島 ヨットの都」をテーマとした「青島ウイーク」を成功させました。
 
  一方、2004年10月には青島で「第1回日本ウイーク」を開催しました。これまでで最大規模の日本との経済文化交流活動であり、駐中国日本国大使館の原田親仁公使ら5000人近くの日本の来賓がご出席くださいました。05年10月も、中日関係があまりよくない時期ではありましたが、「第2回日本ウイーク」を挙行しました。このとき、関西経済界など大きな視察団も青島を訪問しました。
 
  この2度にわたる「日本ウイーク」は、経済貿易の交流を推進しただけでなく、日本旅行の展示・説明、日本の映画やテレビ番組の展示・上映、日本のポスターや漫画、建築設計の展示、日本食品祭、斉魯文化観光などの交流活動もあり、双方の理解と友好をより一層促進する役割を果たしました。

八大関は旧租界区で、今でも数多くの異国情緒漂う別荘が完全に残る

  ――4月に日本で開催される「2006中国青島ウイーク」について詳細をお聞かせください。
 
  「2006中国青島ウイーク」は、東京、神戸、福岡、下関、広島、大阪の6都市を回ります。青島の各開発区の特徴と産業発展の重点目標を中心に、全体的な環境説明会と各専門に分かれた投資誘致会を組み合わせ、オリンピックと観光、交通と公共インフラ、船舶部品、自動車部品、電子・ソフトウェア、環境保護と資源再生、物流と食品という7大分野の発展計画、投資の優位性および市場の需要を紹介します。
 
  これまで行ってきたような青島側からの一方的な説明会ではなく、今回は日本側の投資環境も紹介していただき、青島の有力企業の「走出去(海外進出)」も促進する予定です。現在、日本に投資している青島企業のプロジェクト数は17件、投資総額は約900万ドルです。
 
  「青島ウイーク」は、青島と日本の地理的かつ人文的な優位性を力に、双方の経済関係をより強固なものにすることでしょう。また、文化・観光などの友好関係を深め、青島と日本の交流を、より広範囲に、より大規模に、よりハイレベルに発展させてくれることでしょう。(2006年5月号より)



 
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