北京ウォッチングS 邱華棟=文 劉世昭=写真
 
優れた知能が集まる
 
 
 
北京大学の未名湖

 北京の大学区(大学が集中するエリア)は主に北西部の海淀区内に分布している。北京には70校近く大学があるが、その半分は海淀区中関村の東西南北、四方向の延長地帯にある。特に中国の最も重要な大学――北京大学、清華大学、中国人民大学、北京師範大学、北京航空航天大学、中央民族大学、北京語言文化大学などは、百平方キロに及ぶ大学区の核心部となっている。

 教育力はその都市における形のないエネルギーであり、知識や知力といった資源を提供し続ける。北京には短大卒以上の学歴の人がおよそ360万人いる。上海は200万人余り、武漢は80万人余りで、北京にははるかに及ばない。これは北京の教育機能の強大さを十分に示していると言えよう。

 それだけでなく、海外で勉強した帰国留学生20万人近くのうち、8万人は北京にいる。上海は5万人だ。現在、北京の70校近くの大学の在校生数は70万人余り、毎年5万人以上が卒業後も北京に残る。

 都市構造において、大学が比較的集中するのは必要なことである。大学は教育の場として、にぎやかな市街地から離れ、静かで勉強しやすいことが求められるからだ。商業化が進む都市の空気は、少しずつ大学の中にも入り込んでいるが、それでもやはり大学のキャンパスに足を踏み入れると、心が落ち着き、都市の中のせわしさや騒がしさはしだいに体から抜け落ちていく。

輔仁大学の旧跡

 都市にとってみれば、大学区は俗世間を離れた別天地のようなものだ。北京市は大学の夏休みを利用して、「夏休み大学ツアー」を開設している。北京にやってきた観光客に、決まったコースに基づいて北京大学と清華大学という100年の歴史ある国家のトップ大学を見学させる。このツアーには北京大学の未名湖、両校の校舎、清華大学の清華園と荷塘、円明園などの見学が含まれ、有名大学の風格を目にすることができる。

 今日の都市では、ほとんどのキャンパスが園林のように建設されている。北京の大学区には大学が多いので、もし各大学がすべて園林化、庭園化されたら、大学区全体の環境は非常に優美なものになるだろう。

 しかし、私にとって最も印象深いキャンパスは、西城区の輔仁大学の旧跡にある北京師範大学の分校だ。新中国成立以前に建てられたこの古い大学は、城壁に囲まれた小さな城のような建築様式である。奥庭には、東屋や高殿、築山、竹林などがあって、静寂に包まれている。毎年、入学したばかりの学生の一部は、ここで勉強し、生活する。

 私はよく、一人では抱えられないほど太い樹齢100年のエンジュの木の下に寝転がって空を見上げる。そうすると、自分は1930、40年代の輔仁大学の学生であるかのような気がしてくる。ここで姜文監督が『太陽の少年』を撮っていて、子どもたちが近くの屋根の上を飛び回っているのを見たこともある。

 中国科学院の研究所は中関村の核心部にある。その通りの西側は、ほぼ建設を終えたビジネスエリア――中関村西区だ。中国科学院のメーンビルは、通りに面している高さ80メートルの中科大廈で、東側は研究や管理の場、そして住宅区となっている。

中科大厦

 これを基礎として、ここに「中国科学城」を建設する計画を見たことがあるが、それは、世界一流の国家科学院本部の管理、科学研究、産業化の場と居住センターを建設し、高度な知能化、科学技術化、エコ化を実現するというものだった。そのメーンビルは蝶形の建築物で高さは100メートル、非常に現代的なものになるという。

 北京は今、大学区の園林化と国家のブレーンである「中国科学城」の現代化に力を注いでいるところだ。国家や都市の生命力は、その国家や民族の教育と科学技術のレベルに託されている。だから、「国家振興の要は科学技術」というのは、科学技術の創造・刷新や知識の産業化、知識の価格上昇だけで示されるのではなく、大学区や「科学城」をしっかり建設することでもある。(2006年8月号より)

 
 
邱華棟 1969年新疆生まれ。雑誌『青年文学』の執行編集長、北京作家協会理事。16歳から作品を発表。主な著書に長編小説『夏天的禁忌(夏の禁忌)』『夜晩的諾言(夜の約束)』など。他にも中・短編小説、散文、詩歌などを精力的に執筆し、これまでに発表した作品は、合わせて400万字以上に及ぶ。作品の一部は、フランス語、ドイツ語、日本語、 リ国語、英語に翻訳され海外でも出版されている。  
 

 
本社:中国北京西城区車公荘大街3号
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