深遠な国茶の世界(最終回)
棚橋篁峰
 
 
研究をかさねて開発
現代の名茶

 

 中国茶の紹介は今回で一段落させようと考えています。中国茶を紹介する書物は多くあります。しかし基準がないので客観的な見方が少なく、また、茶の種類が多いため、どのお茶を取り上げるのか迷っている書物が多かったと思います。この連載では極力、全体像がわかるように努力したつもりです。基礎を知ることは大切ですから、ご理解いただければ幸いです。

 今日まで、著名なお茶と言えば、歴史的に評価され伝説に彩られたものが多かったのですが、新中国が成立してから新たに生産され始めた名茶にも目を向けてみると、驚くようなお茶に出会うことがあります。それが今回紹介する安吉白茶です。

安吉白茶

安吉白茶

 安吉白茶は白葉茶樹の品種です。原産地は浙江省湖州市安吉県天荒坪鎮大渓村の桂家場です。樹齢百年を超えた野生の白茶 は一本しか残っていませんでしたが、さまざまな研究と開発の結果、1988年に「浙江省貴重茶樹良種」と認定されました。2001年2月には、全国で初めての茶葉原産地保護証明商標を得ました。

 安吉白茶は、細長く、鳥の羽のような外形をしています。きれいな翡翠のような緑色に、黄色も少し加わり、潤いがあります。お湯を注ぐと、グラスの中で葉が広がり、徐々に白玉のように白く変化します。葉脈は緑色で、茶の湯は浅い黄色で透明です。味はさわやかで、柔らかい甘みがあり、飲むと芳醇な香りがずっと口の中に残ります。

 安吉白茶と名づけられていますが、ここでの「白茶」とは「白葉茶樹」ということで、「緑茶、青茶、黒茶、紅茶、白茶、黄茶……」と分けられる中国茶の分類では「緑茶」になります。

 このお茶が知られるようになったのは、今世紀の初めに数々の名茶コンクールで金賞や特別賞に輝いたときからでした。

   私も初めて飲んだときは、普通の緑茶にはない香りと味わいに感嘆したものです。中国茶はこのように、現代に開発された名茶も多くあり、名前だけに惑わされず、自らが試飲して愉しんでみてください。安吉白茶は間違いなく現代の中国茶を代表する逸品と言えるでしょう。

 今回は、新しいお茶を紹介しました。今後は、中国茶文化の世界をそぞろ歩きして、皆様に広い中国の茶の世界をお話ししたいと思います。(2006年12月号より)

【ワンポイント・メモ】

 安吉白茶はとても高級なお茶です。時間に余裕のあるときにゆっくりと飲むことをおすすめします。深い味わいと清らかな香りに時を忘れることが出来ると思います。茶館などで雰囲気を愉しみながら飲むのもよいでしょう。


棚橋篁峰 中国茶文化国際検定協会会長、日中友好漢詩協会理事長、中国西北大学名誉教授。漢詩の創作、普及、日中交流に精力的な活動を続ける。

 

 

 

 
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