特集1
2月3日は、日本の伝統的なお祭りの「節分」である。東京の浅草寺の境内では、多くの人々が集まって、にぎやかに「豆まき」が行われた。
ちょうどこの日は、中国の春節(旧正月)の連休に当たり、連休を利用して日本にやって来た中国人の観光団も、「豆まき」の行事を見物に来た。その中に金忱さん夫婦もいた。金さんは上海市の外科医で、春節前に、友だちと日本観光の旅行団に参加したのだ。
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折り紙で鶴を折っている金忱さんの奥さん(右) |
午前11時、「豆まき」が始まった。金さんは、カメラのシャッターを押し続けた。「日ごろ私たちは、欧米の文化に関心を持っているので、欧米の映画や音楽の名前はすらすらと言えますが、日本についてはあまり知りませんでした。でも日本に来てからこの数日で、本に書かれている中国古代の文化が、日本ではよく保存されていることに気づきました。それには本当にびっくりしました。今回、日本旅行を選んだのは正解でした」と金さんは言った。
金さんの奥さんは浅草寺の境内の露天で、折り紙で鶴を折る実演を見つけると、走って行って鶴の折り方を学び始めた。そして店員の指導で、一羽の「鶴」ができあがった。自分の「傑作」を両手でかざしながら彼女は、「日本の伝統的な折り紙ができるようになるなんて、思いもよらなかったわ」と大喜びだった。
直接対話で理解深める
「あなたにとって、これからの夢はなんですか」
「東京の大学に留学することです」
「じゃ、あなたにとって一番大切なことは何ですか」
「私にとっては、楽しいことがなによりも大切」……
神奈川県にある鎌倉女学院の高校2年の教室では、中国から来た高校生の姜楠さん、官琳さん、李楊さんの3人が、日本人の女高生たちと愉快そうにこんな会話を交わしていた。
1人の女高生が「皆さんが 一番行きたいのは、日本のどこですか」と聞くと、李楊さんが「大阪に行きたい。あそこの料理は美味しくて、やすいというから」と答えた。姜さんは「私は京都へ行きたい。そこでは、たくさんの日本の伝統的な建築が見られるから」と言った。
「皆さんは恋をしたことがあるの?」という日本人の女高生の質問に官さんは、顔を真っ赤にしながら「親のしつけがとても厳しくて、ほとんどの親は、子どもが学校で勉強している間は、恋愛することを許さないのです」と答えた。
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姜楠さん(中央)ら3人は、日本の生徒たちといろいろなことを話し合った。 |
中国の3人の女高生は、遼寧省瀋陽市の高校3年生である。去年、遼寧省で行われた日本語スピーチコンテストに参加し、ベスト・スリーに入った。そのご褒美に、日本の神奈川県日中友好協会の招きで日本へ一週間の旅行に来たのだ。
3人は、日本で過ごした数日の間に、学校で学んだ日本と、目の前にある現実の日本とを一つ一つつき合わせた。そして、教室で学んだ知識より、はるかに大きな収穫をあげることができたのだった。
同じような年ごろの中日両国の女高生が交わす会話の主なテーマは、日本のアニメや映画、小説だった。姜楠さんという名前を日本語で発音すると、日本のアニメの『名探偵コナン』の「コナン」の発音に似ている。そこで、姜さんのニックネームは「コナン」となった。官さんは、日本の作家、星新一の小説が大好きで、この作家の豊かな想像力に魅せられている。
招待した県日中友好協会が、彼女たちのためにホームステイを特に手配してくれた。姜さんのステイ先の池田さん宅には、姜さんと同い年の娘がいた。わずか一日、いっしょに暮らしただけだが、2人はすぐに良い友達となった。
池田さんの娘さんは、自転車に姜さんを乗せ、近くの商店へ買い物に行った。「彼女はすごいスピードで自転車をこぐので、私はとても緊張しました。大急ぎで『お巡りさんに捕まらないかしら』と尋ねたけれど、彼女は『大丈夫よ』と言う。それでも私は、胸がドキドキして、お巡りさんが道端にいないかどうか、目を皿のようにして見ていました」と姜さんは言った。
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美しい和服を着るのが李楊さんの長年の夢だった |
ホームステイだけではなく、観光や和服の着付け、さらに電車に乗ること……姜さんたちの旅行は、非常に充実していた。
李さんはこう言った。「この数日で体験した日本の社会と日本人の生活の多くは、教室では学ぶことのできないものでした。ホームステイ先のお父さんは私に『中国と日本という2つの国の人間が、真正面からフェイス・トゥー・フェイスで交流してこそ、初めて真の理解に達することができる』と言いました。私はお父さんの話は正しいと思いました」
銀座が伝統的な東京のシンボルとすれば、お台場は、間違いなく、現代の東京のイメージを体現している、と中国の観光客の目には映る。
山東省徳州市から来た董玉秋さんは、日本ツアーに加わって大阪から東京へ来た。そして最後の一日の午後、お台場にやってきた。フジテレビの建物の観光大ホールに登ると、ガラス越しにレインボーブリッジがことのほか美しく見えた。
「以前は、日本は科学技術大国であると聞いていましたが、新幹線やゆりかもめに乗ってお台場に来て見ると、日本の近代化と科学技術の発達の程度を、身をもって感じることができました。それに比べれば、中国はまだまだ差があり、これからさらに頑張らなければなりません」と董さんは言った。
ショッピングは何といっても秋葉原の人気が高い。どの商店に入っても、1人か2人の中国語のできる店員がいて、買い物の相談に乗ってくれる。秋葉原で長く働いてきた女性の陳さんの話では、中国の観光客は主にデジカメや電子辞書などのデジタル製品を買う。彼らの購買力は高く、一つの旅行団が5、6台の同じ型のデジカメを買ってゆくこともあるという。
今のところ、中国の市場の発展は速く、デジカメなどの製品は、ほとんど日本と同時に売り出され、値段も大差ない。「現在、中国の観光客が最も関心を寄せているのは、その製品が日本製かどうかで、値段は二の次です。中国の観光客の買いたいものは変化してきているものの、秋葉原はやはり、中国人が日本に来てショッピングするとき、必ずやってくる場所です」と陳さんが言った。
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客に商品を紹介する秋葉原の商店の陳さん |
中国の観光客には、デジカメやビデオカメラ、電子辞書がよく売れるのに引き換え、ビデオデッキ、テレビ、シロモノ(冷蔵庫や洗濯機などの家電製品)などは、中国でも国産品がすでにかなり普及しているので、今はあまり喜ばれなくなった。そのかわり、電子ゲームなどの商品がますます売れている。
中国でアニメ文化が普及してきたため、近年、秋葉原にできたフィギュア館も、中国の観光客の注目を集めている。ここにある品物は、ほとんどが中国で生産されたにもかかわらず、多くの観光客がここで買いたいと思っている。その原因の一つは、商品の種類が多いこと、もう一つは、中国国内より値段が安いからだという。
子どもの観光客にとっては、なんと言ってもディズニーランドが魅力だ。北京市第2実験小学から来た于海男先生は、東京のディズニーランドがいちばん良かったという。「私は、ディズニーのアニメとともに大きくなったので、ずっと前から日本のディズニーランドへ行ってみたいと思っていました。本当にうれしくてたまりません」と彼女は言った。彼女は、中国国内の友だちにあげるため、数千元のプレゼントを買いこんだ。(2006年6月号より)
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