座談会 新農村建設 「豊かになる」道を模索する農民たち
特集3
収穫量アップと環境保護を目指す

科学技術を応用

広西チワン族自治区の多くの農村では、「抛秧」の田植え方法が普及している

  広西チワン族自治区の農業は科学技術がたくさん用いられていましたね。彼らの稲作は、「免耕」(不耕地栽培)や「抛秧」(苗を水田に放り投げる田植え法)など新しい方法を採用している。これは労働量を軽減するうえ、収穫量もあがると聞きました。

  伝統的な耕作方法と比べ、10%ほど増産できる。しかも水土の流失を減らし、土壌構造の保護と改善にも効果的だ。かつての腰を曲げての田植えはとても大変だったうえ、苗にとってもよくなかった。広西が発展をとげたのは科学的な稲作によるところが大きい。

 ――2001年から「免耕」「抛秧」の技術が普及し始め、05年には普及範囲がもともとの1万ムーから845万ムーに拡大。稲だけでなく、ジャガイモやトウモロコシの「免耕」技術も進められている。

八桂田園のメタンガス設備

  ほかにも、「三避」(雨、太陽、寒さを防ぐ)という技術がありましたが、私はこれを「科学技術」というのには疑問を感じました。果樹にシートを被せたり、果実に袋をかけたりするのは、日本では昔から行われていることです。科学技術というほどのことでもないと思いましたが……。しかも日本では、果物の種類にもよりますが、袋をかけないほうが見た目は悪くても、太陽の光をいっぱいに浴びておいしいということもあります。

  人間と一緒ですね。太陽のもとで育ったほうが健康的で美しい!(笑い)

  金柑の栽培が盛んな陽朔県の古板村でも、果樹にシートを被せる技術が普及していました。私たちが訪れた3月末の時点でも、ちょうど食べごろの金柑がたわわに実っていて、村人たちが収穫していましたよね。

  日本では、自然のままの無袋栽培で育てたほうが糖度も増し、味もよくなるということで、かえってそちらのほうに向かう傾向もあります。中国とは逆ですね。お隣同士の国でありながら、事情は違って面白いですね。

  原さんの意見からも、中国の農業科学技術は昔に比べて発展したものの、先進国にはまだまだ及ばないことがわかる。そこで、「新農村建設」で力を入れるべき点の一つは、文化があり、技術に優れ、経営力のある新しいタイプの農民を育成することだ。

資源の循環を考慮

搾り終わったサイトキビのカスを利用してキノコを栽培する。資源の循環利用だ

  広西チワン族自治区のエコ農業も興味深かったです。「養豚―メタンガス―果樹栽培」がセットとなった農業システムはすばらしいと思いました。日本でのメタンガス設備は、牧場や農園などの比較的大規模なシステムが主だと思いますが、中国ではほとんどが家庭用の小規模なものですよね。これは環境保護の面で、非常に有効だと思います。

  中国の一戸を生産単位とした請負制農業に合っているのでしょう。今後はより収穫量が見込める農業形式が必要となるので、メタンガス設備も大規模化するかもしれない。南寧市郊外の広西現代農業技術展示センター「八桂田園」にあった、同自治区最大のメタンガス設備(1600立方メートル)のように。

  紅岩村にも比較的大きなメタンガス設備がありましたよ。16戸の炊事や照明をまかなうことができる。

  私も見学しました。大きな設備を作るには費用もかかる。だから資金が足りない状況では、まず小規模なものから発展させる。とても現実的だと思います。これは中国の環境保護に対して、積極的な役割を果たすものだと信じています!

  ――広西の農村には現在、240万以上のメタンガス設備があり、普及率は30%。中国全土では10%にも満たないため、普及率は高いと言える。

  北方の農村では、かつては主にトウモロコシや小麦など穀物の茎を燃料にしていました。今は石炭を使うようになったので、穀物の茎は用を足さなくなり、畑のそばで燃やすしかありません。これによって大気汚染がもたらされます。もし北方にもメタンガス設備が普及すれば、人や家畜の糞尿、穀物の茎などは循環利用でき、衛生の面でも環境保護の面でも有効ですね。

八桂田園には、休日になると多くの学生たちが参観にくる。写真はバーベキューをする学生たち

  現在、ほとんどの農村では化学肥料を使っていて、これは農作物の味にも影響を及ぼしている。メタンガス発生後の液体や残りかすは、非常によい有機肥料となり、これで作った果物や野菜はとてもおいしい。

  子どもの頃、家でトマトを作っていてとてもおいしかった。今の市場に出回っているトマトは、トマトの味がしませんものね。

  それも農薬の使用と関係している。八桂田園では、果実に袋をかけたり、「誘蛾灯」などのエコ技術で虫を駆除したりして、ほとんど農薬を使っていなかった。原さん、あそこで食べた野菜や果物はどうだった?

  おいしかった!(大笑い)

 


古板村 「三避」技術で増産と品質保持を実現

金柑を摘む張偉遠さん

 広西チワン族自治区陽朔県白沙鎮に位置し、総面積約15平方キロ、640世帯2528人が住む。耕地面積は2491ムーで、一人当たり1ムーにも達しないため、荒山を開墾して金柑、ザボン、栗などの果樹栽培に力を入れてきた。

 特に金柑の栽培面積は、90年代初期の2000ムーから05年には4300ムーに拡大。2000年から果樹にシートを被せる技術が普及する。それまでは、霜で実が落ちるのを防ぐために、果実がまだ青いうちに摘み取っていたが、シートを被せるようになってからは、翌年の3、4月まで木に実ったままの状態でとっておくことができるようになった。これにより、増産と品質の保持を実現。金柑の価格は1キロ当たり3元から8〜12元に上昇し、農民の増収を大きく推進した。

 300本の金柑を栽培している張偉遠さん(59歳)によると、昔は果実がまだ青いうちに摘み取ったり、保鮮剤をかけたりしていたため、味はよくなかったという。張さんの年収も2万元前後だった。

 「三避」技術の普及にともない、張さんも01年からすべての木にシートを被せ始めた。こうすれば金柑を木になったままの状態でとっておけるため、時期外れの時に市場に出せる。現在の年収は10万元近い。(2006年7月号より)

 

 
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