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影絵人形をつくる山西省侯馬市の職人たち |
中国の古い民間芸術である影絵しばい「皮影戯」。そこで使われる「皮影」、または「影人」は、動物の皮で作った登場人物や動植物、大道具・小道具、背景などの総称である。
記録によれば、皮影戯は2000年前の漢代には早くもその原型があったとされる。宋代になるとそれは完全に形成されて、芸術的にも大きな発展をとげた。以来こんにちまで、約千年の歴史をほこるのである。
皮影戯を演じるさいには、舞台に張られたスクリーンの裏手で、人形つかいが細い棒(ふつうは一体に三本)をつけた人形を操作する。人形は背後から強いライトを当てるため、色つきの影が鮮やかにスクリーンに映し出される。にぎやかなドラや太鼓に節が加わると、そこには「ひとくち語れば千年の故事、両手の舞いで百万の兵」という、興趣の尽きない戯曲芸術が生み出される。皮影は、演出の道具であるばかりでなく、すぐれた観賞価値と美的センスをもつ芸術作品なのである。
皮影は当初、厚紙に細工が施されたが、その後しだいにロバや牛、羊の皮が使われるようになった。動物の皮を裁断して整え、刻み、色をつけ、のし、組み立てをする――などの処理をへて、美しい皮影が完成するのだ。原料である皮の吟味は重要で、硬く弾力性にとみ、均等の厚さで、透明性にすぐれたものが求められている。
刻み方には陰刻と陽刻の別があり、中国の民間芸術である切り紙の持ち味とよく似ている。しかし切り紙と違うのは、人形の手、ひじ、腰、足などの関節部分をそれぞれ分けて細工してから、つなぎ合わせて組み立てること。しばいをする時、人形を思いのままに動かすためだ。
ほかに、頭部と胴体部も分解できる。影絵劇団では往々にして、人形の頭部の数がその胴体部よりも数倍多い。というのは、人間が演じるしばいのように、人形の頭部は登場人物によって異なるが、胴体部つまり舞台衣装は、演目ごとに「着まわし」ができるからだ。定型化した舞台衣装は、たくさんの登場人物に利用できるのである。
千年あまりの歴史の中で、人形の造型も移り変わった。各地に異なる風格が生まれ、陝西・山西両省一帯に伝わる牛皮影、河北省唐山市ツミ県一帯の驢皮影などは、その代表とされている。
皮影戯の多くは、農民たちが農閑期に演じるものだ。そこでは、人形の制作者がよく人形つかいになっている。ストーリーや登場人物について熟知してこそ、人形づくりに心が込められるのである。彼らは必要に応じて、破損した人形を補修したり、取り替えたり、新しい演目に必要な人形をデザインしたり、細工したりしている。もちろん専門の職人たちもいて、その技術は師匠から弟子へと伝承されているが、しばいのストーリーや登場人物をよく理解することは、やはり人形づくりのイロハなのである。(2002年6月号より)
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