趙雲、単騎で阿斗を救う
物語は『三国志演義』の一節である。後漢(25〜220年)末期、曹操の大軍に追い詰められた劉備は、樊城を捨て江陵に向かう途中、家族と離散した。大将軍趙雲は、劉備の甘、糜の両夫人と息子・阿斗を探し出すために、40騎ほどの兵士を率いて、曹操の大軍と戦った。
先に甘夫人を見つけ出した趙雲は、張飛のいる長坂坡に護送したあと、わずか数騎の兵士を引き連れ、再び死を覚悟して、糜夫人と阿斗を探しに行った。
戦いの末、数人の兵士も戦死し、趙雲ただ1人になった。古井戸の傍らに来た時、阿斗を抱いている糜夫人を見つけた。趙雲は馬を下り、糜夫人の前に額ずいた。夫人は、「将軍にお会いし、阿斗の命は助かりました。私は何の未練もありません」と言い残して、自ら井戸に身を投げ、最期を遂げた。
趙雲は阿斗を抱いて馬に跨り、曹操の将軍50人を討ち取り、敵軍を大いに震え上がらせた。
後に阿斗は劉備の後を継いだが、凡庸無能で、蜀国の大業を台無しにしてしまった。(2006年1月号より)
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