黄河下流で見た典型的な農村
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土地を失った農民はどうなった

  徳州市の東、約8キロに、宋官屯という鎮がある。ここに1998年から、徳州経済開発区が建設された。宋官屯鎮の面積は57平方キロ、鎮の下に37の村があり、人口は2万6000人。開発区の計画建設面積は23平方キロ。このうち、まず1万9000ムーの農地が収用された。現在、小申村、宋官屯村、東劉村などの10カ村の土地は、10%の集団経済用の土地を除いてすべて収用された。

 現在、開発区にはすでに内外の企業400社が入っている。今、中国の一部の地方では、開発区建設の名で農民の土地を買い上げ、いったん土地を失った農民は、補償費を使い果たした後、「植える土地がなく、勤める職場もない」といった状態になっている。宋官屯はどうなっているのだろうか。

土地がなくとも家がある

宋官屯鎮の住宅や生活スタイルはすっかり都市化されている

 開発区の中で、小申村は最初に立ち退きとなった。いまの小申村の新しい村は、通りに面して7棟の住宅から成っている。小申村の226戸は、すべてこの7棟の住宅に入った。

 その一つの棟の6階に住む劉さんは、夫の王さんと二人の子どもと住んでいる。住宅は三部屋と二つの客間、台所、トイレ、ベランダがあり、面積は131平米。彼女の舅と姑は、別の、同じような住宅に住んでいるが、一階なので階段を登らずに済む。

 41歳の葉敬華さんは、母親、妻と二人の娘といっしょに131平米の住宅に住んでいるが、このほかに116平米の住宅を所有していて、これは人に貸している。家賃収入は毎月400元だ。

 開発区政府は、土地を失った農民に対して、お金で補償するかわりに、住宅を建てて補償することを考えた。そこで開発区に住宅を建てる建築会社に対し、できるだけ住宅の価格を引き下げるよう要求した。こうして各戸15万元の補償金をできるだけ不動産に変えた。この結果、多くの村民が二つの住宅を手に入れ、一つは自分たちが住み、もう一つは貸してお金をもうけることができた。

 やや遅れて開発された宋官屯村は、小申村の「家ごとに住宅を分ける」方式を「人と世帯に応じて住宅を分ける」方式に改めた。それは、各戸に40平米を分け、さらに一人当たり40平米を分けるという方式である。このようにすれば、三人家族の場合、160平米となり、80平米の住宅二つが確保される。住宅の価格は一平米680元と安く、160平米でも11万余元で、補償金15万元の残り4万元が内装に使える。

 土地がなくなっても、住宅はなくならない。それならと、まだ開発されていない村々は、早く土地が収用されて、暖房、天然ガス、水道、ソーラー給湯器などの設備が整った快適な新しい住宅に住みたいと待ち望むようになった。

土地がなくとも失業しない

徳州開発区では、公益性のある仕事をつくり、優先的に35歳以上の土地を失った農民にその仕事を斡旋している

 開発区の農民は、新しい住宅に入ることはできた。しかし、農作業以外の仕事をしたことがなく、何の技術も持たないの農民が、土地を失ってから、職に就くことができるのだろうか。

 この問題について開発区政府は各種の措置を講じ、何とか農民に就職を世話した。例えば、開発区で営業する企業は、5ムーの土地を占有するごとに一人の村民を採用しなければならないとの規定がつくられた。このために開発区には33カ所の職業技術学校が開設され、土地を失った若い農民の職業訓練を強化し、彼らが工場で働ける条件をつくった。

 同時に、開発区は公益性のある仕事をつくり、35歳以上の土地のなくなった農民を優先的にこの仕事に配分した。例えば、園林の緑化や環境衛生・清掃、住宅団地の管理、保安サービスなどである。このほか開発区は土地を失った農民が商店やサービス会社を開いたり、建築や据付け、運送などの業務に従事したりして、自ら職に就くことを奨励している。

 副村長の申さんの説明では、小申村の560余人のうち、すでに140人が開発区に進出した企業や公益的な事業に就職した。それに自分で職を探した人を加えると、すべての家が何らかの仕事に就いている。

 6階に住んでいる劉さんは、村委員会の財政部門の職員で、月給は450元、夫の王さんは内装会社で働き、月収は千元を超す。葉敬華さんは、妻と長女の三人で、市場の近くで銭湯を営んでいる。商売は最近2年、繁盛し、毎年の収入は4、5万元に達し、自家用車を買った。しかし、今年は石炭価格が値上がりしたのに加え、どの家もソーラー給湯器を設置したので、銭湯の商売は暇になってしまった。

土地がなくとも生活保障がある

 「便民市場」。これは小申村の村委員会が、村に残された10%の土地と補償金を利用して、開発区内に開設した大型の総合市場である。ここから年間、約120万元の賃貸収入がある。宋官屯村は、6000万元の補償金を投資して、街道沿いに延べ10万平米の商業貿易ビルと標準的な工場を建設し、年間、500万元以上の賃貸収入をあげている。開発区政府は社会保障を完備し、土地を失った農民に後顧の憂いがないよう、村委員会を指導している。現在、小申村と宋官屯村は、不動産投資の収益の半分を、村民の福祉と社会保障に使っている。それによって村は毎月、村民全員に20キロの小麦粉と500グラムの食用油が配られ、中秋節と春節(旧正月)には、肉、卵、魚それぞれ2.5キロが配給される。

 また、村民は無料で農村医療共済に加入し、大きな病気をした時は最高3万元の実費請求ができる。さらに55歳以上の人には生活費として月百元、70歳以上のお年寄りには200元が渡される。

 村の家々は、暖房や有線テレビ、インターネットのブロードバンドの費用の半分を支払えばよい。子どもが学校に通うのに無料でスクールバスの送り迎えがある。 (2007年10月号より)




 
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