「おでん」が上海っ子の間で大人気だ。
と言っても、食堂や家庭で食べるのではなく、上海流はコンビニエンスストアで買って、ファーストフード感覚でその場で食べる。ちなみに、おでんは中国語では発音も意味も近い「熬点」という。からしもつけないし、串に刺さっているのでお箸も使わない。串刺しのおでん片手に店内の雑誌を立ち読みする若者の姿は、上海では今や日常的になりつつある。
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上海最初のコン
ビニ「可的」。
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昨年参入したば
かりの「好徳」
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人気の火付け役は、1996年に上海に上陸した日本の「羅森(ローソン)」で、これが当たった。当たると分かるや、後続のコンビニチェーンも右に習えと、おでんを置くようになった。今や、「コンビニ=おでん」と言ってもいいくらい、上海コンビニ業界では定番アイテムになっている。
ローソンはおでんだけでなく、上海コンビニ業界にコンビニのスタンダードを示した。おにぎり(こちらはレンジでチンして食べます)やお弁当、サンドイッチなどの日配品の定番化、雑誌販売のほか、コールド飲料は冷蔵庫で、ホット飲料は保温庫でいつでもおいしく飲める状態で販売するスタイルを根付かせたのも、ローソンだろう。
コンビニチェーンは現在八社、昨年だけで三社も新規参入している。店舗数も統計によれば、昨年10月末時点で約千八百店。2000年末が千百店だから、わずか十カ月で雨後の筍のように七百店も増えたことになる。
日本の30年の変化 5、6年で
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おなじみ「ローソン」 |
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おでん売り場 |
上海初のコンビニは、地元乳業メーカーの出資する「可的」で1995年に登場したが、この数年の間に小売り市場は驚くほど変化した。
中国経済を引っぱる上海でも90年代半ばまでは、物不足や配給統制の時代を引きずっていて、食料品店や雑貨店などの商品は少なかった。いわゆる対面販売形式がほとんどで、商品を直接手にとって見ることも難しかった。
そこに「自選市場」とも称されたスーパーマーケットが登場、やがて外資系の流通業大手も次々に進出、上海の小売り市場は大きく変わっていく。
日本が、雑貨店からスーパー、そしてディスカウントストアやコンビニ…と30年以上かけた業態の変化を、上海はわずか5、6年で経験してしまっている。これには、急速な経済成長で中産階級が台頭し、人々のライフスタイルが多様になったこと、生活のリズムが速くなったことなども後押ししている。
空気ポンプ貸し出しや株の売買代行も
地元の専門家は、あと一年足らずで日本の「5000人当たりコンビニ一店舗」というレベルに達すると予想している。セブン-イレブン・ジャパンも参入を表明しており、コンビニ戦争はますます激しくなりそうだ。
競争に勝ち抜くため、各社ともあの手この手のサービスに躍起だ。コピーやクリーニング、DPEサービス、公共料金の支払いなどをメインに、飛行機・列車チケット予約や公共交通プリペイドカードなど各種カード販売から、お手伝いさんや家庭教師の紹介まである。
中国らしいサービスでは、後発チェーン「21 Convenience」が、自転車天国を反映して、空気ポンプを無料で貸し出している。また、市民の三人に一人が株の売買をしているという上海事情から、株売買代行を計画しているところもある。そのほか、外貨両替や少額の貸し付けなど銀行業務を念頭に置くチェーンもある。
コンビニは、その都市のトレンドや人々のライフスタイルを表わす指標のひとつ。おでん片手にコンビニ店内を回れば、一味違った「上海の今」が見えてくる。(2002年3月号より)
[筆者略歴] 日本での出版社勤務後、留学。北京週報社・日本人文教専家を経て、現在、復旦大学大学院生 |