深遠な国茶の世界A
棚橋篁峰
 
 
乾燥の仕方で分ける
緑茶@

 
江西省廬山の緑茶畑

 中国緑茶は日本緑茶と同じく茶葉を発酵させない不発酵茶です。緑茶の特徴は改めて説明するまでもありませんが、ポリフェノール、カフェイン、クロロフィルが多く残留し、ビタミン類の減少も少なく、中国では癌の抑制、殺菌、消炎に特別な効果があるとされています。ですから、中国全土で日常もっともよく飲まれているのは、烏竜茶ではなく、緑茶なのです。

 ちょっと話は専門的になるのですが、中国では緑茶を乾燥方法の違いでさらに幾つかに分類します。

 @ 炒青緑茶

 いわゆる釜炒り茶で、日本でもよく知られている竜井茶がその代表です。竜井茶は「緑色、芳しい香り、甘い味、美しい形」が特徴とされています。

 このほか、産地、製茶法の違いにより碧螺春、信陽毛尖などさまざまなブランドがあり、例えば、碧螺春は江蘇省の洞庭山で製茶され、茶葉の表面に白いうぶ毛があり、茶は芳しい香りが長く持続し、後味は新鮮で甘いと言われます。

 Aコウ青緑茶

 あぶり籠であぶることからあぶり茶とも呼ばれています。

 炒青ほど香りは高くなく、再加工茶の花茶の原料に用いられる場合が多いのです。その一つ安徽省黄山で生産される黄山毛峰は茶湯が杏のような黄色で、味は爽やかかつ濃厚、淹れたあとの茶葉は一枚ずつ美しく分かれる、と評されています。

 B晒青緑茶

 日差しに晒して自然乾燥を行うお茶で、雲南省のオ瘰ツがもっとも品質優良とされます。

 C蒸青緑茶

 蒸して殺青(蒸気で熱を加え酸化酵素の働きを止めること)するお茶です。この製茶方法は紀元八世紀に発明され、古く日本へ伝えられ、現在も行われているのはご存じの通りです。

 香りが少なく、味に渋みがあって、新鮮さは釜炒りの炒青緑茶には及びません。代表的なものとしては、湖北省の恩施で生産されている恩施玉露があります。

 ところで、同じ緑茶も、清明(四月上旬)、穀雨(下旬)の前に摘まれたお茶はそれぞれ「明前茶」「雨前茶」と呼ばれ特に珍重されます。(2005年2月号より)

【ワンポイント・メモ】
 緑茶は中国茶の生産量の70%以上を占めています。紹介した中国の製茶法のうち最も多いのは炒青緑茶で次はコウ青緑茶です。それ以外は、少ない生産量で、作ってもあまり良い物はありません。日本の緑茶は、ほとんど全部といっていいほど蒸青緑茶です。中国緑茶の味わいが理解できるようになると中国茶の世界が大きく広がるでしょう。

棚橋篁峰 中国茶文化国際検定協会会長日中友好漢詩協会理事長、中国西北大学名誉教授。漢詩の創作、普及、日中交流に精力的な活動を続ける。
 


 

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